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2011年05月22日 イイね!

トレジャー・ハンター その5  でかっ! 3/4

トレジャー・ハンター その5  でかっ! 3/4トレジャー・ハンター その5  でかっ! 1/4
トレジャー・ハンター その5  でかっ! 2/4
トレジャー・ハンター その5  でかっ! 3/4
トレジャー・ハンター その5  でかっ! 4/4


 目的地は大きな湾を挟んで対岸であった。教えてもらったこの場所と同じ地名だが,ざっと30kmは離れている。道理でいくら探しても見つからなかった筈だ。

普段なら「クソッ!」と悪態をつくところだが,お陰で思わぬ拾い物をした。
古くから栄えた港町にあるヨットクラブの岸壁であるが,とんでもない船が並んで停泊している。
形だけを模したものではなく,紛れもない年代物。ペリーの黒船よりもさらに古い世代ので,まるで18世紀以前にタイム・スリップしたかのようだ。
いくら帆船の歴史が深いとは言え,ありえない光景だ。
セーリングが盛んな国民性とは知ってはいたが,まさかこんな船にも乗っているとは・・・
毎週末動かすとなると苦行に近い。木造船はとても手がかかるが,普段の手入れを想像するだけでも気が遠くなる。

蛇足:
 写真下段に写っているのは,パラグライダーとサーフ・ボードが合体した物。
風は上空になるほど強いので,その風を掴もうとすれば,ヨットでは高いマストが立った馬鹿でかい船体になる。
ところがこの方式だと,手軽に上空の強い風を利用できる。初めて見た代物だが,合理的な滑走体だ。

元々風が強い地方,10m以上は吹いていたと思うが,みんなとても上手い。いや上手すぎた。20人以上いて,しかも半数は女性。
波頭をバンバン飛び跳ねながら,かっ飛んで行くが,誰一人とてバランスを崩さない。
上空の凧には30mぐらいのロープが繋がっているが,多人数で競り合いながらも絡まない。これも凄いことだ。
この国のセーラーの半端でないレベルの高さに舌を巻いて,砂浜から,ただただポカンと口を開けて眺めていた。

・・・後日気付いたのであったが,ここは世界有数のヨット・レースが開催される会場であった。そう言えばあったな「キール・ウィーク」ってのが。
ここしばらく海の雑誌を購入していなかったので失念していた。まっ,廃刊が相次いでいるのもあるが。

世界中からオリンピック・レベルの選手が集まり,大小さまざまなクラスのレースが週をまたいで催される。すっかり忘れていた。
それの出場選手の練習に出くわした次第であった。上手くて当たり前。
ちなみに正体不明だったものは「カイト・サーフィング」というそうだ。

 これも後日調べた結果だが,こちらでは昔の帆船もチャーターできる。
料金は同サイズの現代ヨットより1桁以上安価なようだ。
ただし付録は船長のみで,船員は抜き。つまり船長に怒鳴られながら,船上作業を担う必要がある。訓練所に入るのに近い覚悟が要りそうだ。

それにしてもマリン・スポーツの裾野の広がりと深さが,極東の島国とはかなり違うようだ。
Posted at 2011/05/30 23:14:38 | コメント(1) | トレジャー・ハンター | 旅行/地域
2011年05月15日 イイね!

トレジャー・ハンター その5  でかっ! 2/4

トレジャー・ハンター その5  でかっ! 2/4トレジャー・ハンター その5  でかっ! 1/4
トレジャー・ハンター その5  でかっ! 2/4
トレジャー・ハンター その5  でかっ! 3/4
トレジャー・ハンター その5  でかっ! 4/4


 これも意図せず偶然出会った。
1本マストの帆船のことを「スループ」と言うのだが,スループとしてはほぼ世界最大級。
全長:54m(177フィート),排水量:305トン。乗客10名,乗組員7名。
甲板や上屋の外壁はチーク張りやマホガニーなどで,意図して古風なデザインだが,建造は2009年と新しい。船体はアルミ製で,装備や快適設備も最新鋭のものとなっている。帆船なら老舗のオランダ製で,昨今では無機質なグラスファイバー船が多い中,やはり味がある。

