
「一体,これは何なんだろう?」
私はあり得る事柄を素早く脳内に並べた。
「そうか!」
後ろを振り向き,ミルク色の彼方に向けて,思い切り怒鳴った。エンジンを掛けている猶予はない。
「前方30メートル,巨大船」
「面舵いっぱ~い!」 (右に曲げる)
「ジャイブ!」 (右側に張っていた帆を左側に)
「ラフ!」 (さらに風上に向かう)
ブーム・・・帆の下端の横棒・・・が大きく空を切り,「バンッ」という大きな音を立てて,帆が替わり,ショックで船体が震える。船はマストを大きく傾けながら,じりじりとコースを変える。
「早く! 早く!」
私は心の中で叫んだ。変針がもどかしい。真横に赤茶けた鉄製の壁が迫る。遠心力で大きく傾いたマストの先は,鉄壁に触れんばかりになる。
後,数メートルという際どさで,ようやくクリアした。
振り返っても見えるのは無限に続く赤茶けた壁のみ,やがてそれもミルク色と混じり,深い霧に飲み込まれていった。
その船はあまりの霧の深さに,あろうことか海峡のど真ん中で,停泊していた。メイン・エンジンの音は聞こえなかった。ま,晴れていてもその鈍重さゆえ,操船は極めて難しい。警戒船を先行させ,露払いをさせることもある。
舳先に立ってワッチしていて助かった。
海上交通安全法では、長さ200メートル以上の船舶を「巨大船」と定めている。その時のは恐らく20万トンクラスではと思うが,全長340m,高さはデッキまでだけでも45mぐらで15階建てのマンション並。空荷ならさらに高くなる。戦艦大和の比ではない。大きいのは50万トンのもある。
ちなみに画像ので15万トンぐらい。手前の船は港内遊覧船ではなく,大型トラックも飲み込んだフェリー。
Posted at 2006/12/19 23:24:14 | |
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