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2010年04月01日 イイね!

やってしまった! まあ~ なんとかなるやろ・・・

やってしまった! まあ~ なんとかなるやろ・・・まったくその気がなかったのだが,久しぶりにやってしまった。

少し時間の余裕ができたのに乗じて,以前のカキコ「物欲 その2」~「物欲 その7 」に記したエンジンの使い道に適した機体を探して彷徨っていた。
候補はいくつか見つけたのだが,いくらメンテナンスが良いと言っても,所詮1945年前後に製造した機体,見えない部分での腐蝕や金属疲労を考えると,700km/hで飛ばせば,いつ機体がバラバラになっても不思議はない。
勿論エアコンもなければ与圧もなく,快適性なんぞ糞くらえの「生きて帰れただけでも儲け物!」の世界で,機体のみならず勤続疲労を起こしたオッサンの体も,どこまで持つかおぼつかない。
 ちなみにP-51のVne(Velocity never exceed: 機体が耐えうる最高速度)は,現代の基準を持ってしても異例に高い値で,実戦時の急降下では音速を越えることもしばしあった。

 そんなわけで最後の一歩が踏み出せず,悶々としていたが,
「あそこに行けばアリゾナ」
・・・という夢枕に立ったご先祖様のお告げに従って,砂漠地帯をほっつき歩いていた。

で・・・最近までエア・レースで飛んでいた「Flight Worthy」(耐空証明付き=現役で飛行可能)なP-51があるとのことで訪れたエージェントにそれはあった。お目当てのP-51の機体自体は素晴らしかったが,

「リノのレースに出るのか?」
「いや,あんな低い高度で400オーバー(720km/h)で飛べるほどまだ呆けていないし狂っとらん」
「じゃあ何に使う? アフリカで戦争でも始めるのか?」
「手持ちのターボ・シャフト・エンジンの使い道を探している。換装するつもりだ」
「気は確かか? やめてくれ! そんな奴には譲れん」

・・・という次第であった。もっとも,とっても良い値で,全く手が出せるレベルではなかった。

事前知識なしで訪れた業者だが,
「どうせプロペラ機が数機あって,真っ黒な油が掌や腕に入れ墨のように染み込んだ,『社長兼パイロット兼整備士』のオッチャンが出迎えてくれるだろう」
との予想に反して,想像を遙かに超える規模だった。
自社所有のジェットがそこらにポンポンと無造作に駐機してある。自前のハンガー(格納庫)も立派で,ちょっとしたライン(旅客機運航会社)ほどの規模がある。極めつけは自前のタワー(管制塔)すらある。とても日本の基準では想像も及ばないレベルである。聞くところによると80年の歴史があって,複葉機時代からの老舗とのこと。第一印象は「完全に参った」であった。

事務所でコーヒーを啜りながらの世間話の席で,
「代りにこっちはどうだ? トイレもバーも付いているぞ」
とジェットの新機のカタログをテーブルの上に半ば投げて寄越し,臆面もなく気軽に勧める。

「100代ローンを組んでくれて,スッチーにブルック・シールズを付けてくれたら考えても良いが」

「なら中古はどうだ。かつて新機をウチで売った素性の知れた良いのがいっぱいあるぞ。この景気,相場も随分こなれている。今がチャンスだ」

「無理無理。生まれ変らんと」

「見るだけならタダだ。付いて来い」

・・・ということで連れられて見て回った。

おおよその相場は知っていたが,確かにかつてに比べればとても下がっている。・・・とは言っても私には無縁の世界。
ちなみに昔から,ほぼ天寿を全うした格安オンボロ・ジェットもこちらでは数多く出回ってはいたが,仮に無理して入手できたとしても毎年メンテに購入価格の数倍は掛かる。

ここに並んでいるのは年式も程度も良いのばかりだ。

全くの冷やかしで話しを聞いていたが,広い格納庫内部の遠くの暗がりの中に,何故だか1機だけ薄明るく浮かび上がって見える,とても気になる機体があった。
その機体は他の機体の説明を聞いている間にも,薄暗い格納庫の隅から「早くおいでよ」と,まるで私に呼びかけ秋波を送っているかのように,私の気を引く感じがずっとしていて不思議であった。

1機づつ社長自らの説明を聞きながら,全く買う気も買える甲斐性もない気楽さ,
「素晴らしい! 安い! うちの会計士と相談してくれ (勿論そんな者いる筈もないが)」
を連発しつつ軽くかわしていたが,やがて件の気になる機体の前に来た。

 遠目ではそこに並んだ何機かと同機種ではあったが,近寄って良く見ると,超レアな機種だ。他ブランドの派生機種は何度か目にしたことはあったが,このブランドの同モデルの実機を見たのは初めてだ。
開発と発売時期が最悪で,波瀾万丈な生涯を負った機種で,ビジネス的には完全な失敗作であった。発売当初はしようがなく政治的に官庁に少数納機され,その後に製造権・販売権・メンテ共にごっそり他社に身売りされた経緯がある,曰く付きの機種である。

