2020年01月06日
価格がまず普通じゃない気が…
意外とフツーに乗れる? お値段2256万円! ダラーラ「ストラダーレ」を一般道で試してみた
■コクピットに乗り込むまでがひとつの儀式
イタリアのコンストラクター、ジャンパオロ・ダラーラが手掛けたレーシングマシンをそのまま市販車にしたようなダラーラ「ストラダーレ」が、日本のオーナーへとデリバリーをスタートしました。そこで、ダラーラ・ストラダーレが公道で本当に快適に走ることができるのか、確かめてきました。
ダラーラ・ストラダーレの公道試乗がおこなわれたのは、正規輸入元・販売元である株式会社アトランティックカーズのサービスセンターでした。ワインディングロードやサーキットでこそ真価が発揮されるダラーラ・ストラダーレですが、購入を考慮している人にとっては、自宅ガレージ近辺の一般道でも普通に走行できるのかが気になるところでしょう。
ダラーラ・ストラダーレは、ベースはバルケッタスタイルで6速マニュアルトランスミッションとなります。車両価格は2256万5000円(消費税別以下同様)です。
サービスセンターには、これからデリバリーされるダラーラ・ストラダーレが5台揃っていましたが、そのすべてがフルオプションを装備したクーペスタイルでした。
クーペスタイルにするには、まず「ウインドシールドフレーム&HVAC(221万9000円)」を装着して、スパイダー仕様にする必要があります。
次に「T-フレーム(109万6000円)」を装着して、タルガ仕様となります。そして最後に「ガルウイングドア(104万3000円)」をプラスして、クーペスタイルの完成です。ちなみに「リアウイング」は127万円です。
試乗車は6速マニュアルトランスミッションではなく、オプションの「パドルシフトギアボックス(172万5000円)」です。これだけで試乗車のオプションプライスは、735万3000円となります。
ダラーラ・ストラダーレには、普通のクルマにあるようなドアがありません。そのため乗り込むためにコツが必要となります。
まず、ボディサイドに軽く腰掛け、お尻を軸にして身体を90度回転させながら右足をコクピット内に入れます。右足はフルバケットシート座面中央にある「STEP HERE」と表示された場所に置きます。脚の長い人ならば、そのまま跨いで右足を所定の位置に置くとよいでしょう。
次に右足に重心を移して、左足を車内に収めます。この時に擦り傷がつかないように、ボディにシューズが触れないよう気をつけます。
シートに身体を収めたら、ガルウイングドアを閉じます。T-フレームの箇所にガルウイングドアを閉じるためのプレートバーがあるので、それを思い切り引いてドアを閉じます。
次にペダルの位置を調整します。普通のクルマはシートをスライドして調整しますが、ダラーラ・ストラダーレはペダルを前後することで位置調整をします。
ペダル調整のレバーは、普通のクルマのドアパネルにあたる部分にあり、このレバーを引いてペダルを任意の位置に合わせ、レバーを離します。なお、シートベルトは4点式です。
エンジン始動はセンターコンソールにある「START/STOP」ボタンを押しておこないます。
試乗車はパドルシフトギアボックスなので、右のパドルを引いて1速にギアを入れ、サイドブレーキをリリースして発進準備が完了です。
パドルシフトは、シフトアップが右、シフトダウンが左です。ニュートラルにする場合は、左右のパドルシフトを同時に引きます。リバースにギアを入れる際は、一度ニュートラルしてから、左のパドルを引きます。
ターンインジケーターは、ステアリングにあるスイッチで点灯させます。左右それぞれのスイッチを親指で押して、右と左のターンインジケーターを点灯させるのですが、ステアリングを切り戻してもターンインジケーターは点灯し続けるので注意が必要です。
右左折が完了したら、もう一度、同じスイッチを押すことでターンインジケータは消灯します。
以上でダラーラ・ストラダーレを公道で走らせるための予備知識は完了です。
■公道で感じた、ロータスとマクラーレンのいいとこ取りの乗り味
試乗したルートは、足立区の一般道、クルマの往来が激しい日中です。さっそく一般道の交通の流れでダラーラ・ストラダーレを走らせてみます。
停止状態から発進しただけで身体に伝わってくるのは、乾燥重量が855kgというダラーラ・ストラダーレの驚異的な軽さです。
ダラーラ・ストラダーレに搭載されるエンジンは、2.3リッターの直列4気筒エンジンで、フォード「フォーカスRS」に積まれているものと同じです。
