
耳を澄まして聞くのみのパッシブ・ソナーに対して,アクティブ・ソナーというのがある。レーダーの海中版で,音を出し,目標からの反射音で,主に相手の方位と距離を測る。パルスのドップラー・シフト量から計算すれば,目標の速度や針路も測れる。
スピーカーに相当する「トランスジューサー」が発する音圧は凄まじく,発振時には周辺の海水が沸騰するという。負圧域では真空状態が発生し,キャビテーションで泡も出るそうだ。
ちなみに米原潜装備でポピュラーなBSY-1(ビジー・ワン)戦闘システムで出力75kw以上,BQQ-5Dは若干下回る。
いつも腹立たしく感じるのは,ハリウッド映画でさえ,必ずと言っていいほど,「コンッ・・コンッ・・コンッ・・コンッ・・」と,アクティブ・ソナーの発信音を響かせながら潜航している。潜水艦の存在意義は「秘匿性」に尽きる。作戦なりパトロール行動中には絶対に絶対にアクティブ・ソナーの発信はあり得ない筈だ。
自らの存在を誇示する訳がなく,アクティブ・ソナーの発信は「ワシはここじゃ~~! 早く沈めてくれ~~!」と怒鳴り散らしながら航行するに等しい。
先日放映していた「007 私を愛したスパイ」でも残念ながら同様だった。こういう場面を見ると一気に興醒めする。大好きだった「原子力潜水艦シービュー号」も残念ながら同類だった。
ゲップと屁を連発しながら,床下や天井裏に潜む忍者なんぞ,存在価値の欠片もない。
仮にアクティブ・ソナーのレンジ・・・目標を感知できる最大距離・・・が50kmだったとしよう。発信して反射音が戻るまで往復100kmを音は進んだことになる。ということは,100km先の敵は潜水艦からの発信音を受信でき,潜水艦の存在を感知できる。
つまり発信源を中心とする半径50km~100kmのドーナッツ形の水域は,敵にとっては感知されずに一方的に攻撃できる「安全圏」になるのである。いわゆる「アウトレンジ戦法」を可能にならしめ,結果的に敵に塩を送ることになる。
では,どんな時に使うか?
戦闘状態では確実に仕留められる目標の,差し違え覚悟での最終手段としての,厳密な位置と速度ベクトル確認。直後には魚雷発射する。
平時には極々希なケースとして,マークしている他国の潜水艦が,こちらの存在を知らずに衝突しそうになった時に,警報として使える。
脱線するがTCP-IP,つまりインターネットのチェックで使われるコマンド「PING」の語源は,昔のアクティブ・ソナーの発信音から来ている。「ピンッ~~」という音で駆逐艦から潜水艦を探す時に発せられ,その行為を「ピンを打つ」と呼ぶ。
恐らく現代のはそんな単純な音ではなく,人間の可聴域以下の低周波から超音波まで一瞬に出すと思う。周波数帯とその変調,パルス間隔と幅等々がとても気になる。
憶測では「オオッ~~ピィ~~キュイン~~ン」か,その逆ってところか?
ネットで色々探したが,現代のソナー音の録音データは未だ見つけていない。非常に興味があるのでご存知の方はご一報戴けると,滅茶苦茶嬉しい。ねぇ島津さん。
潜水艦ネタになると話は尽きない。
Posted at 2007/01/28 01:24:14 | |
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