【週刊クルマのミライ】SUBARUの価値を高めるのに必要なのは燃費性能
2017年暦年のグローバル販売が107万3057台、日本国内における登録車販売台数も14万4143台と、いずれも過去最高を記録、絶好調といえるのがSUBARUです。国内で起きた完成検査問題もあり、けっして順風満帆とはいえない面もありますが、少なくとも2017年の数字は好調を示しています。
好調な販売を支えているのはSUBARUブランドの価値が高まっていることにあるでしょう。中でも先進安全技術「アイサイト」の持つアドバンテージがブランド力を引き上げていることは間違いありません。またSUBARU伝統の水平対向?ボクサー?エンジンによる独自性もSUBARUのブランディングには効いていると感じます。ボクサーエンジンを縦置きしていることに由来する「シンメトリカルAWD」の駆動レイアウトは、その走りの良さにつながるテクノロジーであり、メカニズム面でのアイコンです。そこに共感しているスバリスト(ファン)も多いことでしょう。
しかし、そこにこだわり過ぎるのは落とし穴になるかもしれないと感じることがありました。それは先日、SUBARUのエンジニア氏と食事をしながら話す機会があったときのことです。将来のパワートレインについて雑談的にディスカッションしているとき「エンジン担当の技術者の中には、エンジンと心中すると言っている者もいます」という発言があったのです。とくに強い意思を感じる文脈でもなく、本当にさり気ない一言といった流れで出てきた、この言葉が耳に残ります。
現段階で内燃機関の可能性を否定するものではありませんし、とくにSUBARUのボクサーエンジンについては最大熱効率の面などで伸びしろは十分にあると思います。しかし、パワートレイン系エンジニアが電動化を全否定するようなマインドであることを、まるで矜持のように表現する文化というのは少々恐ろしいと思うのです。社内文化として?ボクサーエンジン?が不可侵なのは容易に想像できます。生産ラインや車体の基本設計を考えると、いまさら水平対向以外のレイアウトを取ることは非合理的ですから。ただ、そうした状況がエンジンへのこだわりを必要以上に強くしているようであれば心配です。
思えば、SUBARUのクルマにおいてはドライバビリティには満足できても、燃費性能がライバルを圧倒しているという印象はありません。燃費とパフォーマンスが相反関係にあることを考えると、エンジンのパフォーマンスにプライオリティを置いているのかもしれません。その結果として燃費性能は二の次になっているとすると、SUBARUのセールスが過去最高を記録したといいながら、ユーザーへのアピールは限界に近づいているような気もしてきます。
そして、燃費とパフォーマンスが相反関係にあるとしても、燃費と安全性は同時に成立できるはずです。安全というのは、人を守る機能です。そして光化学スモッグやPM2.5といった環境負荷を考えると、エミッションも人を守る機能です。ですから、先進安全とクリーン性能は、お互いに高め合うブランディングの両輪となります。四輪駆動をアイデンティとしているSUBARUだからこそ、安全と同時に環境性能という、2つの要素を高めることを期待したいと思うのです。
(写真:SUBARU 文:山本晋也)
過酷な条件下ほど「笑顔になれる」SUBARU車の驚異的なパフォーマンスとは?
