ご機嫌いかがでしょうか。旧車情報2020
わたくしは二本和彦です。
でー、きょう話題の中心にしますのはスバル・プレオです。
スバルの軽自動車と言いますと、何と言ってもまずはスバル360
の名が浮かぶわけでして、まあこれは軽というより日本の自動車の歴史全体を
振り返る上で必ず出てくる名前なわけですが、1958年の生産開始以来
「マイカー」の普及という面で、大変貢献したモデルでした。
以後、スバルは乗用車1モデル・貨物車1モデルというラインアップで軽自動車を作り続けまして、貨物車はサンバーでずっと変わりなく行きましたが、乗用車はスバル360→R2→レックス→ヴィヴィオと名を変えます。
そして、軽自動車の新規格への移行に伴い1998年にヴィヴィオに代わり新たに誕生したのがプレオでした。
1993年にスズキがワゴンRを出して以降、それまでのハッチバック型より背の高いワゴンタイプが軽の主流になりまして、まあ今ではワゴンRより背高のっぽなモデルも増えたわけですが、このプレオもヴィヴィオより180mmほど高い全高1550~1580mmのワゴンタイプで登場しました。
ヴィヴィオもプレオも他社に比べると多少割高で、やや地味ながらも
飽きなく長く乗れる軽乗用車として、愛される存在であり、軽自動車のパイオニアとしてスバルの軽は一目置かれる存在でした。
ところが、2003年末にスバルはプレオに代わりR2を軽乗用車の主力として売り出します。
R2
が、これが大失敗でした。一言で言えば、デザイナーのアソビが過ぎたとでも言いましょうか、「スプレッドウイングスグリル」なーんていう飛行機の翼を模したグリルをはじめとするデザインが、よく言えば個性的なのですが、全く受け入れられませんでした。
私なんざ大の飛行機嫌いなもんですから、何で違う乗り物の形を模したデザインを織り込むのか全く理解できませんでした。いくら飛行機会社をルーツに持つとはいえ、そんなこと一般ユーザーには何ら関係ないことですからねえ。このあたりにメーカーのエゴを感じます。
室内の居住性も、外見に反しそれほど狭隘でもなく、全高もプレオに比べ30m低いだけなのですがルーフエンドが絞られており、一旦天井の高いモデルになれてしまうと狭いと感じても仕方ない印象でした。
R2の発売直後に、とあるスバル関係者から聞いた話なのですが、工場のある太田市近辺では新車が出るたびに関係者向けの商談会のようなイベントがあって、そこで毎回そこそこ売れるらしいのですがこのR2のイベントの時は、全然売れなかったそうです。そういうところへの参加者は好き嫌いに依らずスバル車を所有しなければならない事情の人でしょうし、付き合いで買うというような人ばかりで、まして値段の安い軽自動車なのに売れなかったというのは
よほどなのでしょうね。
このR2の不振もあってか、わたくしに言わせれば「慌てて」プレオの流れをくむようなハイトワゴンのステラをR2ベースで開発し2006年に発売しました。実はR2発売後もプレオは廉価版・貨物車が併売され、R2の3ドア版というべきR1
というモデルもあり、ステラ、R2、R1、プレオと昔の1車種時代に比べれば豊富過ぎるラインアップを揃えていましたが、反転攻勢とはいかず
2008年についにスバルは軽自動車の自社開発路線の撤退を発表してしまいます。GMに代わり新たな提携パートナーとなったトヨタグループのダイハツからOEM供給を受けることとなり2012年2月のサンバーの生産中止をもって、スバルの軽自動車の生産に幕が下ろされました。
前置きが長くなりましたが、今回わたくしが所有する広島産の屋根の無い車の代車として奇遇にもプレオに乗る機会が生まれました。しかも、お借りしたのは
RS limitedというスーパーチャージャーを搭載したDOHCの64psエンジンに、7速マニュアルモード付CVTがついた4WD仕様の最上級モデルです。市街地(2車線のバイパス)・高速道路・いつもの山坂道の順に乗ってまいりました。VTRが撮ってございます。ご覧ください。
<市街地>
えー、これはスバルがかつて自社開発していたプレオという軽乗用車です。
初めてステアリングを握りましたが、非常に驚いています。
今片側1車線の県道や市道を走っていますが、軽自動車にありがちな、細いタイヤ
サイズに起因する不安定感が全くなくて、手から伝わる接地感が極めてしっかり、どっしりしています。
今回試乗しているモデルは、RSという最上級グレードで、最も威勢のいい
64馬力のスーパーチャージャー付ツインカムエンジンを積んでいます。
タイヤもプレオの中で最も大きい165/55R14というサイズです。
加速感は、過給器が付いてるから当然だとはいえ、小型車に遜色ない
伸びをします。それなりにエンジンも唸りを上げるのでややノイジーですが
寸詰まり感の無い加速ぶりには驚かされます。