比較的初期モデルの,それもレアな「高温・高地」モデルであり,販売時の当該会社とブランドはすでに消滅している。まあ親会社は残っているが,縁は切れている。

「珍しいね」
「いい機体だがマイナー・ブランドが災いしてか,どうも人気がない。敬遠される」

根掘り葉掘りしつこく聞いてみると,85年モデルだが,飛行時間も短く,素性もコンディションも良い。内外装共2005年にリフレッシュ済みで主要部もオーバーホール済みだ。他の部位に関しても,次のオーバーホールまでの猶予も十分で,当分は凌げそうだ。
何と言っても新機時よりずっと格納庫保管。車で言えばシャッター付き車庫保管だ。この年数になると,これはとても珍しく,大きな得点となる。
 なお,航空機の場合,全ての機体において,所有者,飛行,整備,事故等の全記録が厳格に保管され,中古車のように「巻き戻し,所有者/走行/事故/整備等の履歴不明や改竄」といった胡散臭さは幸いない。

ここにある同年式で実質中身は同じだが,ブランドのみ異なる兄弟機よりコンディションも良い。そちらの価格はライバル機よりは下回るとは言え,腐ってもジェット,それなりだった。

当然ながらそれに準ずる筈で無理は承知ながら聞いた。
「いくら?」
「XXXX」
・・・XXXX0・・・兄弟機の5倍近い価格だ。
「少々コンディションが良いだけで,何で5倍にもなるんだ?」
「5倍じゃない。ハーフだ」
「○×△■◎▽!!!」
!!! もう壊れてしまった。ゼロ一つ多く勘違いしていた。

「時間あるか? この後の予定は?」
「スーパーに寄って弁当と酒買って,ホテル帰って一人で弁当食って風呂に入って寝るという大事な予定がある」

・・・という次第で,判ってはいたが,やはり一度飛んでしまったら最後,後には戻れなくなってしまった。
速度重視で異例の高翼面荷重(主翼面積が小さい)だが,全幅フラップ&スラットの特種設計の恩恵で,思ったより離着陸の速度は低い。
ロール(左右の傾き)制御は,エルロン(主翼後部にある,機体の左右の傾きを制御する小翼)がないため,スポイラー(主翼上面に起き上がって,空気抵抗で揚力を左右で変える小さな板)で行うが,これも予想に反し変なクセはなかった。却ってエルロンでは半ば不可避の主翼捻れも起こらず,予想外な素直さであった。

コックピット(操縦席)の計器やスイッチは多く,満艦飾で時代を感じさせるが,操縦系統を含めローテクな分,故障時のメンテ費用も削減できる。フロント・グラスの曲面が3次元でなく2次元で,今時ユニークかつ不細工ではあるが,視界の歪みのなさに免じて許せる。
ターボ・ファン(エンジン内のプロペラ)のバイパス比も,当時としては大きな70%で燃費もまあまあ。まるで第二次大戦機かと思わせる,古式な遠心式のコンプレッサーで,エンジン径は異様に太くカッコ悪いが,これはこれで,通常は目玉が飛び出すブレードの交換費用も比較的安上がりで済む。

高地・高温モデルの恩恵で,標準より高出力で巡航速度も最新型と遜色ない。一旦雲の上に出れば,速度感はプロペラと大差ないが,さすがジェット,上昇力がプロペラとは桁違いだ。

 そして降りてからの鎬あい。必死で「いらん。大したことない。つまらん」
のポーカー・フェースを作りながら,

「どうだ。決めたか?」
「宝くじが当たったら買っても良い。売り場まで送ってくれ。置く場所もないし」
「ここで良ければ,当分サービスする」
「エンドースメントも金が掛かるし・・・」
 ちなみにこのクラスになると汎用の基本免許以外に,機種毎の操縦許可(お墨付き=エンドースメント)が要る。

「この機体で訓練が条件だが,タダでしてやる。俺もFAA(米国連邦航空局)のインスペクター(検査官)の資格を持っている」

「メンテ費用も掛かるし」
「当初はパーツ原価実費のみでやってやる」
「後々も場所と工具貸してくれるか?」
 (私のポン友は正規にジャンボの整備も操縦もできる)
「空いている時ならOKだ」

・・・とその後も延々とごね,破格の条件に。

「TCAS(衝突防止装置)とフェリー用(長距離飛行)の増設燃料タンクを付けてくれたら考えてもいい(無理難題を吹っ掛けて,諦めよう・・・)」
「オーバーホール済みの中古なら」

でもやはり最後の一歩が踏み切れない。
「金もないし。XXXXが限度だな(所詮冷やかし。度を越して買い叩く・・・)」
「う~~ん。無茶苦茶言いよる。負けたよ。デポジット(手付け)今日なら」
・・・さらに突っ込んだ条件の交渉が続く・・・

「カードしかないぞ」
「かまわん」

斯くして久しぶりに,「やってしまった」。
後のことは,まぁ何とかなるだろう・・・と信じて。
オマケとしてデポジットのポイントだけでも,尋常でないマイレージを稼げるという皮肉な結果になりそうだ。

ただし,カード会社の手数料も馬鹿にならないので,後日現ナマと差し替えで一旦取消し,その分いくらかディスカウントしてもらい,代りにメシを奢る約束をしている。レストランまでの足はこいつで。
こちらでは客が「道の駅」に立ち寄る気軽さで,自前の足で飛んで来る「空の駅」がある。
また,これで例年のオシュコシュの集会にも,気兼ねなく無理なく行ける足が確保できた。

 参考までにだが,従前において双発では数々の規制ゆえ,商用利用の大洋横断は実質不可能であった。海に囲まれた日本では,双発ジェットの利用価値が低かったが,昨今では緩和され,条件次第で大洋横断も可能になっている。これによりDC-10やトライスター等の3発機は現在は殆ど廃れ,代りに経済的な777等の双発機が国際線の主役になっている。



Posted at 2010/04/01 19:17:30 | コメント(1) | そら | その他

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