納車より約半年。
今回は現時点でのゴルフⅦについての印象を書こうと思う。
■概要
フォルクスワーゲンが2013年に日本での販売を開始した7世代目のフォルクスワーゲン・ゴルフ。
通称:ゴルフⅦと言われている1台である。
その中でも現車は2015年式のコンフォートラインをベースとした特別仕様車「ラウンジ」である。
■スタイル、サイズ
全長×全幅×全高=4265×1800×1480(mm)
最早コンパクトというジャンルで当てはめていいものか迷ってしまう程に大きく感じるサイズである。
プレミアム・ハッチバックと呼ぶにふさわしい上質感が漂っている。
また、エンジンフードに入ったプレスラインを筆頭に、各部のプレスラインにエッジが効いており、シャープ且つ硬質感を持っている。
そこに身を纏うボディカラーは「サンセットレッドメタリック」と呼ばれる、100台限定のボディカラーである。
コイツは日中こそ一般的なレッドメタリックであるが、夕暮れ時に淡いオレンジに変化していく様子は実に品がある。
実際にこのボディカラーは出先で「いい色ですね」なんて見知らぬ人に早くも数回声をかけられた程である。
なぜこのボディカラーを標準色として設定しなかったのだろうか?
また、リア周りに目を移すとCピラーの野太い「く」の字のラインで、「このクルマはゴルフなんだ」
と感じる歴代を通してのアイディンティティがある。
この辺りに、モデルチェンジの度に先代の面影すら残さないまま、一体何のクルマなのか分からないというようなクルマと一線を画し、歴代を通しての志の深さを知ることが可能な一面である。
■インテリア、装備
室内に目を移して行くと、まず実感するのはシートの良さである。
座った瞬間にいかにもシートフレームからして剛性が高いコトを全体を通して伝わって来る。
そしてパッセンジャー側に対しても差別を行っていない点はさすがである。
シートリフターにランバーサポートと、ドライバーズシートのみに通常なら備えられるだけであろう装備が当然の如く与えられている。
そして、一瞬着座しただけではただ硬いように思われるシートの触感も、1日辺り400kmを走った後でも全然苦痛と思わされない辺りは流石の一言である。
但し、パッセンジャー側に座ったパートナー曰く、発進して2時間後に腰の痛みを訴えてきた。
よくよく見るとシートポジションが全く合わせておらず、足がフロアより浮いているような状態であった。
その後、シートを適切な状態に合わせた結果、残り数百キロ走っても全く苦痛では無くなったらしい。
つまりは両席共にシートスライドの有効幅が大きいと共に、適正な設定にしないとシートが満足の性能を発揮しないという、実に合理的な設計であると言える。
リアシートに関しては、恐縮ながら短時間しか乗車していないのだが、コレもシートバックの起き方は適切であり、不満の無い十分な性能を得ているものだと言える。
余談ではあるが、前後席共にシート表皮はラウンジ独自の物。
シンプルながらも嫌味の無いデザイン…保守的なモノとも言える。
そしてドライバーズシートに着座すると必ず目に映る物の一つであろうインパネは先進的な印象が全くと言って良い程に無く、寧ろオーソドックスなままの正常進化と言えるようなものである。
この辺りの操作性は経験上、斬新な操作性、機能を狙った配置よりも寧ろ旧態依然のまま若干ながらのエクスキューズを唱えたアップデートを図った内容の方が受け入れられやすいと思う。
ゴルフⅦはその辺りでは上手く設計した感じもある…しかしながら、インパネ上に後席までの気流を考慮したベンチレーターや、もっと押しやすいような大きさ、突起を設けたハザードスイッチを置いて欲しいという更なる期待を抱きたい箇所があるのも事実ではる。
さて、ドライバーズシートに身を委ねたと仮定して周囲を観察してみよう。
まず右側から目に付くのはドアミラーコントロールスイッチである。
こいつは、ミラー関係のスイッチ、ヒーター機能まで一貫して一つのスイッチで賄っている。
