
当初の予想に反して,オークションは予想外の盛況だった。
終了と同時に凄まじい勢いで連絡をくださり,翌日には殆どの方が休日にも拘わらず入金済み。
複数の出品をを落札してくださった方も多く,連絡と名寄せと集計にも苦労する始末だった。管理システムの構築を少し考えた程であった。
実の所を言うと,現在ある所と連携して,ネット販売の事業を画策中でもある。図らずもマジで管理システムの重要性を痛感させられた。
素早いご連絡には,こちらも素早い発送で応えなくてはならない。細分化すれば1,000点近い商品の1点たりとてミスは許されない。
何とかオークション終了翌日夕には発送を終えた。
暫く出品していない間に,ネット・オークションのシステムは変っており,落札者との連絡はWEB上でやり取りするようになっていた。
そうしたやりとりの中で,摩訶不思議なことがあった。相手方の返事に
「何のためだか判りませんが,当地域では電源周波数は50ヘルツです」
全く持って怪奇現象だ。どう考えても出品物は電気とは無縁。それに名乗るまでもなく,こちらの名前をご存じだった。昨今のご時勢もあり,最初は私の成りすましが,連絡でもしたかと不安になり,相手確認を慎重にした程だ。
「まあ,相手方の古いメール文の使い回しで,文章の消し忘れだろう。名前は以前に別IDで取引があったとか・・・」
と引っ掛かりながらも,梱包作業を急いだ。
「それにしても不思議だ・・・」
そして,梱包もひと段落した時に,ふと思いつくことがあった。
ネットにアクセスして私の登録情報を,子細に渡ってチェックする。
「ビンゴ!! こいつだ!」
何と,ずっと昔に設定した落札者への自動メール送信文が残っていた。それは電源周波数の設定を要する電気製品を出品したさいに,書いたものだった。
その後の出品物は今回以外にも一点あり,それも電気とは,全く持って無縁なのものであったが,間抜けにも,自動的に電源周波数を問うメールを,送り続けていたことになる。相手様はさぞかし奇妙に感じられたことであろう。
例えるなら,草加せんべいや利尻昆布の通販で,発送に先立ち電源周波数を問うようなものだ。
それに真面目に答えてくださった,そのご好意が,私の笑いのツボに嵌ってしまった。独りだけの部屋で,しばらく笑いが止まらない不気味な光景が続く。私にとっては今回のオークションでの最大の収穫だ。
一通り気が済むまで独りで笑い転げ,深呼吸をして呼吸を整え,台所へと向かった。
流し台の前に立ち,鉄の意志で能面の表情を作り,気を消してコーヒーを粛々と入れる。
「何!? どうしたの!?」
私の背中から鋭い声がした。
「何が? コーヒーを入れているだけだけど・・・」
「何か隠しているでしょう! 何企んでるの! 肩が笑ってる!!」
細かく振動する深呼吸を見破られた。ごく些細な挙動不審も,鋭く見抜かれることが多い。
「何でもない。くだらないことだ。聞くだけ無駄な・・・」
「いいから仰い! 聞かないと気持ち悪いから」
「聞いたら怒るからヤダ・・・」
「言って!」
私は渋々事の次第を,できるかぎり平静を装い,それでも少し声を震わせながら白状した。
「馬鹿馬鹿しい! くだらない! 何がそんなに可笑しいの! ケッ!!」
予想通りの反応で,即座に四連射を浴びた。私が小ネタに嵌るの自体が理解できず,腹立たしく許せないようだ。
「メダカの釣り針のような,微々たる小ネタで笑えるほうが,人生を得している」
と思うのは私だけなのか?
別に五寸釘でなくても,ツボさえ外さなければ,眼球手術用の針でさえも,私を笑い殺すには必要十分な威力を持っている。
今後,私の出品物は何であれ全て,落札者様に電源周波数を伺うのを,アイデンティティーを維持する一環として,伝統にしようかと思っている。
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困った時のハマグリ | パソコン/インターネット
Posted at
2007/09/27 06:21:42