昨年の4月1日に富士重工業株式会社から株式会社SUBARUへと社名を変更したスバル。
「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」をキャッチフレーズに掲げましたが、具体的にどのように笑顔を作り出すのか?その答えの一つが1月に開催されたメディア向けの雪上試乗会で見つけることができました。
SUBARU車は、従来から雪に強いとされ、豪雪地帯に住むユーザーやウインタースポーツを楽しむユーザーから支持されてきました。そうした悪路での強さの秘密が水平対向エンジンを核とする「シンメトリカルAWD」です。
車体の中心から左右一直線に配置されたレイアウトと、常に4輪に駆動力をかける”常時4輪駆動”により、クルマ全体のバランスと抜群のトラクションが雪道などで威力を発揮します。
実際、海外の動画などでSUBARU車が雪道でスタックした大型トレーラーやパトカーを救出するシーンを目にしたこともある方は多いのではないでしょうか。
この卓越した走りのポテンシャルに加え、アイサイトや水平対向エンジンならではの衝突時にエンジンが車室内へ入り込みにくい構造をはじめとした高い安全性能により、安心してドライブを楽しむことができるのです。
今回の雪上試乗会では、圧接路からアイスバーンまで様々な路面状況の中、ドライバーが雪道というストレスを感じる状況でも、先に述べたシンメトリカルAWDに加えVDC(横滑り防止装置)やXVやフォレスター、アウトバックといったSUVモデルに搭載されるX-MODEと呼ばれる走破性を高めるシステムなどにより、雪上走行に不慣れなドライバーでも、クルマがアシストすることで疲労を軽減。疲れやストレスからくる事故を減らすことにつながるといえるでしょう。
雪上試乗会のコースは一般道がメインとなっていましたが、雪深い山中にある秘境の温泉などをめぐり、終着地安比高原スキー場を目指しました。今回の市場ではSUBARUの新プラットフォーム「SUBARU GLOBAL PLATFORM=SGP」を採用したインプレッサとXVを交互に試乗。雪道での走破性に加え、静粛性や走行安定性など、従来のプラットフォームからさらに磨きをかけた走りの良さがドライバーに安心感を与えてくれます。
もちろん、従来のプラットフォームを採用しているモデルも、十分な走破性を有し、実際20年以上にわたり、趣味のスキーや取材へとSUBARUを愛用している筆者はだれよりもその恩恵を感じています。
終着地である安比高原スキー場では、今年5周年を迎える「ゲレンデタクシー」が開催されており、だれでもSUBARUの持つ高いポテンシャルを気軽に楽しく体感できました。
クリッカーでも毎年取材を重ねてきたゲレンデタクシーですが、斜面をスタッドレスタイヤだけでぐいぐいと登っていくたくましい走りに同乗した参加者の皆さんの笑顔に「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」というキャッチフレーズを見つけることができました。
何よりも安全性を最優先し、走破性、運動性能、衝突安全、疲労軽減のすべてが安全につながるという考え方のもと作られるSUBARU車だからこそ、過酷な状況で笑顔になれると感じました。
誰でも気軽にSUBARUの高いポテンシャルを感じることのできる「ゲレンデタクシー」は、明日から2日間、苗場スキー場にて今シーズン最後の会場として、最大規模で開催されます。ぜひ皆さんも会場に足を運んで体感してみては?
(井元 貴幸)
【スバル・XV雪道試乗】雪道での余裕を生む200mmの地上高とXモード
インプレッサと共通のプラットフォームを採用するスバルXVの雪道試乗を十和田湖から盛岡までの雪道で行いました。
東北の雪道は除雪さえされていれば、路面はフラットでさほどクロスカントリー4WD的な性能を必要ありません。スポーツカーのようにフロントにリップスポイラーが付いているなどすればキツいですが、普通にタクシーが走っているところを見ればわかるように、タイヤさえスタッドレスにしておけば走ることは可能です。
しかし、除雪車で除雪された車道と雪が積もった歩道との段差などは意外なほどあり、路地に入る際などはそれなりに大きな段差を越えなくてはならない事態も多いものです。
そうしたときに頼りになるのがXVの200mmという地上高です。降雪地域では意外なほどに地上高は大切な数値となるのです。では都会では地上高は不要でしょうか? もちろん普段は高い地上高がなくても問題はありませんが、今年の大雪の際の都内の様子を見てみるとひどいものでした。
東京の住宅街ではきちんと雪かきが行われてない場所も多く、深いわだちとなっているところも多数存在していました。また都内は雪かきをしても雪を捨てる場所がなく、道路脇にたまった雪を溶かそうと道路中央に戻したりすることもよく行われます。こうした行為によってクルマのアンダーカバーを破損することも数多く起きています。やはり雪が降った時点で、地上高が高いことは有利なことになるのです。
また、XVにはXモードという走行モードが用意されています。これは空転しそうなタイヤにブレーキを掛けて空転を防止しトラクションを確保する機構で、凍り付いた上り坂などで威力を発揮します。
さらに下り坂では速度をコントロールするヒルディセントコントロールが働き、ブレーキ操作なしで速度を一定に調整、ステアリング操作に集中できるようになっています。雪の坂道はもちろん、林道などでも威力を発揮する装置です。Xモードもやはりいざというときには非常に頼りになる装置で、走りに余裕を生む大きな要素となります。
(文:諸星 陽一/写真:前田 惠介)
おそらく震災後初、スバルが東北地方でメディア試乗会を開催
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方に甚大な被害を及ぼしました。今も福島第一原発は収拾がつかない状況が続いているのは周知のとおりです。
東北の復興についてはさまざまなアプローチが行われていますが、なによりも大切なのは東北地方が震災前と変わらない産業や生活を取り戻せるようにすることではないでしょうか?
