
私にとっての最高に贅沢な朝食は,美山荘の川床で摂る朝粥でもなく,ましてやおねーたんを傍らに182cm巾のベッドで取る「カールトン スイート」のルームサービスでもない。
境界線や建坪率なんぞの人間が作り出したつまらない枠の外で摂る朝食だ。負け惜しみがいささか,いや,多分に混じってはいるが。
だいたい枠や境という概念そのものにロクなことはない。有史以来それを巡って,「万物の霊長」は殺し合いに明け暮れて来た。
生物界においても同種による縄張り争いはあるが,それとて威嚇や喧嘩レベルに留まり,勝負さえ付けばその場を去りゆく敗者を深追いすることもありえない。
生物界で「殺す」という行為は栄養摂取に限られ,それも必要最小限に留められている。
いっそのこと人類でも「殺した相手は責任を持って,必ず全数食べること」と戦争規定で定めれば,美名で粉飾され扇動された馬鹿馬鹿しい行為もなくなる気がする。もちろん本国の官邸や参謀本部もその範疇に入れれば,これはゲームではないことに初めて彼等は気付くだろう。
・・・と大言壮語はこのくらいにして,緑の中で食う朝メシは,ズバリ旨い。
黎明の中,最小限の食材と器具を携え,そっと静かに誰にも気付かれずに家出をする。機材はミニマムなほど良い。足らずは現地調達と工夫で賄う。
行き先もメニューもその朝の気分で決める。食材もあり合わせ。行くことすら寝起きの気紛れな思い付きだ。
落ち葉と枯れ枝を集め,火を起こす。おままごとの始まりだ。香ばしい木の燃える匂いと共に,一筋の煙が朝靄の中,真っ直ぐに立ち上る。一連の儀式の手間が,質素な食材の味をぐんと高めてくれる。
朝陽を浴びた木々が吐き出す酸素を胸いっぱいに吸いこみながら,食後のチタン・カップのドリップ・コーヒーを飲み干すと,小鳥のさえずりをバックに思わず
「ええなぁ~~」
という台詞が必ず口から出てしまう。
人間も所有するためにではなく,食うために生まれてきた生物の一員であることを,実感させられるひと時だ。
負け惜しみ度 95%
Posted at 2007/10/09 07:10:30 | |
朝ごはん | グルメ/料理