国産車と比べ、一見して把握に時間を要するこの機能も考察していくと、ミラー関係の操作はこの一つで補えるということで合理的でもある。
更に右膝辺りに装備されたコインボックスもかなり大きめで、SDカード収納ケースも装備されている。
そして、ステアリングに目を移すと、このクルマには全車速追従機能付のクルーズコントロールが装備されている。
30km~160km/hまでの設定が可能で、高速道路では勿論のコト、状況によってはバイパスや一般国道でも使用可能な程、フレキシブルな活用が行えるのが特徴である。
前車との車間距離は5段階で設定可能で、実際に使用してみたところ、一般的な使用では5段階中2番目に近距離な箇所で設定しておくのが日常的な使用ではベストだと判明した。
また、多くの国産車と違い、右側カウルサイドトリムにも右足を置くのに適した箇所が設定されているのは秀逸である。
実際に現代の右ハンドル車で同様の装備を持った車種に対し、クルーズコントロール使用時に右足の置き場に少々困るのは暗黙の了解と言っても過言ではないと思っている。
上記箇所をフットレストと兼用させるのは、只でさえ左ハンドル車と比較し絶対的に不利であろう右ハンドル車にしては、盲点且つ画期的なレイアウトだと思っている。
また、ステアリングスイッチ右側には各種インフォメーションディスプレイ操作用スイッチが装備されている。
これによりメーター中央部に車両に対しての各種データが表示されるのは、その機構を知っている人間にとっては役立つ情報が満載かと思う。
かと言って、現行ゴルフ7.5のフルカラーディスプレイとの相対比較を行うと旧態化している部分は否めない。
最も、日進月歩とも言える自動車の先進機能装備にしては上記内容でも当時の技術、コスト的な面を考慮すると十分とも言える性能、装備を確保している次第かと思う。
そしてインパネ右側に目を移してみると、最早フォルクスワーゲンという垣根はおろか、輸入車としては当然とも言えるべきヘッドライトスイッチが頓挫している。
日本車のコンビネーションスイッチに馴れている身としては、リーチも長く使い辛いと思う。
インパネ中央下段にはコンソールボックスとUSB端子が用意されている。
パッと見では、チョットした小物入れのように見えるが、実はかなりの奥行きがあり、片手が入る程の大きさだ。
そしてコンソールにはシャッター付きのドリンクホルダー。
さらにその左には電制パーキングブレーキのレバー、並びにオートホールドスイッチが用意されている。
コイツはエンジンを再始動する度にオートホールドボタンを押さなくて良いのでとても便利ではある。
しかし、Pレンジに入れた際にパーキングブレーキが掛からないのは少々困りものだ。
エンジンをOFF、またはドアを開けないとパーキングブレーキが掛からないのは少々不安ではある。
更に後方に目をやると、やや長さが不足したアームレストがある。
一見短いアームレストだが、実は伸縮可能且つ、角度も自由に調節が効き、非常に便利である。
そしてまた目線をインパネ前方に移そう。
するとインパネ下段の小物入れの上には、左右独立調整式のオートエアコンが装備される。
このクルマでウレシイ装備が「MAX AC」ボタンが非常にイイ。
このボタン一つでエアコン温度は最低且つ最強の風量に設定され、夏場に乗りこんですぐのクールダウンが簡単に出来るのだ。
しかも、もう一度「MAX AC」ボタンを押すと、元々の温度設定に戻る。
単純だが非常に使用性を考慮した画期的な物だと言える。
惜しいのは、日本車のようにプラズマクラスターやナノイー等のアメニティに欠けるところである。
その秀逸なエアコンパネルの上…インパネの一等地にそびえるのがゴルフⅦ最大の欠点と言える、ディスカバープロという、使用したらその機能の悪さしかディスカバー出来ないナビが存在する。
地図は非常に見づらく、主要施設の名称が全く表示されず、なぜかアパートやコーポの名称ばかりだけしか表示されない上に、その施設名称はマップで一番詳細なモードでしか表示されないという最悪なものである。