私は以前より震災後は積極的に東北でメディア向け試乗会などを開催し、東北が変わらず安全で美しい場所であることをアピールできればいいと思っていました。しかし、なかなか東北で試乗会が開催されることはありませんでした。
そうした悶々とした日々が続くなかついに今年1月、スバルは青森から盛岡(もしくはその逆)を試乗コースとした雪道試乗会を開催しました。試乗コース内には豪雪で知られる酸ヶ湯温泉や、日本最古の芝居小屋である康楽館、廃駅を利用した鉄道関連展示施設の小坂鉄道レールパークなど、さまざまな観光スポットがちりばめられ、東北の現状を伝えられるようになっていました。
復興支援を目的とした企画も大切ですが、こうした普通の試乗会を東北地方で積極的開催していくことも大切ではないかと私は思います。そして、スバルが東北で試乗会を開催したことに心から拍手を送りたいと思っています。
(文:諸星 陽一/写真:前田 惠介、諸星 陽一)
【スバル・XV雪道試乗】SUVのスタイリングは伊達じゃない。雪道で発揮されるその実力
現行XVは、初代となる2010年に登場したインプレッサXVから数えて3代目に当たるモデルで、現行インプレッサと同じくスバル・グローバル・プラットフォームと呼ばれる最新のプラットフォームを用いています。
スバル車はAWDの設定が多いモデルですが、XVは全車AWDとなっています。北米ではSUVでも2WDが設定されることが多いのですが、AWDにこだわるスバルらしくSUVであるXVはAWDのみの設定となっています。
XVに採用されているAWDのシステムは、アクティブトルクスプリットAWDと呼ばれるシステムで、前後60対40のトルク配分を基本に、走行状態に合わせたトルク配分が行われます。
今回の試乗ではブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX2」を履いた状態で、十和田湖から盛岡市内まで走りました。基本的には圧雪路でところどころアイスバーンも存在していました。高速道路はよく除雪され、サマータイヤでも走れるレベルとなっていました。刻々と変わる路面状況においても、ブリザックVRX2を履いたXVは無敵の存在でした。
クルマの挙動は非常に素直なものです。デフォルトでフロントのトルク配分を多くしていますが、滑りやすい雪道ではちょうどいいくらいのトルク配分となり、発進から安定した挙動となります。
普通に操作している限り、クルマ側が素直に反応してくれるので、普通に(とはいえ雪だということを意識している必要はあります)運転すれば、苦労することなく走ることができます。
(文:諸星 陽一/写真:前田 惠介)
【スバル・インプレッサ雪道試乗】氷上の「羊の皮を被った狼」。その実力が冬の東北で花開く
スバルのベーシックセダンであるインプレッサは、スポーツモデルのWRX系が独立したことも手伝って、どうしても地味な存在になりがちです。
そんな地味なインプレッサですが、雪道を走らせるとスバル車のウリであるAWDの助けもあり、かなりの高性能を示してくれます。
試乗を行ったのは青森駅から十和田湖までの約100kmです。もちろん路面はほぼ圧雪で、一部には凍結したアイスバーンも存在していました。スバルのAWDといえども、冬の東北をサマータイヤで走ることは無謀以外のなにものでもありません。タイヤはブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX2」が装着されていました。
インプレッサは発進から安定したグリップを示してくれます。青森市内の日陰のためにツルツルとなった路面でちょっとアクセルをラフに踏んでみたところ、一瞬空転しますがその後すぐにトラクションコントロールが介入して適切な駆動力が伝わってクルマを前に進めます。
最近のクルマは前輪駆動でも後輪駆動でも、トラクションコントロールが当たり前に装着されていますが、介入後のトラクションの復活はやはりAWDが素晴らしいフィーリングを示します。
(文:諸星陽一/写真:小林和久)
【スバル・インプレッサ雪道試乗】学級委員みたいな優等生なのに、運動会でも活躍しちゃうタイプ!?
