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2007年01月23日 イイね!

鯨が火事 その1

鯨が火事 その1数年前のことだった。その日オッサンは足を延ばすべく,湾口に向けて帆掛け船を走らせていた。
風速は10ノットでメートルに直すと5m,艇速は6ノット。のんびり行くには,ちょうど心地よいコンディションで穏やかな海だ。
「ザザザザザー」という微かな波を切る音と,たまに「ザップーン」という,波頭に乗った船首が,落ちる時に海面を叩く音以外は何も聞こえず,無音に近い航行だ。
ぼけ~~と走らせていると,300mほど右斜め前方の海面が波立ち盛り上がり,真っ黒な物体が浮かび上がって来た。

前端と後端がなだらかにすぼまった葉巻型で,背中の一部分が波頭に見え隠れしている。

「鯨か?」

この辺りには小型でスナメリという種類の鯨が生息している。「プファー」と呼吸のため波頭に背を見せるのは,それまでにも見かけたことはある。
まれに大型種も迷い込むことがあるが,今回のはとても大きい。もし鯨なら数秒で再び潜る筈だが,それは浮いたままで動かない。

「一体何物?」と双眼鏡でよく見ると潜水艦だった。ドックに入っているのは見たことはあるが,洋上では初めての遭遇だ。
潜水艦は出撃して一旦港外に出ると,作戦行動中は帰還するまで,決して浮上しない筈だ。
「洋上で浮上=緊急事態」を意味する。
しばらくすると胴体から濛々と黒煙を吐き始めた。

「火災発生か?」
「救助しなければ」

潜水艦にとって火災は致命的な災害だ。密閉された空間には煙がすぐに充満する。極小のハッチで排煙も困難。元々沈むのが商売。予備浮力も僅かで,消火に水も使えない。

また潜水艦には救命ボートなんぞという有り難いものは搭載していない。あるのは小さなゴムボートのみだ。それも人数分の用意はおそらくない。大半の乗員は救命胴衣のみで波間に漂うはめになる。
船形は近代的だが国籍も不明だ。不用意に接近して,機関銃やロケット弾をぶっ放されるのも困る。玉が当たればきっと痛いに違いないだろう。

物騒な筒をこちらに向けていないか,恐る恐る様子を窺いながら近付いてみた。
Posted at 2007/01/23 11:26:09 | コメント(0) | うみ | 趣味
2006年12月19日 イイね!

誰じゃあ~! こんな所に! 後編

誰じゃあ~! こんな所に! 後編「一体,これは何なんだろう?」

私はあり得る事柄を素早く脳内に並べた。

「そうか!」

後ろを振り向き,ミルク色の彼方に向けて,思い切り怒鳴った。エンジンを掛けている猶予はない。

「前方30メートル,巨大船」
「面舵いっぱ~い!」 (右に曲げる)
「ジャイブ!」      (右側に張っていた帆を左側に)
「ラフ!」         (さらに風上に向かう)

ブーム・・・帆の下端の横棒・・・が大きく空を切り,「バンッ」という大きな音を立てて,帆が替わり,ショックで船体が震える。船はマストを大きく傾けながら,じりじりとコースを変える。

「早く! 早く!」

私は心の中で叫んだ。変針がもどかしい。真横に赤茶けた鉄製の壁が迫る。遠心力で大きく傾いたマストの先は,鉄壁に触れんばかりになる。
後,数メートルという際どさで,ようやくクリアした。
振り返っても見えるのは無限に続く赤茶けた壁のみ,やがてそれもミルク色と混じり,深い霧に飲み込まれていった。

その船はあまりの霧の深さに,あろうことか海峡のど真ん中で,停泊していた。メイン・エンジンの音は聞こえなかった。ま,晴れていてもその鈍重さゆえ,操船は極めて難しい。警戒船を先行させ,露払いをさせることもある。
 
舳先に立ってワッチしていて助かった。


海上交通安全法では、長さ200メートル以上の船舶を「巨大船」と定めている。その時のは恐らく20万トンクラスではと思うが,全長340m,高さはデッキまでだけでも45mぐらで15階建てのマンション並。空荷ならさらに高くなる。戦艦大和の比ではない。大きいのは50万トンのもある。

ちなみに画像ので15万トンぐらい。手前の船は港内遊覧船ではなく,大型トラックも飲み込んだフェリー。
Posted at 2006/12/19 23:24:14 | コメント(0) | うみ | その他
2006年12月18日 イイね!

誰じゃあ~! こんな所に! 前編

誰じゃあ~! こんな所に! 前編 朝になって前夜の雨も上がった。四方八方から霧笛が聞こえて来る。航行する船は多く,潮流も速いことで有名な海峡。晴れていても神経を磨り減らす所で,しかも視界は最悪。
 乗り組んでいた5人全員で,一晩中五感を研ぎ澄まして,衝突を避けながら航行していた。マストにはアルミ製金属板がステルス機とは逆の思想で,デザインした「レーダー・リフレクター」が上げられている。
 帆走しているので,優先権はこちらにあるが,ぶつかればひとたまりもない小舟,相手は衝突にすら気付かず走り去るだろう。撃沈された後で,あの世でいくら相手の非を訴えた所で,何の意味もない。

最も緊張を強いられる夜間航行は,何とか乗り切った。もう日の出の時刻は過ぎている。太陽こそ見えないが,辺りは薄明るい。全ての空間に綿菓子を詰め込まれたような感じで,霧が濃い。

 船の舳先に立ち,聞こえてくる霧笛と,船舶用ディーゼル・エンジンの,地鳴りに似た音の方角と距離の変化のみを頼りに,周囲の船の位置とコースを脳内で組み立て,後方のコックピット目がけて,怒鳴りながら,コースを細かく指示する。
10m程離れたコックピットの操縦者すら,ミルク色に遮られて見えない。声は霧によってはさほど遮られない筈だが,人間心理として自然と大きくなる。

会話が途切れ,「ジャバジャバジャバ」という,船首が波を切る微かな音のみの静寂が訪れると,「あいつら本当に,この船に乗っているのか?」と疑心暗鬼になる。こんな時にはレーダーが欲しくなる。

 私の生まれ持った「パッシブ・ソナー」によると,前方数百メートル以内には何もいない。航路を示すブイもこの先には無い筈だ。しばらく直進できる。
 少し,緊張の糸を緩めた。

とその時,とんでもないものが霧の中から忽然と現れた。巨大な塀が立ちはだかっている。見上げてもそびえ立つ塀は天まで届いている。左右も延々と続いていて,その端なんて全く見えない。

「誰じゃ!! こんな海のど真ん中に,こんな物,おっ建てた奴は!!!」

映画「トゥルーマン・ショー」でジム・キャリーが航海の末,ドーム先端に到達した時と,状況は全く同じだ。

「まさか,地球の端に辿り着いたか!?」

私は口をポカンと開けて見上げるだけだった。人間,全く予想しなかった出来事に突然遭遇すると思考停止する。
Posted at 2006/12/18 22:04:00 | コメント(0) | うみ | その他

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