2018年02月14日
果たしてコレは正常に機能するのかな?
自動運転レベル分けの日本語版が登場。誤解を招く用語も解説
公益社団法人 自動車技術会が、JASOテクニカルペーパとして「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」を2018年2月1日に発行、同会ウェブサイトにて無償公開している。
これまで自動運転のレベル分けというと、いくつもの分類方法があったが、現時点ではSAE Internationalが2016年9月に定めた「SAE J3016」による分類がスタンダードとなっている。
自動車技術会が公開しているのは、その日本語参考訳にあたるもので、無償公開した理由をこう説明している。
「自動運転の今後の普及を考えた場合、様々な場面で統一されていない自動運転に関する認識・用語(レベル)があると社会受容性にも影響があることから、SAE J3016の日本語参考訳を発行し、広く国民に認知させたいとの考えの元、JASOテクニカルペーパとして無償公開することとしました」
すでに知られているように、SAEの自動車分類はレベル0(運転自動化なし)からレベル5(完全運転自動化)まで6段階となっている。そして「自動運転システム」と呼称できるのはレベル3から上の段階であることを、このペーパーは示している。
マーケティング的な面から運転支援システム全般に対して「自動運転技術」と呼ぶこともあるが、今後の運転自動化の普及を考えると、誤解を招く用法は避けるべきだろう。
その点でいえば、このペーパーの後半に書かれている「推奨しない用語」という項目は、メーカー関係者、自動車メディア、またブログやSNSで積極的に発信しているユーザーは目を通しておくべきだろう。
たとえば完全運転自動化について「自律型」という表記をすることもあるが、自律型という言葉はスタンドアローンで動作するという意味があり、厳密に言うと通信を利用した協調型の自動運転は自律していないという見方もできる。こうした曖昧さにつながるため「自律型」という言葉を、このペーパーでは使用していない。
また「無人」という言葉については、レベル5の完全運転自動化となったクルマが乗員ゼロの状態で移動しているのか、単に遠隔操作によって動いているのかを区別できないため、やはり自動運転のレベルを示す文脈では使わないことが推奨されている。
なお、レベル3~5を「自動運転システム搭載車両」と表記するのに対して、レベル1~2については「運転自動化システム搭載車両」とすることが推奨されている。
しばらくはレベル2とレベル3が混在する(もちろんレベル0もあるだろう)ことを考えると、「運転自動化」と「自動運転」の違いをユーザーが認知できるよう、啓蒙する必要がありそうだ。
そこに一役買うのがアーリーアダプターとなる自動車ユーザー。ぜひともJASOテクニカルペーパ「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」をダウンロードして、目を通しておきたい。
(文:山本晋也)
自動運転中の事故、責任の所在は? 運転者の過失は生じるのか 損保会社に聞く
現行の自動運転技術は「レベル2」
現在、世界中の自動車メーカーが自動運転技術の開発に注力し、日本でもさまざまな実証実験が行われています。
ひとえに「自動運転」といっても、レベル1からレベル5まで5段階があり、現在、日本で市販されているクルマに搭載されているのは、レベル2までの技術です。レベル1は、自動ブレーキやACC(アブダクティブ・クルーズ・コントロール。車間距離を一定に保ちながらクルマが定速で自動走行する)などのいわゆる「運転支援」技術、レベル2は、同一車線における自動操作や、車庫入れの自動化といった要素を含む部分的な自動運転化で、たとえば一部の日産車やメルセデス・ベンツ車などに採用されています。
現状の自動運転技術における事故責任の所在や、本格的な自動運転となるレベル3以上の自動運転が実用化されるであろう将来における保険のありかたについて、損害保険大手の損保ジャパン日本興亜(損害保険ジャパン日本興亜)に聞きました。
――現状、レベル1、レベル2の自動運転中における事故は、どのように扱われるのでしょうか?
ドライバーが運転の主体であるため、ドライバーの過失になり、現行の自動車保険で支払いの対象となります。
――そもそも自動運転機能搭載車に乗っている場合、保険料や等級などは異なるのでしょうか?
現状では自動運転機能搭載車について保険料や等級に違いはありませんが、関連する割引として、2018年1月から、衝突被害軽減ブレーキの付いた車の保険料を9%割引く「ASV(先進安全自動車)割引」を各社で開始しました。
「無人」の自動運転では?
――いま現在、レベル4で実証実験しているようなところで、保険はどのようになっているのでしょうか?
警察庁が2017年6月に「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準」を策定しましたが、この基準に沿った実証実験においては、車両の「遠隔監視・操作者が法上の運転者に課された義務を負う」とされており、運転者が明確になっているため現行の自動車保険での対応が可能と考えています(編集部注:上記の警察庁基準に基づくレベル4の実証実験は、2017年12月に愛知県や東京都、石川県で行われた。いずれも運転席が無人の遠隔操作によるもの)。
なお、当社ではこれら実験にかかわるサイバーリスク、賠償リスクなどに対応するため、包括的な保険設計も提案させていただいています。また、当社はレベル4以上の自動運転における事故が起こった場合の原因究明や、新たなリスクを研究するため、2017年5月から東京大学と共同研究を開始しました。研究期間は3年を予定し、2020年までの自動運転(にまつわる保険)サービス実現を目指します。
――今後、本格的な自動運転車が登場するにあたり、いまの保険とどう変わってくるのでしょうか?
システムの欠陥や不正アクセスなど、考えられるリスクを検討し、新たな保険商品やサービスを開発している段階です。当社ではニーズにいち早く対応するため、2017年7月に「被害者救済特約」を新設し、「無過失事故の特則」を改定しました。
「被害者救済特約」は、契約自動車の欠陥や不正アクセスなどによる人身あるいは物損事故で、運転者(被保険者)に損害賠償責任がない場合でも、被害者に生じた損害について運転者が負担した費用をお支払いする特約です。運転者の賠償責任の有無(保険金が払われるか、払われないか)が確定するまで時間を要するケースを想定した特約で、被害者を迅速に救済することができます。また、「無過失事故の特則」は、同様に契約自動車の欠陥や不正アクセスなどに起因し、ガードレールや家屋など、自動車以外のものと接触した場合に、継続契約の等級に影響しないと改定したものです。
今後は、自賠法(自動車損害賠償保障法)を含めた法的枠組みも検討し、それを踏まえた商品やサービスの開発なども必要になってくるでしょう。
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2018年2月現在、自動運転中の事故は、ドライバーあるいは「遠隔監視・操作者」が責任を負うものとされているようです。しかし、将来的にはシステムの欠陥やサイバー攻撃など、必ずしもそれら「運転者」の責任が問えない状況も出てくると見られています。損保ジャパン日本興亜によると現在、世界中で業界横断的に議論されながら、このような仕組みづくりが進められているそうです。
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Posted at 2018/02/14 01:30:13