
枯れ草同然の中で,かろうじて残っていた新芽が,フェニックスかのごとく蘇り,反攻作戦開始よろしく力強く成長して来た。
今までにない大きな葉がどんどん増え,それも濃い緑色で逞しい。
映画「ターミネーター2」で言えば,宿敵の「液体金属人間」に主電力回路に止めを刺された,シュワちゃん扮する「ターミネーター」が,一旦は息絶え,あわや
「これで最後か・・・」,
と思われたが,しばし沈黙の後,予備電力回路が起動,最後の力を振り絞り逆襲に転じる,というクライマックスだ。
そして遂に念願の「雌花」が咲いた。
ここで簡単なスイカの習性について述べる。
根から出た短い茎から枝分かれした蔓が伸び,その蔓の1節毎に1枚の葉が生えている。
スイカの花には「雄花」と実になる「雌花」がある。
雄花は多くの節に咲き数も多いが,実になる雌花は13~20節の区間に限られ,1本の蔓に0~3個程度と数も非常に少ない。
しかも咲いているのは早朝から10時頃までの時間に限られる。8時~9時の間に人工授粉するのがベストとされている。
したがって蕾が小さなうちから,雌花を識別し,開花する日時を狙い定める必要がある。同時に雄花も咲いていなければアウトだ。雄花の寿命も午前中で終わる。
多数の苗を植えているなら,数を頼りに昆虫に任せるのも良しだが,私のように一発勝負に掛けているケースでは,ワッチは欠かせない。
雌花の識別は花弁の根元に玉が付いている。大きさにしてBB弾程度で,いっちょまえにスイカの縞模様もある。つまりミニチュア版だ。
完全に諦めかけていたところに,希望の光として咲いた念願の「雌花」
私は早速,姿勢を正し,崇高な儀式を執り行うことにした。この儀式の成り行きいかんでは,私のこの後の運命も左右される。
同時に咲いた雄花を摘み取り,花弁を千切り,力強くそそり立つオシベを剥き出しにする。
これで人類に例えるなら「デフコン1」の臨戦態勢に入る。ほ乳類に例えるなら・・・以下自粛。
剥き出した凶暴なオシベの先で,何度も何度も入念に,可憐な生娘を責め立てる。
なにしろチャンスは一度限りだ。次はない。
殿の寵愛は情けとは無縁だ。
「あ~~~れ~~~」
「これはどうじゃ」
「びえぇ~~~」
責め場所を変え,オシベを変え責め苦は続く。
「これ以上はご無体な。お許しくださいまし。お殿様」
「いやいや,許さんぞ。まだまだ,これからじゃ」
入念に入念を重ねる。
「何卒ご慈悲を,ご慈悲を,ご慈悲を・・・・」
哀願する声が脳内で聞こえて来た。
天下の行く末がかかった「お世継ぎ」誕生のためには,多少の蹂躙は許される筈だ。
「もし次回もこの僥倖にあやかれるなら,声に出して行おう」
懐妊を祈ると共にそっと心に誓った。
午後になって生娘をそっと観察してみた。
殿の寵愛の証を,体内にいっぱい授けられたそれは,他の男達を拒絶するかのように,花弁をしっかりと閉じて貞節を守ると共に,責め苦の疲れからか,項垂れてそっと眠りに付いているようだった。
「ご懐妊」の報が待ち遠しい。
・・・・本当のことを言えば,この「儀式」が書きたかったのだが,ここに至るまでに,かくも多くのエネルギーを費やしてしまった。
トリは落とさずにはいられない性が哀しい。そして重さを思いっ切り低俗な軽さで吹っ飛ばしたい。
「ふぅ~~」
Posted at 2007/08/26 21:55:04 | |
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