2015年12月20日
病室に戻り息子はすやすやと眠っている
おれはタバコを吸うために外へ出た
外はうっすらと明るくなっている
再びオレは病室に戻った
ベッドに横たわる息子にそっと手を触る
『えっ?おい、なんでだ?』
息子の手が冷たい
もう一度オレは息子の手を両手で確かめてみた
その時あの男の声がした
『おっさん、これで楽になっただろう?』
男はなんの感情も込めずに話していた
『まさか、お前オレの息子に何をしたんだ!』
『いいか、よく聞けよ!これがこの子の運命だったんだ
いくらおっさんが望んでもこの子が生まれた時から決まっていたことだし、変えることはできないんだぜ』
オレは立ちすくみ現実を受け止めることしかできない
どれくらいの時間が過ぎたのだろう?
気がつくと病室の息子を見つめながら
自分の不甲斐なさに落胆した
確かに息子の看病に疲れ果てていた
『もうこの子を守る必要もない、オレはひとりなんだ…ならば、もう…』
オレは無意識に病院の屋上に向かった
冷たいはずの空気が頬を掠めている
だか、今のオレにはその冷たさすら感じることすらない
『ここから飛び降りれば…必ず死ねる…息子のところに行ける』
足を一歩踏み出そうとしたその時だった
『おい、おっさん!頼むからこれ以上オレの仕事増やすなよ!』
背後からあの男の声が響いた
『おっさん、あんたの気持ちはわかるが、その前にこの手紙を読んでから決めるんだな』
その手紙には息子が病院になってから字がかけるまでの間父親のオレに宛てた気持ちで埋め尽くされていた
『お父さんへ、いつもつかれているのによってくれてありがとう
ぼくの病気はたぶんなおらないとおもうよ、ぼくはお父さんよりながく生きれないかもしれないけど、ぼくが先に死んでもぼくが元気だったころの思い出といっしょにぼくのぶんまで長生きしてね』
『そうだったのか…』オレは全身が震えていた
それは寒さのせいではなく
こんなにも息子がオレに気づかってくれていたからだ
『なあ、おっさん
人って奴は希望と絶望の狭間で生きているんじゃないのか?
つまり、絶望の裏には希望があって、希望の裏には絶望がある
今のおっさんは確かに絶望のどん底だろうが、その先には必ず希望があるはずだぜ
だから、頼むからもうこれ以上オレの仕事増やすなよ』
オレは涙が溢れて止まらない
そして
その場にへたりこんだ
あらためて息子からの手紙をもう一度読み返し
オレはもう一度生きてみる心の底から決心をした
それからどれだけの月日がながれただろう
オレは新しい家族をもった
会社帰りオレはケーキ屋に寄り注文してあるケーキを受け取り家路へと急いだ
古びたアパートの階段をゆっくりとのぼり
ドアを開けた
『お父ちゃん、お帰り~』
小さな食卓にはささやかなご馳走とケーキ
そのケーキにロウソクをたて火をつけた
『じゃ、みんなで一緒に消そうな』
『あっ、待って!写真持ってこなきゃ
だって今日はクリスマスだからみんなでお祝いしなきゃ!』
ご馳走とケーキを囲み
ケーキの横には
オレとまだ元気だった頃の息子が笑っている写真
『メリークリスマス!』
娘は元気よくロウソクの火を消した
オレはふと外に出た
すると
『おい、おっさんメリークリスマス!』
あの男の声がした
『おお、メリークリスマス
あんたのお陰だよ、本当にありがとうな』
『なに、礼なんかいらねえさ!ただひとつだけ聞いておきたいことがあるんだ
なぁ、おっさんはサンタクロースを信じるかい?』
『ああ、信じるとも!』
『なら良かった、じゃオレはもう行くぜ
何せ今日は一番忙しい夜だからな』
そう言い終えると男は夜空にスーっと姿を消したていった
おしまい
Posted at 2015/12/20 19:16:46 | |
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