
5月のある晴れた午前,親しくさせていただいている知人から電話があった。
「少しドライブしませんか?」
知人の4駆車に乗り,郊外へと高速道路を走る。
着いた先は畑に囲まれた種苗店。
道路を隔てた駐車場に車を停める。店の規模からすれば広めで,わざわざ駐車場整理のガードマンまで雇っており,ひっきりなしに客が訪れる。
知人が言うには,
「ここの苗はいい。競馬馬と同様,作物も血統で決まる。苗が全てだ」
近隣の農家が,自家消費する作物の苗をここで購入しているそうだ。道理でプロらしき風情の客ばかりで,軽トラが多い。
当たり前だが自給用の作物は,コスト度外視で安全な方法で,良い苗を使って栽培されている。
知人は段ボール箱2箱分のさまざまな苗を購入した。
私は当初全く興味がなかったが,ふとスイカの苗に目が止まった。10種以上はある。
私は店の人に聞いて,手が掛からず成功率が高いという苗を1本だけ購入することにした。葉が大きく枚数も多い,一番元気そうなのを選んだ。同時期に芽を出した兄弟達の中でもきっと出世頭になってくれるだろう。
何かと仕事上では運命の女神にふられた感のある近年,自分の運をこれの成長で占ってみたい気持ちが,どういう訳か急に湧いたからであった。
「大好物のスイカが大きな結実を果たしてくれたら,自分の運も向いて来るかも・・・」
全く根拠のない他力本願的な思想だが,溺れたことのある方なら分ってくれるかも知れない。ちなみにスイカは比較的栽培が難しいそうだ。
帰宅後早速ネットで栽培法を検索する。
狭い庭の土を掘り返し,肥料を施し,苗を植えた。
毎朝成長の観察をするが,数週間経っても一向に成長しない。
数本の蔓が出たが,蔓の全長は20cm程である。
栽培法に従って間引きした蔓は茶色に変色し,そこから枯れが始まり,健常部にも拡がって来た。
葉の枚数は増えこそすれ,苗時代の葉の大きさには敵わない,弱々しい小さな葉ばかりだ。
梅雨を迎えた頃,成長がピタッと止まった。
「スイカの成長って意外と遅いんだな。真夏になればまた伸びるか・・・」
スイカの原産地はアフリカ。とにかく真夏の強烈な日差しと暑さが必要だそうだ。
そんなある日のこと,知人の秘密基地に立ち寄った。
そこには我が目を疑う,衝撃的な光景があった。
Posted at 2007/08/22 12:48:18 | |
運試し | その他