最高出力は400馬力/6200rpmで、最大トルクは500Nm/3000-5000rpmです。4気筒エンジンということもあり、V型12気筒エンジンを搭載したスーパーカーと比べると物足りないパワーだと感じる人もいるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。
ダラーラにゆかりのあるランボルギーニの最新モデルとパワーウェイトレシオを比べてみると、よくわかります。
「アヴェンタドールS」の2.13kg/馬力、「ウラカンEVO」の2.22kg/馬力と比べて、ダラーラ・ストラダーレは2.05kg/馬力なのです。
そして最初の交差点を低速で左折した時に、ボディの軽さが身にしみてわかりました。いくらパワーを上げたとしても、クルマそのものが持つ質量は変えられません。わずかなコーナーでもランボルギーニに比べて半分近い重量差をすぐに感じ取ることができます。
試乗した車両は、パドルシフトギアボックスですが、デュアルクラッチ(DCT)ではなく、シングルクラッチを採用しています。これはDCTが40kgから50kgの重量であるのに対し、シングルクラッチだと8kgの重量で済むからです。
ATモードもありますが、パドルシフトでシフト操作した方がイメージ通りのドライビングができるでしょう。シフトアップのタイミングは、メータパネル上部に設けられたインジケーターが知らせてくれます。
一般道ではインジケーターが赤点灯する前にシフトアップすると、周囲のクルマのペースに合わせて楽にドライブすることができます。
軽量化のために遮音材などは使われていません。そのためホイールハウス内にタイヤが小石などを巻き上げる音がダイレクトに伝わってきます。アトランティックカーズの担当者によると、それでもボディには目立つ傷はつかないとのことでした。
ブレーキペダルは、ローターとパッドが十分に熱が加えられていなかったせいもあり、踏み始めはあまり効きがよくないのですが、じわりとペダルを踏み込んでいくとあるポイントから急激に制動力を発揮するので注意が必要です。
あくまでも、法定速度50km/h以下での話ですが、車重が軽いということと、ブレーキの性能がよいことが相まって、ブレーキペダルを強く踏み込むと4点式シートベルトが身体に食い込むほどの制動力が加わります。
シートは固定されたバケットシートなので、ダラーラ・ストラダーレのハードコアな見た目からして、サスペンションの突き上げも予想していましたが、道路の段差やマンホールなど、適度にいなしてくれます。むしろしっとりとした感触です。
試乗車はオプションの車高調整機能付きの「アジャスタブルサスペンション/ダンパー(50万8000円)」を装着しており、スポーツモードに設定していました。
一般道ではシフトチェンジが忙(せわ)しないと思っていましたが、3速ホールドのままでも十分です。信号で停止した際は、自動的にシフトダウンして1速になっているので、シフトチェンジしながら減速する必要もありません。
高速道路を走ることができない代わりに、狭い路地を試乗してみました。想像していたよりも取り回しも楽です。これならば、たいていのガレージにアプローチすることができそうです。
※ ※ ※
一般道を試乗しての印象は、ロータス「エキシージ」をさらに洗練させ、マクラーレン「570S」をもっとプリミティブにした感じです。
エキシージと570Sのいいところをミックスしたというか、その中間というべきか。ただし、これもサーキットを試乗したらガラリと印象が変わるかもしれません。
イタリアのサーキットで実際にダラーラ・ストラダーレのテスト車両に試乗してきたプロレーシングドライバーによると、「まるでフォーミュラカーみたいだ」とのことでした。
クローズドコースでの試乗が、これほどまでに楽しみな1台もないでしょう。
●ダラーラ・ストラダーレ
・車両価格(6MT・バルケッタ):2265万5000円(消費税別)
・全長:4185mm
・全幅:1875mm
・全高:1041mm
・ホイールベース:2475mm
・車両重量:855kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
・排気量:2300cc
・エンジン配置:リアミッド横置き
・駆動方式:後輪駆動
・変速機:6MT/6AT
・最高出力:400馬力/6200rpm
・最大トルク:500Nm/3000-5000rpm
・0-100km/h:3.25秒
・最高速度:280km/h
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)ダブルウィッシュボーン式
【試乗】公道を走れるレーシングカー「ダラーラ ストラダーレ」に乗った!
