THE TALLのブログ一覧

　４月28日，昼過ぎに携帯が鳴る。

　仕事中は，携帯を作業場に持ち込まない。だが，コロナ騒ぎの営業縮小で事務所に居て気が付いた。後になって考えれば全ては予定調和，天の心遣いである。
　
　画面には電話番号が表示されている。誰だ？
「もしもし，○○病院の…」
　相手が名乗る。
　
　『あぁダメか。』
　最初のこの一言だけで，要件が全て呑み込めた。なぜだか自分でもわからぬが，頭の中にスッと浮かんだのである。
　それだけではない。相手が名乗った刹那，どうすべきかという判断もすでに終わっていたのである。

　こういうとき，創作の世界ではドラスティックな感情の変化があるが，小生はいたって冷静。というより，心情が受け容れを拒否し，理性だけが働いたのかもしれぬ。

　事務的に淡々と検査結果や今後について話す医師。こちらは，意図的にそうしているのであろうことに感謝しながら，落ち着いて聞いていた。
　早急に詳しく説明したい旨を承り，その日の夕刻に出向く約束を取り付け，電話を切った。

　これだけ詳しく説明を受けたうえに，何を聞くことがあろうか。
　いままで「死」は三人称で使ってきた。どこかの誰かの身にふりかかることであって，身近に起こることではない。
　
　ふっと座右の銘を想う。
　逢茶喫茶　逢飯喫飯
　これも日常生活である。とりあえずは約束の時間に病院に出向かねば。
　
　

　

　車ネタでもなく，ここに掲載するのもナンだとは思う。だが，自分の言葉にせねば物事は直視できまい。また，姓名は明らかにしないまでもSNSで世間様に公表すれば，己の心もおのずと定まるであろう。ついでを申せば，皆がいずれ逝く路。縁があって拾うところがあれば拾っていただければ幸いだ。
　かような想いから，ここに記す次第である。

　ただ，心地の良い話でないことだけは確か。
　不快ならば他へどうぞ。多少なりとも賛同があれば，気兼ねなく“イイね“をポチっていただければ結構。
　どう読むかは受け手の問題である。


　さて，標題の“引導を渡す“という言葉だが，日常生活で使うことはほぼないだろう。ヤクザが脅しをかける時ぐらいなもんだ。それだって映画で見たことがあるだけ。実際に脅されたことはない(笑)。

　もともとは仏教用語だ。
　「この世からあの世へ，亡くなった方を渡すこと。」
　仏の道へ死者を導くという意が転じ，最終宣告の意味で使われ出した言葉なのである。


　先日父が入院した(こっち参照）が，すぐに病名を聞かされることはなかった。内視鏡で採取した検体を培養するには時間がかかり，検査結果が出るには10日間ほどかかるらしい。

　ちょうど10日後に，本人ではなくその結果は長男である小生へ知らされるのである。