この度、クラウンのマスターシリンダーよりブレーキオイルが漏れ始めた為、修理で入庫したのだが、今回、代車として初代NCP30型bB1.3S Xバージョンを代車として貸して頂くこととなった。
この3日で100km程度試乗したので、今回コチラの車両をレポートしてみようと思う。
■概要
2000年2月にトヨタが送りだした2ボックスのハイトワゴン。
主にナウなヤングのとっぽいニーチャンやマブイネーチャンをターゲットとして販売されたが、メーカー自身がカスタムベースとして提案していたことも後押しとなり、結果、ナウなヤングを中心に各種アフターパーツメーカーやドレスアップ専門のショップなどからも結構好評な1台であった。
2003年にはアメリカではサイオンブランドの1台として輸出され、「サイオンxB」という車名でコチラも日本同様に結構好評だったようだ。
このbBはターゲットユーザーであるナウなヤングの人気を獲得する為、当時としては中々面白い販促を実施しており、カタログも写真のようにDJよろしくレコードのジャケットを意識した面白いものだった。
しかし、カタログマニアとしては、一回り大きいサイズのこのカタログは収納スペースに困る一冊でもある。
CMに関しては、CMソングをWiggle(ウイグル)という日本人2名、アメリカ人1名、オーストラリア人1名の計4名で構成されたグループの曲を使用していたが、驚くことに彼らは1度も会ったコトも無いまま、インターネット上で作曲してプロデュースしたという異色のユニットである。
筆者はなぜか10年前にHMVでこのbBのサウンドトラック集を購入したのだが、まさか10年後にコレをbBの車内で聴くことになるとは予想外の展開であった。
また、ディーラーでは新車発表時にチョロQを配布していたのだが、これまたbBマニアでもないのに所有している。
このbBチョロQは当時商品化されていなかったのだが、数年後、チョロQのラインナップとして販売されることとなった。
■スタイル、取り廻し
<全長×全幅×全高>3845×1690×1640と、このサイズでは標準的なパッケージングだが、場所によっては入らないタワーパーキングがあるので注意が必要だ。
デザインは見ての通りのキュービックなフォルムでわかりやすく、意外とカッコイイ。
グレード展開は主に2種類で、上級グレードのZ、下級グレードのSが基本となり、そこにエアロを装着させるとXバージョンとなる。
上記のグレードにさらに2WDと4WDが選べるような内容になっている。
今回のS Xバージョンは装備こそ上級グレードより若干簡略化されるが、外装はエアロパーツを身に纏ったXバージョンなので、安っぽさを感じさせず、型落ちと言えど、みすぼらしさが無いのは中々いい。
取り廻しに関しては、四角い外装から見る通り、感覚は掴み易いのがメリットだが、残念なことに、操舵角がかなり小さく、全く小回りが効かない。
クラウンでいつもならターンが可能な職場の駐車場でも切り返さなければならない程で、この個体だけかと思い、他の元bBユーザー数人にも聞いてみたが、全員が同様の意見で一致する位、悩みの種だったそうだ。
ちなみに最小回転半径のカタログ値は5.5mとかなり大きく、これは30系のセルシオよりも大きい数値であった。
■動力性能
エンジンは排気量1297cc、最大出力88馬力、最大トルク12.5kg・m。
今回、一般道、高速道路共に使用したが、100km/hまでならこれが驚いたことに全く不満も無く気持ち良く走る。
但し、登坂時でのエアコン作動時、又は追い越し加速の際はやはり1300ccでパンチには欠けてしまうが、それが気に入らないなら1500ccのグレードを選べばいい話だ。
ATに関してはギヤ比も中々適切で、変速ショックも抑えられたものではあったが、この個体特有なのか70km/h付近で大きいデフノイズが発生する。
又、ボディ形状が災いし、80km/h付近より、フロントピラー及び、リア廻りからの風切り音がかなり大きく安っぽさを感じる。
足回りに関しては社外品のローダウンサスを装着していた為、今回はコメントを割愛させていただく。
■インテリア
このクルマの最大の欠点はインパネの形状及び、各計器、スイッチ類の配置にある。
メーターに関してはタコメーターが非常に小さく見難くておもちゃのようだ。質感も安い。
又、各種スイッチ類に関しては、どのスイッチも手の届く範囲から遠く、少々手を伸ばさないと操作がしづらい。
シジマールの為に作ったのかとツッコミを入れたくなるほどだ。
インナーミラーは非常に小さく、かなり上方にある為、後方確認を全く考えていないように思える。
コレは非常に危険で、運転中に後方確認をしたとしても見落とす可能性がかなり高い。
サンバイザーもただ装備されているだけで、天地方向がまるっきり寸足らずというものだ。
さらにハザードスイッチもエアコンスイッチと同様の場所、且つ運転席からかなり離れた場所にあり非常に押しにくく、初めてこのクルマを運転した者にとっては非常に見つけにくい。
試しに、各スイッチ類を手に届く範囲にしようとシートを前方にセットしたところ、今度はフットスペースが狭くなり、アクセルワークがマトモに出来ないポジションになってしまった。
まさに「アッチが立てば、コッチが立たず」が似合うクルマである。
シートに関しては見た目からの印象と違い、そこそこホールド性もあり、キューブと比べると疲れにくい仕上がりのものではあった。但し、個人的に表皮の触感は言葉だけのファブリックで印象はイマイチだ。
リアシートに関しては、スライド機能があり、一番後方にスライドすると、このように広大は空間が可能となる。
しかし、この手の車種全般に言えることだが、このように室内高を確保して何の意味があるのか甚だ疑問だ。
空力が悪くなるし、それに比例し燃費も悪化、さらには重心も高くなりコーナーリング性能も最悪なものとなる。
常時、頭上に空気を運んでいるような感覚になり、気分のいいものでは無かったことを付け加えておく。
■ラゲージユーティリティ
ラゲージユーティリティに関しては、後席を最大に後退させてもこれだけのスペースがある。
日常生活においてこれだけ荷物を積めれば全く不満は無いだろう。
さらに、シートをフォールディングさせればさらに広大なスペースが出現する。
天地方向にも十分な空間がある為、下手なライトバンよりも荷物が積める…これには非常に驚いた。
さらに興味深かったポイントは後席のシートスライドにレールを使用せず、ローラーを使用している点だ。
異物も詰まらず、レールのグリースで手が汚れる心配も無い。
コレは非常に画期的だ。
ラゲージ関係で敷いて一言あるなら、シートフォールディングの際に、シートを前方までスライドさせ、シートバックを倒し、シートを跳ねあげるという3アクションを必要とすること、さらにその際の操作荷重が大きく、女性の方には力作業となる。
昨今のこの手はラゲージより、レバー1本のワンアクションでフォールディング可能なものが大半となっており、この辺りの操作性には設計の古さを感じるところだ。
■総括
このbBというクルマはヴィッツを基本とし、当時としては珍しく試作車を作らず、コンピューター上で開発されたクルマで、文字通り「机上の空論」から開発されたクルマである。
結局、完成されたものは、様々なところに支障があり、人間工学という観点にこんなにも当てはまらないクルマも珍しい。
全てが悪いとも言えないが特段良いクルマとも言えない。
周囲に勧めるなら「お好きならどうぞ」という1台である。
但し、普段使う足として考えるならそれなりに快適ではあるし、不満な点も我慢出来る範囲である。
モデルチェンジした2代目のデザインが少々奇抜だった為か、中古相場がその後若干上がってしまった初代bB、どうしても買うならもう少々待つことをオススメする。