これには過給器のパワーも貢献してますが、CVTが実によい仕事をしていると思います。
プレオのトランスミッションは5速のマニュアルとCVTの2種類ありまして、スバルのCVTは1987年に小型車のジャスティに初めて搭載されてからの長い歴史を有しているのですが改めて、このトランスミッションは非力な車に搭載してこそ威力を発揮するとの意識を新たにしました。非力なエンジンから最適量のパワーをうまく引き出します。
わたくしは事あるごとに自分でも耳にタコが出来るほど、小型車特に大パワー車にCVTを載せる事への違和感を申してきまして、それが故にほぼCVT一択(BRZを除いて)を強いられる今のスバルの小型車には全く魅力を感じません。5速でいいから、トルコンのATを復活させるべきと思いますが、わたくしと同じくらい頑固なんですねー
回転を上げると、スーパーチャージャーの作動音と思われるモーター音が
高まります。こういう音を嫌がる向きもおられると思いますが、わたくしは機械っぽくて好みです。
もう1つ気付くのが、このドアサイドの厚みです。
軽自動車のドアというと、もう薄っぺらくて、即突されたらひとたまりもないなと不安になるのですが、このプレオのドアサイドは厚みがあって、肘でもかけられそうなほどです。
わたくしは身長178cm程ですが、頭上高は握りこぶしが2つ入るほどで、広々しています。
この頃のスバルはインプレッサでWRCに参加していまして、WRブルーと称するボディーカラーがプレオにも設定され、内装も青を基調とした仕上げです。
<高速道路>
市街地と山坂道だけで終わらせようと思ったのですが、タイヤも新品でしたし、全般的に非常に調子が良さそうでしたので、僅か1区間(5.4km)だけではありますが、高速道路へ持ち出してみました。
実はわたくしは軽自動車で高速道路を走るのはこれが初めてです。
時速100kmの時のエンジン回転はざっと2900回転ほどです。
100kmを維持しようと思うとさすがにややきつい感じがしますが、80~90の維持であればなんら問題は無さそうですし、追い越しも苦ではないです。
ステアリングは鈍な感じで、少し車線内で左右に動かしてみると緩やかな挙動をします。
<いつもの山坂道>
えー、プレオをいつもの山坂道に持ってまいりました。
ここは最大7%くらいの勾配ですが、山坂道でもまたスイスイとした走りです。
しかもこの日は外気温が26~27℃だったのでエアコンを軽く利かせて走りましたが、何の影響も無いですねー
7速のマニュアルモードを駆使して走りたいと思ってましたが、残念ながらいくらボタンを押しても作動しませんでした。
燃費の報告ですが、今回ざっと80km程走行しまして、満タン給油はしませんでしたので実際のところは不明なのですが、2003年6月発行のカタログに依りますと10・15モードでは16.8km/lと計測されております。
騒音は、数値の計測は出来ませんでしたが、時速100kmでの走行時の印象はエンジンと過給器の
音がかなり唸りを上げていました。この辺は、最新のモデルには劣りますが致し方ありませんね。
<総括>
試乗後に車検証を見てみたのですが、初年度登録が2002年でした。私の所有する屋根の無い車が2005年登録ですから、それより3年も古い車齢18年の個体ということになります。走行距離は12万kmを超えていましたが、18年・12万キロ走行の軽自動車がこれほど走るとは思いもよらず、個体差はあるにせよ、信じ難い思いです。
スバルが生産から撤退して8年も経ちますが、いま改めて、その実力と長い歴史の重みを思い知らされた気が致しました。
先日御大の試乗レポートを見ましたが、そこでも真面目な設計ぶりを敬服する
コメントがされていました。
https://www.youtube.com/watch?v=x-8j03StLNc
多少高価で、地味ながらも、信頼して長く乗り続けられる軽自動車、ビジネスとしては派手さはないのかもしれませんが、こんなすごいクルマを地道に作り続けていたら、果たしてダイハツのOEM車を売ることでお茶を濁すような事態になっていたでしょうか。
それだけに2003年のR2の発売が、後戻りのできない分かれ道になってしまったようで悔やまれます。
そして、軽をやめ、小型に特化・尽力することで、魅力あふれる小型車が生まれると思いきや、軽をやめる前に出たクルマの方が個性あふれて面白いものばかりなのは個人の好みは差っ引いても何とも皮肉です。
時代の渦に埋もれそうなクルマに思いもかけず乗る機会を与えられ、予想以上の発見と敬服にも似た想いを得られたわけですが、そういう胸の高まりを新たなモデルを買うとか前向きな行動に昇華できず懐古主義で終わらせざるをえないのは、何とも辛いですねえ。
何かいい方法はないでしょうか。
かつて富士重工時代のコーポ―レートマーク ○にフがサイドウインドウに