今後も当分,厳しい節電を強いられる日本だが,このヨットには90kwの発電機が2機あり,日本の一般家庭のざっと40軒以上の電力を賄える。

 これだけのサイズでも,たった7人で操船できるのは,各所が電動・油圧化され,省力化されている恩恵だ。実際には7人と言っても,24時間航行なので,シフト勤務のため,航行中は2,3人で動かせるようになっている筈だ。帆の上げ下ろしも全て電動化されている。

 羨ましいのは前後に「スラスター」という油圧駆動の別スクリューが設けられており,水流の方向を自由に変えられる。つまり通常なら人手を要する出港時と着岸時にも,船体を横方向に移動できるし,強風時には厄介な風に流される現象も防げる。

極めつけはマストに登る,かご付きの電動リフトまである。帆船ではトラブル時にマストに登る機会が結構多い。
一般的にはブランコのような板きれ1枚かオムツみたいな布きれ1枚に座って,マストの頂点に付いた滑車から垂れたロープに結び,下にいる数人に引っ張ってもらって上がるのだが,これが凄まじく怖い。
この数人というのが曲者で,「誰かが引っ張っているだろう」と,全員が力を抜くと,落ちてしまう。余程慎重で信用できる人間でないと任せられない。
しかもそういうトラブルは,往々にして海が荒れている夜中に起こることが多い。
洋上で激しく揺れる中,上から見ると船体は箸ぐらいにしか見えない。
船体に落ちれば全身打撲,海に落ちればそのままバイバイか,ロープに引きずられたり絡まったりして溺れる。

ステンレス・パイプでがっちりと組んだ,「かご付きの電動リフト」なら安心感と楽珍さは全然違うだろう。


 写真のニーチャンは若き日のロバート・レッドフォードを彷彿させる容姿で,メチャクチャかっこ良かった。やはり悔しいけどヨットにはアングロ・サクソン系が似合う。どうしてもアジアンは「セーラー」より「ボート・ピープル」と言った風情になってしまう。
ハリウッド・スターの風情でリッチに見えたが,私の問いかけ

「今日はこの後何するの?」に,

「船体にワックスかける」

「そらえらい大変やな」

「ほんまや」

だったので,客ではなくクルー(乗組員)だった。勿論,クルーでも好きで乗っているリッチな方も多いが。

 船籍は毎度のごとくカリブ海のバーミューダ諸島で,ニュージーランド・日本経由でアラスカまで行くとのこと。
このヨットも,ネットで予約画面に希望日と行き先をパチパチ打ち込むだけで,誰でもチャーターできる。

私にも今世のうちに「パチパチ」できる日が訪れれば嬉しいのだが・・・
Posted at 2011/05/30 23:15:47 | コメント(1) | トレジャー・ハンター | 旅行/地域
2011年04月10日 イイね!

トレジャーハンター その5  でかっ! 1/4

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トレジャー・ハンター その5  でかっ! 4/4


 日本ではどんなに小さくても帆さえ付いていれば「ヨット」だが,異国ではかなり大きな船のことを指す。
ちなみに2人乗り程度の小さな帆掛け船は「ディンギー」,それ以上のものは「セール・ボート」「セーリング・ボート」と称する。

「ヨット」とは世界中どこにでも,冒険ではなく安楽に行けるだけの,大きさ・性能・装備を備え,シェフやメイドを含めた専属の乗組員が常勤しているものを指す。

帆船である必要はなく,むしろ少人数でも操船でき,高速でペースが天候に左右されない動力船のほうが一般的かも知れない。

 このぐらいになれば「ヨット」もしくは「セーリング・ヨット」と,胸を張って言い放っても恥ずかしくない。
写真の船でサイズは長さ159フィート(48m) ,幅10m。マストのてっぺんは20階建てのビルに近い高さ。
性能は巡航速度11ノット(20km/h),最高速13ノット(24km/h) 。
太平洋横断であれ,世界一周であれ楽々こなせる。

乗客10人(ダブル 5室),乗組員8人。船体の大きさの割りに少人数だが,難民船ではないので,優雅さを優先して,定員はこの程度に抑えている船が多い。
もちろん船内はエアコン完備で,各客室には専用の風呂,トイレ,化粧室が付いている。


