「土曜日昼からのドライブデートだなんて、向こうはもうつき合いたいぐらいのテンションなんじゃないの?」
「盛り上げないで!いまは期待し過ぎないようにしてるんだから」
金曜夜の女ふたり飲みは、結局いつもこんな話になる。
「リエに彼氏ができたら、スロットの後に飲む相手がいなくなって寂しいでござるなぁ」
幼馴染の陽子はそういいながら、武蔵関のスナック馬酔木にキープしていた鏡月のボトルを飲み干した。 陽子は30にしてニートなので毎日のようにスロットに通っている。
「ふたりで会うのは3回めだし、まだ分からないよ」
とは言ったものの、これまでの2回のデートはとても楽しくて、いつもあっという間に終電になっていた。
先週木曜日の合コンで出会ったばかりの淳さんは、私よりも1つ年上の31歳で、旧電電系研究職。背も高くて明らかにモテそうなひとだ。
イケメンなのにSNSのプロフィール写真は謎の幾何学模様になっていて、何がしたいのかよくわからない。実物はそこまでとっつきにくくはなくて、そう思っている女性は私だけじゃないだろう。ユークリッド幾何学に収まらない男性は魅力的で、淳さんはなおかつイケメンだから、どれだけモテるか計り知れない。すっぽんがスープ鍋に入ってるみたいなものだ。
だから、まだ安心できない。私のことも数式に代入するいち変数くらいにしか思っていないかもしれない。理系のメタ認知的な世界観に振り回されるのはもうまっぴらだ。どんな人なのか、じっくり時間をかけて知っていきたい気持ちでいる。
1回めのデートは合コンの翌日の坐和民。仕事帰りに誘われて、ちょっと飲むだけではあったのだが、淳さんの勤務地がYRP野比だったので池袋で待ち合わせて30分で終電になってしまった。
そして2回めのデートは今週の火曜日。その前夜も陽子とふたりで飲んでいて、
「リエ、明日もしも向こうが迫ってきても、今回はまだ絶対にしちゃダメだからね!」
「うん、しない!させない!気を持たせない!非モテ三原則!」
「まず本当に独身かどうかを確かめる方向で」
「何それ(笑)。大丈夫、私いま新潮というより文春モードだから」
なんてシミュレーションしたりしたけど、結局まだ戸籍は確認できず(苦笑)。
あ、でももんじゃ屋で彼がお手洗いに立ったとき、論文の査読がきつくて血尿が出るって言ってた。奥さんがいたらそんなストレスは家で癒してもらえるだろう。
私がそういう存在になってあげられるかもしれない、と考えて一人でドキドキしてしまった。
そのあと、チューハイを飲みながら「今週末、ドライブに行こう」という話になったのだ。というのも淳さんは最近クルマを買ったばかり。話しぶりからして、まだ誰も助手席に乗っていないみたい。
つづく
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Posted at
2016/06/05 05:20:08