更に目的地の設定が非常に使いづらく、名称検索が出来ず、ナゼかマップコードを入力して目的地へと向かわないとならず、終始スマホでマップコードを探しては入力して目的地へと向かうという、非常に使い辛いものであった。
いっそのこと、名称をディスカバーシロウトにして欲しい位だ。
更に上を見上げると、自動防弦ミラーが装備される。
使用性は他の車種と変わらず、性能も並である。
更にその上にはサングラスケースがある。
そして、コンフォートラインではただの電球なのだが、ラウンジはサンバイザーの照明がLEDになる。
マップランプも同様にLEDだ。
そしてドアポケットに目を移すととても容量の大きい物で、しかも異音防止の為か植毛まで施されている。
更に運転席のドアに目をやると、なんとウェザーストリップが上部のみで切れているのである。
その証拠にドアパネル後方を除くと、ウェザーストリップが全く無いのである。
どうやら一般的な国産車と違い、ドアウェザー側では無く、分厚いオープニングトリム側で止水するのである。
ドア上部にのみウェザーストリップが設置されているのは恐らくドアを開けた際の室内側への後ダレを防ぐものだろう。
そしてこんな場所にもこのクラスで植毛を使用している辺り、中々だと思う。
前席のドア開口部にはラウンジ専用のスカッフプレートが装備される。
次に後席側に移るが、ウェザーストリップの構造はほぼほぼ前席と同様。
プライバシーガラスはグリーンとなっていて、爽やかな印象に一役かっている。
後席の装備としては、センタコンソール後方に後席用のエアコンレジスターが装備される。
このクラスでもこのような装備があるので驚く。
そして天井にはリア用のマップランプ。コレもラウンジはLEDだ。
リアのアームレストは特段トピックは無い。
カップホルダーが2つ用意される位だ。
更にアームレストの奥にはチョットした長尺物であれが通すコトが出来るトランクスルー機能が用意される。
もっと大きな荷物ならシートフォールディングをして広大に使うといい。
ラゲッジスペースはこの手にしてはとにかく大きくガランとしている。
更にラゲッジボードは2段階で高さが調節可能。
高さのある荷物に対しても意外と対応出来るのだ。
そして、バックドアの開け方はフォルクスワーゲン特有のエンブレムがバックドアハンドルになっている。
コレは毎度思うが、見栄えもスッキリしていて良いし、何より特別感がある。
しかし、このバックドアハンドルの機能はコレだけではないのだ。
なんとRレンジにシフトするとバックカメラが出てくるのである!!
勿論、通常のバックドア開閉時にはカメラは邪魔にならないよう、更に奥に隠れている。
拾ってきた動画だが参考にしてみて欲しい。
そして外観に目をやると、ヘッドライトウォッシャーが装備されている。
雨天時にウォッシャーで窓を拭いた際にコレが出てくると余計汚れるような気がして私はどうも好きになれない。
そしてエンジンフードを開けると、1本ながらフードダンパーが装備される。
確かに高級感があり、今のところはイイ。後は経年劣化を懸念するのみである。
■動力性能
ゴルフⅦ ラウンジに搭載されるエンジンは以下の通り。
CJZ…直列4気筒1200ccツインカムターボ、105馬力、17.8kg-m。
コイツは意外だが、ゴッグドベルトを採用しており、耐久性は国産にやや劣り7万kmで交換を推奨しているようだ。
交換時のメンテナンス費用にやや不安を感じるものの、エンジンに関しては優秀で、低速トルクは十分過ぎる程であり、余程のハイスピード、又は追い越しを行わない限りは思い切り回す必要の無いエンジンだ。
とにかく扱いやすく、クセもないエンジンだ。
コイツにはブルーモーションテクノロジーという、アイドリングストップ機能があるのだが、信号待ちの際のブレーキの踏み込み量で、アイドルさせたままか、アイドルストップさせるのかという選択が可能なのは有難い。
やたらめったらと再始動をする必要が無いので、バッテリーにも優しく合理的だと思う。
このエンジンに組み合わされるミッションが7速のDCTである。
