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2011年06月12日 イイね!

流れ流れて その11  何でもありチュウカ,何でもやっチャイナ 4

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流れ流れて その11  何でもありチュウカ,何でもやっチャイナ 4


 西日が低く照らす交差点脇の小さな広場に,10人ばかしの人々が集まっている。殆どが買い物帰りの主婦達だが,中には子供もいる。
辺りに薄くたなびく煙に運ばれた香ばしい臭いが,仕事帰りの私の空きっ腹を刺激する。
人力で引くリヤカーを改造した屋台があり,横幅2mほどのバーベキュー・コンロにで魚,鳥,野菜を焼いている。
客は焼き網の向こうに並んだ食材から好きな物を選び,。炭火で焼いてもらうのだ。日本なら高級店でしかお目に掛かれない炭火焼きが,ここではデフォルトなのがありがたい。

殆どの人々は夕食のおかずに持って帰るが,望めばそこでも食べられる。
辺り一面に立ちこめた,夕方の空きっ腹に直接訴える香りが,達者な宣伝員の役目を十分に果たしてくれる。呼び込みなど全く不要だ。

 広場と言っても大きさ30mX8m程度で,商店街の外れにある。ビーチ・パラソルが付いた丸テーブルが3つほどと椅子が置いてあり,近所の人々が飲み食いしながらワイヤイ・ガヤガヤ,ちょっとした宴会になっている。

 私は,露天とは交差点を隔てた向かいのホテルに荷物を置き,「今日は何を食おうか」と出て来たところであった。

 ここは長江・・・旧揚子江の河口にある広大な中州に位置する小さな港町。中心街には「人民共和国」という名に相応しい,質素で年季の入った5階建てほどのアパートが立ち並んでいる。

郊外には解放政策になってから建てられた,広い区画に欧米風の豪邸が並んでいる。政府高官の別荘地として人気があるそうだ。

 中州といっても河岸との連絡には,船で1時間前後かかる。「川が荒れる」と欠航になり孤立する。この国ならではのスケールの大きさだ。
船着き場には,お気の毒にも川に浮かんでいたご婦人の,身元を尋ねる貼り紙があった。効率的だがリアルで,ある意味この国の人々の逞しさを感じさせる。


 「店」と言っても大きめのバーベキューのコンロと,食材を並べる2mX70cmぐらいの机,冷蔵庫代わりの発泡スチロールの箱が全てだ。
主人らしき30才前後のニーチャンと少し年下の子分らしきニーチャン。どちらも坊主頭で強面。喧嘩早い感じで,さぞかし若い頃はやんちゃだったであろう雰囲気。そして20台後半らしき愛想良さそうなヨメさん。この三人で店を賄っている。ヨメサンは専ら焼き役に徹している。

その失礼ながらも,いささかの胡散臭さゆえ,躊躇して遠巻きに様子を伺っていたが,なかなか繁盛している。大丈夫そうだ。晩飯決定。
かしこまったレストランよりも,こういった所のほうが性に合う。露天であることが何よりも良い。

 食材の種類はそこそこあり,大河の河口に位置する中州ゆえか,中には見たこともない,得体の知れない魚もあるが,空きっ腹には,どれもうまそうに見える。
私は迷いながらも魚と野菜を何点か選び,真っ赤に燃える炭火の上に載せてもらった。この火力なら3分もかからないであろう。

焼き上がった餌を受取り,ついでに箸ももらった。10mばかし先のテーブルを見るが,どれも満席だ。

「まっ,いいか」

屋台の裏手で立ち食いすることにした。

それを見た人相の悪いご主人,「ここに座って食え」と,上に載った荷物を片付け,発泡スチロールの箱を,引きずりながら持って来てくれた。意外に親切だ。
ありがたく座らせていただき,腰を落ち着けると,次にはビールが欲しくなる。

「ビールは売ってないの?」

「あそこで売っている」

とすぐ脇の商店を指差す。早速買いに行く。
夕暮れの中,行き交う人々や人力三輪タクシーを眺めながら,まったりと食う。

 2本目のビールを空けた頃,店仕舞いの時間が来たようだ。ヨメハンは残った食材をジャンジャン焼き始める。「閉店安売りの時間か?」と思ったがそうでもないらしい。
「さあ終わった」とばかりに,パッと表情が明るくなったご主人と子分が,向こうから空いたテーブルと椅子を持って来た。
その上に焼き上がった食材を並べ,発泡スチロールの箱から取り出したビールの大瓶を並べた。人数より一本多い。

そして私の方を見ると,

「こっちへ来い,ここで一緒に食え」

と手招きする。とりあえず遠慮したが,しきりに勧めてくれる。
あまり遠慮するのも失礼なので,仲間に入れて戴くことにした。
私がテーブルに付くと,「ホィ」とばかりにビール瓶を渡され,

「カンペー」

と瓶同士を当てる。そして一気飲み。すぐに次の瓶を出してきて,

「カンペー」

と,また一気飲み。それも大瓶だ。

テーブルの上はご馳走ですでに満杯だが,ヨメサンはお構いなしにジャンジャン焼いている。
二人は凄いペースでむさぼり食い,そして呑みながら,

「食え,もっと食え。呑め,もっと呑め」

としきりに勧めてくれる。とてもついて行けない。
きっとこの楽しみの為に,毎日商売しているのに違いない。売り上げや利益なんぞ糞食らえの潔さだ。きっと「宵越しの銭は持たねぇ」嘗ての江戸の町民もこうであったのだろう。

 ふと焼き網の上を見ると,次のメニュー,無数の鶏の足が載っていた。もも肉ではなく,大地をしっかりと踏みしめる爪の付いた足だ。

「やばい・・・」

私は宗教上の理由で鶏を避けている。ちなみに宗教上好ましいとされるのは,鮑,かに,伊勢エビ,フカヒレ,フグ,カラスミ,鰻,霜降り和牛・・・等々だ。ましてや足先なんぞ食すれば,天罰で地獄行きは確実だ。コラーゲンなんぞいらん。

「焼けたよ」

とばかりにヨメサンが,大きなボールに山盛りの「足」を,テーブル上にドンと置いてくれた。

「おっ。来たか」とばかりに,ご主人と子分の二人が豪快にかぶりつく。

「さぁ,食え」

覚悟を決めて怖々囓り,なんとか一本だけ,いっぱい皮と肉を残して食べたが・・・

「もっと食え」

しょうがなく2本目も・・・

「もっと食え」

限界だ。
この鶏足,その形状から日本では別名「もみじ」と称しファンも多いそうだが,赤ちゃんの「もみじのような可愛い手」ならまだしも,私にとっては,そんな愛着は抱けない。

「折角だけどすまん。もう腹いっぱい」

と腹をさすって,何とか誤魔化した。
そしてタバコを勧め,話題をそらした。
私の語学力の皆無さゆえ,お互いチンプンカンプンな会話で,噛み合わないが,呑めばみんな友達。まるで十年来の友達のように楽しくご馳走してもらった。


 この国では反日教育が国是とされているが,庶民レベルの付き合いでは,私はありがたいことに厭な目に会ったことはない。特に地方部においてだが,むしろ気さくに良くしてもらったことのほうが多い。

帰り際,いくばくかのお金を渡そうとしたが,断じて受け取ってはくれない。押し問答の末,「焼け石に水」にさえもならないが,嘗ての日本人がこの国の人々に対しての数々の所行の償いの気持ちもプラスして,お礼を無理矢理テーブルに置いて暇した。
Posted at 2011/06/19 23:23:00 | コメント(0) | 流れ流れて | 旅行/地域

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