セダンや5ドアハッチバック、ワゴンなどはどうしても地味な存在になりがちです。とくに国産車の場合は、まるでマンガに出てくる学級委員みたいにまじめな雰囲気を持っています。
スバルのインプレッサもそんな学級委員的なクルマの代表格の1台だと私は思っています。エクスエリアの地味さだけでなく、その秘める実力が高いというところもインプレッサのキャラクターではないでしょうか?
雪道ドライブをしていると、しっかり発進できて、しっかり停止できて、しっかり曲がればそれはもう合格点で、これがそつなくできるとそれはもう学級委員的なまじめなイメージ。宿題も忘れないし、発言にミスがない感じです。VDCやアクティブ・トルク・ベクタリングが上手に効いて、常に安定した走りを披露する。
しかし、インプレッサはまじめなだけの学級委員じゃあないんです。
VDCがオンの状態でもコーナーの入り口でブレーキをしっかりと踏んで荷重を前に移しておいてからステアリングを切っていけば、リヤがアウトに滑るような走りができます。
このときにアクセルを踏み込んでやれば逆に安定感が増すので、運転を楽しみながら安全な走りをすることもできるという感じです。また、コーナーが長ければコーナリング中にアクセルを抜くことでクルマの向きを変えることができます。
VDCをオフにすればさらにアクティブな走りができるでしょうが、今回はそうしたことは行わずに試乗を終えました。
インプレッサは学級委員みたいにまじめで実直な走りができるだけでなく、WRX譲りのアクティブな走りもできちゃう。言ってみれば運動会でも活躍しちゃう学級委員みたいなクルマだなと感じました。
(文:諸星 陽一/写真:前田 惠介・SUBARU)
【試乗】SUBARU AWDで雪国の「普通の道」を走る。インプレッサSPORT 2.0-S EyeSight編
内輪の話みたいで恐縮ですが、冬の時期になると雪上あるいは氷上での試乗会が多数開催されます。
けれど、その多くはテストコースやサーキット、あるいは凍った湖の上など、かなり限定された場所、環境で「当社自慢の製品を試してください」と機会を作ってくれます。いわば、良くて当然のシーンをお膳立てしてくれるわけです。
いや、そうじゃないんだ。突然の路面や天候の変化、雪国における日常での使いかたにこそSUBARU AWDの良さは活きるというのをわかってほしい、という思いから、SUBARUでは、青森から安比高原までの公道を使用した試乗会を催したのです。
というのも、世界中で販売されるSUBARU車の中のAWDの割合はどれくらいと思いますか? なんと、98%がAWDなんですって。勝手に7割くらいか、せいぜい8割だろうな、などと思ってましたが、98%と言えば、ほぼ全部と言ってもいい数字です。それほどまでにAWDに命を吹き込んでいるメーカーとしての思い入れがこのイベントから伝わります。
これまた業界の話みたいになりますが、「雪の上でもほら、ちゃんと走るでしょ」という結果をいろんな媒体に掲載されることを雪国対応製品を販売している会社の広報部は期待しているわけですから、雪が確実にある場所でそのイベントを開催しなければなりません。しかも、雪国って生活のためにちゃんと除雪が整っていたり、毎日雪が降ってるわけでもなく、そうするとただのアスファルトと変わらない道を走ったインプレや、場合によっては白い雪がまったくない写真ばかりの記事が掲載される可能性だってあります。かといって、ここぞとばかりにお天道様が本気を出して雪を降らせて、周辺道路は「全線通行止め」ということになると、広報本部長から「この企画発案した人は始末書出して」みたいなことを言われかねない、広報部員にとっても雪上公道試乗は、背筋も凍る企画と言えるのかもしれません。
この企画が成功するのかしないのかは、これを許可した広報部長が持ってる人か、持ってない人かが判明するという我々にとっても車両の性能以上に数日前から興味津々の企画だったのです。
と、前置きが長くなりましたが、試乗前日に青森入りした我々は、いま予定コースを走ってきたというかたからコース状況を聞いたところによると、雪はほとんどなく、「普通の道路がほとんどだった」とのこと。様々なバリエーションの記事を期待する記事編集サイドも、明日の試乗会の無事開催が危ぶまれます。
翌日、青森駅付近から出発します。最初に乗るのはインプレッサSPORT 2.0-S EyeSightです。カラーはクォーツブルー・パール。