2020年の初夢試乗はダラーラ ストラダーレ。どこぞのクルマだ?と思うなかれ。レースファン、特にフォーミュラカーレースが好きな人にとってダラーラはリスペクトする存在である。イタリアのヴァラーノ・デ・メルガーリに本社を置く「ダラーラ・アウトモビリ」が、世界のフォーミュラレースを支えているといっても過言ではない。なぜなら、ダラーラはフォミューラのシャシーコンストラクターとして超有名なのだから。そのダラーラが送り出したロードゴーイングカーがストラダーレであり、このたび、国内でのデリバリーが開始された。これが初夢試乗の相手である。
現在のフォーミュラレースのカテゴリーでは、ほとんどがダラーラのシャシーが使用されている。北米最高峰のレースであるインディカーのシャシーや欧州を中心にしたF2、F3は、ダラーラのワンメイク状態。F1でもホンダが1998年にシャシー開発を開始していたときに製造を担当(設計はホンダ)したのは有名な話だ。レースシーンではメジャーな存在だが、公道を走ることができるスーパースポーツの開発は、このストラダーレが初だ。
ストラダーレの開発は、ダラーラ・アウトモビリの創始者であるジャンパオロ・ダラーラ氏の80歳を記念するアニバーサリーモデルとして2015年から開発が進められた。20人のエンジニアと5人のメカニックによるチームがプロジェクトを推進し、現在のレーシングテクノロジーとエアロダイナミクスを存分に生かしたスーパースポーツが誕生した。2017年11月16日、ジャンパウロ氏81回目の誕生日に、彼の故郷にほど近いヴァラーノ・デ・メルガーリの地で第1号車が手渡されたという。日本ではインポーターの老舗であるアトランティックカーズが正規輸入・販売を行う。
このような特別なモデルの試乗はとてもうれしいと同時に、クルマの成り立ちを聞くほどにじつは不安にもなった。生粋のレーシングコンストラクターがリリースするスーパースポーツの試乗に、筆者は恐れを抱いていた。レースはかじったことはあるが、フォーミュラカーはドライビングしたこともない。市販車ベースでもレーシングカーとなると別物が多いというのはよくわかっているから、市販車とはいえフルカーボンモノコックのミッドシップスポーツをうまく走らせられるか正直不安だった。
ストラダーレの“素”のモデルは、フロントウインドーが付かないバルケッタ(オープン)だというから、やはりレーシングカーを想像させる。バルケッタにフロントスクリーンを付けると“ロードスター”になり、そこにTフレームを追加することで“タルガ”に進化。さらにガルウイングドアを取り付けることでクーペのスタイルになる。ちなみにリヤウイングもオプションで、今回試乗したのは、最終形態(?)のリヤウイング付きクーペ仕様だ。
ガレージでストラダーレと対面すると意外にコンパクトであることに驚いたが、真黒なカーボンボディカラーはオーラに満ちていた。クーペスタイルのフロントスクリーンの中央には垂直にワイパーブレードが置かれている。まるでFIA世界耐久選手権(WEC)のマシンのようだ。
簡単なコックピットドリルを受けてストラダーレに乗り込むとき、試乗に対する不安がピークに達した。ガルウイングドアはあるものの、その開口部は驚くほど狭く高い位置にある。ボディサイドに腰掛け、足を先に入れて乗り込む乗車スタイルはレーシングカーそのものだ。こうした乗車方法は初体験だし、足元のシートに書かれた「STEP HERE」で素性を確信した。体を滑り込ませて薄いシートに腰を下ろすと周りの景色が違う。明らかにアイポイントが低く、周りがカーボンで囲まれているのも特別な雰囲気だ。シートはボディと一体で固定され、フロアから立ち上がるアクセルやブレーキペダルの調整は、シートサイドに隠されたレバーを握ることで手前にスライドする。もちろんシートベルトは4点式でレーシングカーと同様の調節。
