
若者達が従前では殆ど見向きもしなかった「漢字」が,ファッションの一部として,脚光を浴びるようになっている。書道を題材にしたアニメやドラマを目にすれば,隔世の感がある。
異邦人にも好評で,Tシャツや体に永久プリントされた漢字を見かけることもしばしある。横文字圏の人々は,漢字を紋様として捉え,意味には無頓着に好みの形を選ぶので,時には洒落ではなく,天然でとんでもない語句を選んでいる。失笑を通り越し微笑ましいのもある。これとて,あまり目くじらを立てる必要もなく,漢字の意匠が,国際的に評価されていると捉えれても,良いのではないかと思う。私達の考えすら及ばなかった,その感性は微笑ましく,むしろ褒め称えても良い気がする。
私の遊び仲間の一人に,ある書家がいる。遊びと言っても,演歌でよくある「遊び上手な貴方なのね~~」の「遊び」ではなく,残念ながら健全なレジャーの遊びなのだが。一般的には「書家」と言えば,莫山氏に代表されるように,和服姿の威厳に満ちた老人を連想するが,若い彼女の場合には全くもって「才色兼備」という表現が相応しい。その美貌ゆえ現にTVのCMにも担ぎ出されている。
今,注目されている新進気鋭の書家で,書道に新しい風を吹き込むことに,ことごとく成功されている。身近なところでは時代劇の題字で,独創的かつ彼女の理念とセンスが込められている。きっと一度は目にされている筈だ。その題材の時代背景や,演者の来歴に及ぶ調査にも,膨大な労苦を費やして,たった一枚の書をしたためる真摯さも,またイイ。
余談だが,「日本画なら絵の具代が凄まじくかかるけど,書道って墨一色だけで足り,サラサラッと書くだけで儲け放題でしょ!?」との私の卑しい問いかけに対し,「紙代がとってもかかるの」とのこと。一枚の作品を書き上げる裏には,数百枚の没作品があるそうだ。銀塩写真の世界とも相通じる。
また彼女は「書家」というイメージからは想像できないほど,物怖じせず,何事にも挑戦的だ。彼女が運転する北欧製ステーション・ワゴンの後ろには,スキューバのタンクが積まれていると言えば,人となりが想像できるかと思う。
そして何よりも彼女の最高の魅力は,人柄がとんでもなく良い。気さくで奢ったところが全くなく,人が嫌がることも率先してして行い,厭な顔ひとつせず,キモイおっさんの面倒もよく見てくれる。
「天は二物」ならずして「天は三物を与え賜うた」ようだ。
彼女の最近の作品に,鉄製のものがある。筆の代りに,自ら切断機,溶接機,グラインダーを操って作り上げた。鉄製と言っても,よくある単板を切り抜いた表札のようなものではなく,三次元の立体的な物で,光を当てるとシルエットとして,書が浮かび上がるという独創的なものだ。
そのために彼女は工房に弟子入りし,薄板の溶接も習得してしまった。
今度会った時には,金属パイプを手曲げした作品に挑戦するよう,そそのかそうと思っている。しかも素材も新しいもので,そう,チタン,できればインコネルが最高だ。
「焼けた紫色が,作品に止めどもない深みを与える」なんぞと言いくるめて・・・。それは彼女のテーマ・カラーにも通じる。
そうすれば写真にある「こんな芸術作品」も作って貰えるようになる。
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トレジャー・ハンター | 趣味
Posted at
2010/07/04 23:05:36