 このクラスの正統的な楽しみ方は

「おネータンと一緒にジャグジーに浸かり,水平線に沈む真っ赤な夕日を眺めながら,シャンパン・グラスを傾ける」

となる。
この船にも後甲板に露天のジャグジーがちゃんとある。
こんな状況では動力船と異なり,厭な音や震動,臭いがなく,聞こえるのは,「ザッザァ~~」という波を切る音のみという静かな帆走が,さらに情緒と優雅さを深めてくれる。
操船はおろか食事の用意・給仕,掃除,ベッド・メイク・・・等々の野暮用は乗組員が全てやってくれる。日夜ただひたすら,おネータンと楽しむことのみに,全身全霊を傾けるだけで良い。ただただ酒池肉林に溺れていればいい。

・・・一度でいいから味わってみたいが・・・


モーターボート,ダイビング機材,ディンギー(小型ヨット)も搭載しているので,色々遊べる。
また当然ながら衛星通信も完備で,世界中どこにいようが電話もFAXもインターネットも常時使用可能で,急に仕事の野暮用が入っても大丈夫だ。


・・・「無理無理! 一生かかっても,こんなの絶対に持てるわけない!」

と思われるだろうが,大抵の場合この類はチャーター運航に供している。
従ってお金さえ払えば,誰でもオーナー面して占有できる。
船籍をカリブ海周辺等の税制優遇国に置くのが大半で,この船はバーミューダ諸島の英領であるセント・ジョージア。

チャーター料は高額には違いないが,10人で割れば,一生に一回ということで,何とかはたける金額ではないかと思える。

・・・依然それでも私にとっては無理だが・・・


ただし,ダブル・ベッドで肌を合わせる相手を,脂の乗ったオッサンではなく,いい香りのするおネータンにしたいならば,分母は5に減り,その倍を覚悟する必要がある。

・・・益々私からは遠ざかる。 一生縁はなさそうだ。

ちなみにクルー(乗組員)のおネータンのただならぬ美貌には,何だか特別の計らいを予感させる。食事は食べ放題,酒は飲み放題なのだが,おネータンも食べ放題か否かは不明。恥知らずで嫌われることに恐れを知らないオッサンでも,さすがにそこまでは聞けない。確かにそれぐらいはあっても,罰は当たらない程度の料金なのだが,「乗ってからのお楽しみ」かもと微妙なところだ。


 クルーズ途中の寄港地でのことであった。

「XX時にYYで客を拾う約束をしているので」

と,そそくさと出航して行った。約束の時刻までは6時間ばかし。

お客はここで一旦船を降りて観光に行き,陸路鉄道でYYへ向かっているそうだ。陸路では3時間ほどだが,海路では半島を大回りする必要もあり,どう考えても2日はかかると思われるが・・・

 まっ,のんびり優雅に楽しむには,2日ぐらいの待ちぼうけに目くじらを立てず,カリブ時間でまったりと過ごす度量も必要なのだろう。
Posted at 2011/04/12 10:52:49 | コメント(0) | トレジャー・ハンター | 旅行/地域
2010年10月16日 イイね!

トレジャーハンター その4 紅葉狩り 2/2

トレジャーハンター その4 紅葉狩り 2/2前スレ
トレジャーハンター その4 紅葉狩り 1/2

・・・で,その実態はと言うと・・・
大正から昭和にかけて建造された別邸で,特に池の面積比率が大きく,庭園が素晴らしい。
この地域には同様の広大な敷地の別荘郡が隣接してはいるが,建造当初に比べ,周辺の開発は進み,コンクリート作りの高層建築も点在している。
 そのような中にあっても,さすが日本を代表する庭師の作,一歩敷地内に入れば,周辺の雑然さを全く見せない,見事な造園が施されている。
とりわけ遠景の仏閣も,敷地内に存在するとしか見えない「借景」の技も驚嘆に値する。緻密な計算に基づく築山と庭木の配置により,邸外の余計な建造物の姿は,完全に視界から消し去っている。

 給水は決して枯れない,一山越えた大きな池から,専用と言ってもよい長い水路を経て行っている。敷地内の小さな滝,小川,池を経た水は,隣接する他の別荘に流れ込む。数軒ある他の別荘も,同様に芋蔓式に他の別荘に水を供給している。利害が絡む現在では不可能な方策だ。何事も「むしり取った者勝ち」の現代とは異なり,共存共栄を善しとする,かつての大らかな時代で,独り占めしないというのが気持ちいい。おまけに電動ポンプにも頼らない莫大な水量がタダだ。