センターコンソールのスターターボタンを押すと、背後でエンジンが目を覚ました。ダラーラ ストラダーレに積まれるエンジンはフォード・フォーカスRS用の2.3リットル直列4気筒ターボ。だが、もちろんノーマルのままではなく、ボッシュの電子制御システムが組み込まれ、最高出力は400馬力を発生する。車両重量(乾燥重量)は、たったの855kg(ベースモデルの数値で試乗車とは異なる)。パワーウエイトレシオは2.14だ。スポーツカーとして2019年に久々の復活を果たしたトヨタ スープラRZは同4.47だからその数値からポテンシャルの高さは容易に想像できる。
2ペダル仕様(基本は6速MT)のため、アクセルペダルを踏むとあっさりと、そしてスムーズに発進。スナッチやギクシャク感は皆無だ。背後からはパドルシフト用のオイルポンプの作動音が聞こえ、やはりレーシングカー直系のモデルであることを実感させる。荒れた一般道では引き締められたサスペンションによってバウンジングと突き上げ感があるが、カーボン製ボディの剛性がしっかりしているため不快ではなく、薄いシートでも乗り心地は意外に快適。カーブでステアリングを切るとノーズが超正確に動く。決して過敏ではなく操作したぶんだけ忠実に動くさまは、精密機械のようだ。スウェードの小径ステアリングが手ににじむ汗を吸ってくれ、徐々にストラダーレに慣れてきた。
あいにく路面が濡れていたためアクセルを踏み込めなかったが、高速道路下の乾いた路面でちょっとだけアクセルを踏むと、弾けるような加速を示した。5000回転を過ぎるとさらにエンジンの吹き上がりが鋭くなるが、一般道ではここまでが限界。ボディが軽いためあっという間にスピードが乗り、法定速度に達してしまうからだ。タイヤが温まったこともあって路面の砂をタイヤが拾い、それがタイヤハウスを叩く音はレーシングカーそのもの。こうして流して走るだけでも胸が高鳴り、高揚感もある。特別なモデルだからこそ感じられる、特別なドライブフィールだ。
一瞬、サーキットを走らせたいと思ったが、ちょっと手に負えないことも自覚している。レーシングカー直系の最新の空力ボディは、280km/hのトップスピードで820kgものダウンフォース(リヤウイング装着時)を発生させ、コーナリングの横Gは2Gを超えるというから驚く。一般道ではオーバーサーボ気味のブレンボ製ブレーキ(鋳鉄ローター)システムは、きっとサーキットで真価を発揮するのだろう。サーキットでタイムアタックするには、それなりの腕と“風”を読む力が必要になる。
〈価格〉
6速SMT:2671万9000円(税別…2429万円)
6速MT:2482万1500円(税別…2256万5000円)
■ダラーラ ストラダーレ(MR・6速SMT)主要諸元【寸法・重量】 全長:4180mm 全幅:1870mm 全高:1150mm ホイールベース:2475mm 最低地上高:95~105mm 車両重量:855kg(乾燥重量) 乗車定員:2人 【エンジン・性能】種類:直4ターボ 総排気量:2261cc 最高出力:400ps/6200rpm 最大トルク:500Nm/3000~3000rpm 【諸装置】サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン ブレーキ:前後Vディスク タイヤ:前205/45ZR17 後255/35ZR18 車両価格:2671万9000円 ※ベース車の諸元。試乗車はオプション装着のため諸元が異なり、価格は3964万5100円となる
ダラーラ ストラダーレ公式WEBサイト
http://atlantic-c.jp/dallara-stradale/
アトランティックカーズ
http://atlantic-c.jp
*製品仕様・価格(税込み)などは掲載時のもの
〈文=丸山 誠 写真=driver@web編集部〉
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自動車業界あれこれ | 日記
Posted at
2020/01/06 20:57:33
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