
いつのことだったろうか? 最後にゴム動力飛行機を作ったのは。
もう20年以上も前になる。当時としても珍しく,レトロの範疇に入る「ゴム動力飛行機」を息子が買って来た。よく見つけて来たものだと感心した。おもちゃ屋や模型店ではミニ4駆,ファミコンの全盛時代。見向きをする子供はいない。
私の子供時代を思い出しながら,息子と一緒に組み立てた。
出来上がった機体を持って,すぐ側のグランドに行く。
何故か今まで捨て切れなかった,黄色のゴム巻器と共に。私が小学校2年生の時に,お小遣いを貯めて奮発して買ったものだ。
軽く滑空させてバランスの微調整をする。変な癖もなく良い具合だ。
私がプロペラを押さえ,息子が長く延ばしたゴムを巻き始める。
小さな手で,ゴム巻器のハンドルを「ジャージャー」という軽やかな音を立てながら回す。途中で数回休んではまた回す。ゴムの小さな瘤ができ,やがてその瘤が集まって更に大きな瘤となる。瘤の成長に反比例してゴムが短くなる。
自分が子供時代に使っていた玩具そのものを,今,目の前で息子が使っている。感慨も一入だ。
フルに巻けた。
息子が左手でプロペラを,右手で木製の角棒の胴体を持ち,火山灰質で黒めの地面に機体を置く。
両手を離すと,「ブーン」と小さな風切り音を立てて,青色をしたプラスチック製のプロペラが,勢いよく回り出す。2m程滑走すると離陸した。勢いよく上昇し,直線飛行でグングン高度を稼いで行く。
「いい調子だ」
更に上昇を続け,周辺のマンションの上を飛び越えて行く。
「凄い」
顎を突き出して並んだ二人の視界から,点になって消えた。
初飛行 = ラスト・フライト
うまく作りすぎた。
少年の頃に比べても,今でさえ私の心は,ただの一点すらも汚れていないようだ。
Posted at 2006/12/02 13:03:57 | |
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