DCTもゴルフⅤ、Ⅵと段々と熟成されてきてはいるのだが、1速から2速への変速…約7km/hでもたつくのと、発進時のギクシャク感は未だに拭えず、昔のヴィヴィオのECVTに似たようなショックが出てしまう。
後は、登坂での発進・停車が苦手なミッションである。
時折かなり大きいショックが発生するのは不快の一言である。
最もドイツと日本ではミッションに対する基本的な使用状況・開発思想が違うのだろう。
2速以降の変速は極めてスムーズなもので、変速に気付かない位だ。
そして足回りはフロントがストラット、リアがトレーリングアーム。
ブレーキにはこのクラスとしてはかなり容量の大きい4輪ディスク。
装着タイヤはブリヂストンのチュランザで205/55R16である。
更に上位グレードのハイラインになるとリアが独立サスとなるものの、このラウンジでも足回りの性能はかなりのもので、実に懐の深いアシの動きをする。
低速時では少々ながらドタバタ感があるものの(それでも十分に快適だが…)、幹線道路や国道を定速で流すととにかくフラット感が大きく、優雅に走る。
この影響はアシだけとは言えず、ボディ剛性の大きさも大いに起因している。
そして停止時には路面を掴むようにブレーキが効く上に、やたらとビルドアップ感を狙ったようなフィールではなく、踏み込んだ分だけ思い通りに停止する大変気持ちのイイものだ。
惜しむらくはタイヤが今一歩なのである。
装着されるブリヂストンのチュランザはブリヂストンブランドの例に漏れず、サイドウォール剛性が高すぎ、コーナリング時のたわみ量が少ない為、クッション性に乏しく、少なからずコンフォート性に影響を及ぼすのである。
あくまで個人的な経験上で恐縮ではあるが、ミシュラン辺りを履かせると低速時から高速域までフレキシブルにコンフォートなこのクルマの真の味が楽しめると思う。
たかがタイヤだがされどタイヤ、どんなに美味でもたった一つの付け合わせで味が濁ってしまうのだ。
参考程度だが、今回借用した際に、山口の面積の半分程度を1日で下道のみでほぼ1周したが、燃費はリッター約18km/hであった。
燃費はイイが一つ付け加えるとハイオク指定なので念の為。
コレに関してはお国柄ではあるのだが、ドイツのレギュラーガソリンのオクタン価は日本のハイオクとほぼほぼ同等なのだ。
■総括
フォルクスワーゲンというブランドはMQBプラットフォームでコスト低減を訴えながら、生産性の合理化も目指しているのは周知の事実かと思われる。
トヨタ辺りもコレに倣いTNGA設計をし始めて、昨今はかなり良くなってきていて、実際にファンな車種が増えてきている。
しかしながら、伝統の違い…なのだろうか…いつもフォルクスワーゲンはその一歩先を見ている。
そしてゴルフと見て、乗る度に、「イイクルマだな」と思う反面、職業柄悔しいと思う1台の代表格である。
今回の両親がゴルフを購入するまでの流れの中には、私としては「ゴルフにすれば老後をゆっくりと過ごす両親の生活に更に幸せな一石と投じる…所謂平凡な日常に花を添えるアクセントになって欲しい」という願いがあった。
事実、ゴルフが我が家(と…言っても離れて住む実家だが)にこの真っ赤な帰国子女がやってきてからというもの、両親共に家の中で時を刻々と刻む訳ではなく、暇を見つけては遠出までは無いがドライブに行くコトが増えたようだ。
そして時折実家に帰るとまるでペットのようにゴルフについての会話が自然と出てくる辺り、このクルマは両親の日常に気持ちながら一石と投じる起爆剤になってくれたのだとつくづく思うのである。
惜しむらくはやはりナビである。
コレさえどうにかなれば…と思うと正直申し訳が立たない。
かと言ってトレンドラインにもしたくは無かったコトもあり、また遠出をそんなに両親がしないコトもせめてもの救いとなるだろう。
ナビを除けば万人に満足が行く内容が多いと思ってしまうのがゴルフⅦ。
外車嫌い、アンチ最新型のあなたもココはいっそ試乗してみてはいかがだろうか??
それで感動すればゴルフを購入してもよいと思うし、つまらないと思えば現在手元にある愛車を更に愛でればイイだけの話だろう。