元々この地域は,明治時代に,水車を動力源とした工場群を誘致するために,ダムと水路の構築と共に造成された。しかし急速なエネルギー革命と共に,その用途は意味を成さなくなり,広大な敷地と水源が取り残された。

そして当時羽振りの良かった数人がこの土地を引き取り,それぞれ贅を尽くした別邸を,風情を競い合うかのように構築した。
したがって都市近郊でありながらも,一区画の面積は広大。平野部でありながらも,水量は豊富という,凝った庭園造りに必要な好条件に恵まれている。今ではとうてい実現不可能なことだ。借景に不可欠な山裾を望むも含めて。

 未だ嘗て一度も人手に渡さず,常時ベスト・コンディションに保つのはやはり大変で,専属だけでも十名の庭師の方が常駐し,著名な屋号を背中に染め抜いたはっぴ姿で,毎日せっせと手入れなさっている。
邸内には予備の樹木の養生地すらあり,それだけでも半端な広さではない。

四畳半一間でいいから,隅っこに掘っ建て小屋を建てさせてもらえないかなぁ~~。あの広さなら,多分誰も気付かないと思うが・・・

Posted at 2010/10/16 06:57:10 | コメント(0) | トレジャー・ハンター | 旅行/地域
2010年10月14日 イイね!

トレジャーハンター その4 紅葉狩り 1/2

トレジャーハンター その4 紅葉狩り 1/2「どうだった?」
「おいしかった」
「ん?」

話は数年前に遡る。
帰って来たヨメはんがアクセサリーを外しながら上気した顔で言った。
辺りはしばらく前からすっかり暗くなっている。今日は仲良し奥様軍団で,古都へ紅葉狩りに行って来た筈であった。こちらが知りたいのは紅葉の感動なのだが。

「凄く凝ってた。晩ご飯いらないぐらい。今晩は簡単に済ませよっ」
「・・・・」

私の飼い主であるヨメハンの帰宅に,これから貰えるエサを期待して,尻尾を振っていた私は,突然冷や水を浴びせかけられた。こっちは毎度のごとく,昼に冷凍物を食った記憶が,かすかに残っているだけだ。今日の昼はソバ飯だった。

「お皿も凄く凝ってた。年代物ので」
「食材も特別で,他のお客さん達のとは違ってたみたい」

流し台にはフライパンと木のへらのみ。古伊万里はおろか皿さえ使わずフライパンから木のへらで直接食った。ちなみに湯飲みはプリンの空きカップ。年代物ではあるが廃物利用の濁ったガラス製だ。
今回の行楽を主催してくださった方のつてで,やっと予約が取れた老舗割烹で会食もしたらしい。世の不景気も奥様軍団には通じないようだ。
そこなら今日の昼会席一食だけでも,軽くおとーちゃんの数ヶ月分の昼飯代に相当する筈だ。ひどい時には軽く一年分を,料亭の昼会席たった一食で消費するらしい。

「いくら言っても受け取ってくださらなかった」

高額すぎる場合は,誘った立場と年齢差からか,奢ってくださるのだが,やはりその後のお礼の埋め合わせは欠かせず,インパクトはでかい。

「お店に対するお土産までご用意されてたわ」
「なんでそこまで媚びなきゃいかん?」
「常連であっても,とにかく予約を取るのが大変なんだって」
「座卓も顔が鏡のように写る,大きな漆塗りで,もしお皿の扱いが悪いと,お店の人に叱られるそうよ」
「ワシも壁や天井が鏡の・・・いや記憶違い。人に聞いた話だった」
「器もそっと置かなければならないし,なんだか気を使っちゃった」

こちとら普段の昼は,もっぱら立ち食いうどんで「玉の緒」を繋ぐ身としては,全くもって別世界の話だ。予約の苦労なんざ,アスファルトの照り返しで全てが歪んで見える,炎天下の長蛇の列に比べればたかがしれている。失神寸前になる。
食べ終わった残り汁をポリバケツの上のザルに空ける。ザルにはうどんや蕎麦の麺の細切れや,飯粒がチャンポンで山となっており,見た目はゲロと何ら変らず,食後の満足感を増進してくれる。イザとなったらこれを食えばといつも思う。
 勿論,プラスチック製のどんぶりを,金属網のカートンに投げ入れても,誰も叱ってくれない。
店に対するお土産も無用,回数券さえ出せば,ちゃんと食わせてくれる。

