
今朝のニュースによると,愛知県にて窃盗の疑いで男性コレクターが逮捕された。
男は女子小学児童のものを中心に5,200足の上履きをコレクションしていた。靴の匂いを嗅ぎながら,持ち主の姿態に想像を巡らし,楽しんでいたそうな。フェチという者は,一般人が見逃すお宝を,あっと驚く嗅覚で探し出してくる。
同好の士が道を踏み外し,逮捕に及んだのは残念だ。
毎夏恒例の花火見物。20人ばかしを乗せた船は,10マイル先の打ち上げ地点目指して,軽いうねりに揺られ,薄暮の中を滑るように進んでいた。程よい強さの潮風が心地良い。
街を歩けば誰もが振り向く,長身の仲良しコンビが舳先で戯れている。黒一色の装いがスリムさをさらに強調する。
CAとMC・・・要するにスッチーと女子アナだ。彼女たちはこの称号を嫌うが,オヤジ心をそそるのは断然こちらだ。
映画タイタニックの定番の一場面,両手を拡げ,舳先から身を乗り出すポーズを楽しんでいる。私はそんな妖精の姿を微笑みつつ眺めながら,二人から5mほど離れたマストの根元に胡座をかき,ビールを飲んでいた。勿論「どいつもこいつも必ず同じことしやがって。オマエらもか」という内心を暖かい笑顔で隠して。他の面子は後方や船内で楽しくやっている。
「何かもの足りない」
そうだ,ビールのあてがない。後ろの船内にまで行けば何かあるが,面倒だ。幸いなことに周りに邪魔者のいない,この特等席を離れるのも勿体ない。
ふと目前の白いデッキに視線を移すと,センスの良いスニーカーが2足,私に奪われるのを期待するかのように鎮座している。天女が忘れた羽衣の現代版だ。
ビール,ネーちゃん,スニーカー,そしてエロオヤジ。
私はこの四者を瞬間的に脳内でコーディネートし,ハイセンスなハーモニーをプロデュースした。そして,彼女達に,素晴らしい思い出を,もう一つプレゼントすることにした。
私はスニーカーに正対し正座した。そして二人がこちらを振り返る瞬間を待つ。
「今だ」私は「パン・パン」と柏手を2回打った。
2人が何事かと長い睫の間の可愛い瞳でこちらを注目する。
私は掌を合わせ,感謝の念を込め,膝の前のスニーカーに一礼する。
先ずはCAのスニーカーを右手にすると,おもむろに持ち上げ鼻にかざした。目を閉じ至福の表情で,昇華する粒子を一粒たりとも逃さないかの如く,ゆっくりと深呼吸する。数秒息を止めCAのエキスの凝縮,汗と脂が仲良く発酵した芳香をご馳走になる。脳裏に浮かんだ凛とした彼女の制服姿と芳香が一体化する。
その記憶が覚めやらぬ内に,左手の缶ビールを煽る。
喉をホップが刺激する。旨い。口を開け大きく息を吐き出す。
次はお前の番だ。MCのスニーカーを手にすると,同様にMCのエキスを賞味し,再びビールを煽る。
「やめてくださいよ!」
二人が声を合わせ,顔を赤らめながら,飛んで来る。できればCAは両手を真っ直ぐに拡げ,亜音速用後退角を付けて,飛んで来て欲しかったが,叶わぬ願いであった。
さすがにそこまでのサービス精神は教育過程にはないようだ。金型でプレスしたような画一的な定型笑顔より,そんなお茶目な仕草の方が,遙かにオッサン心をくすぐると思うのは私だけか。出張族満載の機内で,「ゴォ~~」と発しながら,後退角で席まで飛んで来てくれたら,きっとスッチー・コール連発は必至。想像するだけでも楽しくなる。
「もうっ!イメージが下がるではないですか」
慌てて私の手からスニーカーを奪い取り,スリムな上体を屈めて,履きながら,MCが吸い込まれるような漆黒の瞳を開き,上目づかいに褒めてくれた。
喜んで貰えたようだ。
黒いタンクトップの胸元が垂れ,図らずもおかずがもう一つ増えた。ニュートン万歳。
勿論こちとら,「下げられるのなら下げてみろ」程度のイメージしか,元より持ち合わせていない。ま,サービス精神に由来する,瞬間的に編み出した洒落であったが,ゲストの心に残る,いいおもてなしができて良かった。
Posted at 2006/11/02 23:28:58 | |
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