ずっと気楽でこちらのほうが私の性に合っている・・・と密かに目頭の汁を指で拭い,自分に言い聞かせた。

「で,肝心の庭と紅葉はどうだった?」
「広かった。どこが端っこだかよく分かんなかった。赤い木もあったよ」
「それだけか?」
「建物の中にも入った。縁側の梁も床板も,長~~い一本の木なんだって。ここからあそこぐらいの長さ」

ヨメハンの指先は,我が家の外のずっと先を指し示している。
例年は寺社や山を巡る奥様軍団の紅葉狩りではあるが,今回は趣向を変えて,メンバーの方が,幼少の頃かつて住まわれていたお宅で,紅葉狩りをと洒落込んだのであった。現在は誰も住んでおらず,別邸となっているそうだ。後々に分かるのだが,このような御仁にとっての「誰も住んでおらず」という表現は,いささか怪しく曲者なのだが。

「池に船も浮かんでいた」
「風呂で遊ぶガキのおもちゃか?」
「ううん。屋形船で人が乗れる」
「それに乗って夏に天ぷらでも揚げたら旨いだろうな」

隅田川の屋形船で食べた,東京湾の穴子の味を思い出す。

「無理だと思う。茶室になってたから。お月見に使うんだって」
「カセット・コンロを持ち込みゃ火力も問題ない」
「そういう問題ではなくて・・・」

ヨメハンは柔軟思考に欠ける。

「去年は傍の美術館に行った」

そういえばその前年に,そこの近傍の小さな私設美術館に,ヨメハンが連れられて行ったことを私は思い出した。あの時も老舗割烹で結構な物を食って来やがったことも,ついでに思い出した。

その時には紅葉狩りは寺社巡りで,別邸には行かなかった。割烹の近くだったとはいえ,どうして美術館に連れて行かれたのか,訳が分からなかったらしい。
別邸を訪れて初めて,美術館はセットとして存在することが,理解できたそうだ。

「展示物は昔使っていた身の回りの物とかだって」
「鍋釜,たらいやちゃぶ台並べて,有り難がる人がいるのか?」

氷で冷やす冷蔵庫,ローラーが付いた洗濯機,真空管式の丸い画面のテレビなら,私にとっても価値がある。ついでにダイハツのミゼットも。

「そういうのじゃなくて,お茶碗とか」
「他人がメシ食ってた茶碗なんぞ見たくない」
「茶道の茶器や掛け軸とか。よくわかんないけど美術品だそうよ。香炉が多かったわ」
「そんなのより千両箱や金の延べ棒のほうが,インパクトもあるし分かりやすいな」
「思い出のお雛様が見当たらないと,がっかりなさってらしたわ」
「ふーん。それにしても美術館とは大袈裟だな」

 どうも断片的な説明だけで頭の中にイメージが湧かず,ピンと来なかった。
「誰も住んでいない古い別邸」=「ギーッ」と軋む,椎茸や得体の知れないキノコが生えた古木戸を開けて,草ボウボウのジャングル化した庭を抜け,戸車の動きが悪い玄関のガラス戸を,悪戦苦闘「ガシャガシャ」と罵りながら開けて,腐った雨戸を開けるのも一大作業,蜘蛛の巣をかき分けながら,かび臭い部屋を,床板を踏み抜かないよう,異様に柔らかくなった畳を,場所を選んで恐る恐る踏みしめながら,探検したのだろうと,私は勝手に廃墟探検記を思い描いていた。

 それから数年経った今年のこと。

「あっ,ここから入った」
「これも見た!」

とテレビを見ていたヨメハンが叫んだ。今までマスコミにさえ非公開を貫いていたが,今年初めて取材を受け入れたのであった。しかもとんでもないお方までもが映っていらしたのだ。

つづく
Posted at 2010/10/14 05:54:52 | コメント(0) | トレジャー・ハンター | 旅行/地域

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好奇心の塊で物事を知れば知るほど己のアホさを知る,通りすがりのオッサン。
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