インプレッサは言うまでもなくSUBARU車の中核をなす車種であり、その中でもハッチバックのSPORTが売れ筋です。セダンのG4との販売比率は、現モデルになっておよそ8割がSPORTとなっているそうです。また、排気量、グレード、駆動方式で分けた場合、インプレッサシリーズの中でこのインプレッサSPORT 2.0-S EyeSight AWDがもっとも売れていることになります。
そんなSUBARUの中心とも言える車種は雪国にどのように対応しているんでしょう。
例えば空調です。
普段エアコンの「オート」をオンにしちゃえばあとは温度設定をたまに動かすぐらいで快適になったいまのクルマですが、SUBARUの車両は空調も冬のことを考えて作られているそうです。
暖かさが劣っていることがまずないことが前提ですが、その温度分布が気になるところです。旧インプレッサではドア側の足元の暖まりが悪かったそうで、それを両足同時に暖まるよう足元向けダクトを大型化し均一な足元温度を手に入れているそうです。
私事ながら、以前は空調屋をやっていたこともあるのでその辺ウルサイと思うんですけど、風が直せる顔や体の一部に当たるのが非常に不快なんです。なので、なるべく風を感じないよう足元とウインドウから空調の風を出すようにしていますが、まさにこういう発想はありがたい。
そもそも空調負荷の高いところ(断熱のしにくいガラスなど)に吹くのは常識なんですよね。顔に直接風を当てるなんて、扇風機の名残を感じる前世代の空調です。常々インパネにダクトはいらないと思っています。もっとピラーとかドアとかから出してほしいと考えたりします。
今回は、試乗前に暖気してくれていたおかげでその暖まり方のインプレッションはわからなかったですが、温度や天候も変化するドライブ中はなにも不快を感じることなかったので、優れた空調システムと言えるでしょう。
そんな快適な車内から、最初に青森市内から酸ヶ湯温泉を目指します。以前ドライブの本を作っていたころから行きたかった秘湯、名湯です。
まずは、青森市内の象徴と言える、青函連絡船の保存線「八甲田丸」をバックにスタート地点の写真を撮りに行きます。カメラマンから、「その雪の上に置いて!」と無情なリクエストが……。そこには20cm以上の雪が積もっています。スタートでいきなりスタックしたら恥ずかしいなと思いながら恐る恐る雪に乗り上げます。インプレッサはなんの問題もなく雪上に乗っかりました。脱出もまったく問題なし。これからの道中へ、頼もしさが加わりました。
青森市内は除雪もされ、ほぼ普通のアスファルト路面です。表面だけが濡れている程度のウェットでした。もちろん、ここでも安心したドライブができます。
知らない街中を走る時、とくに朝の通勤時間帯でみんななんとなく急いでいるようなシーンでは、周囲の車両や人の動きを常に把握しておきたいもの。こういう時も、死角の少なさが計算されている恩恵を受けながら気を遣うことなくインプレッサを進めることができます。
青森市街を抜け、山道へと入っていきます。こういうところでは2リッターボクサーエンジンのありがたみを感じます。おそらく1.6リッターでは「もうちょっと踏まないと」というシーンがありそうですが、この2リッターならばそれを余裕として速度を落とすことなく登っていくことが可能です。高速道路でもそうなんですが、しかし、なぜこの余裕がドライブを楽にさせてくれるのか。1.6リッターじゃ登れないわけでもないし、その分アクセルを踏んで回転とトルクを引き出してやればいいことだけなのに、心理学的にどういうことなのか、誰か説明してほしいです。
さらに秘湯酸ヶ湯へ近付くにつれ、道路はだんだんと黒から白へと変わっていきます。その色のコントラストの違いとは裏腹に、インプレッサのほうはなんの変化も感じさせない走りを続けてくれます。雪国に慣れていない私にとって、最初に白い部分を踏む時って緊張して入って、あえて強めのアクセルやブレーキ操作で「どれくらい滑るか?」試してみるんですが、ほとんどそれも意味ないくらいです。ただし、そこには履いているブリヂストン・ブリザックVRX2の雪国性能の恩恵も大きいことでしょう。
だんだんと雪も強くなり、圧雪路面に新雪が乗っかっている路面でも相変わらず何事もなく、無事酸ヶ湯温泉に到着です。
温泉は相当に強い酸性で、少し味見すると強い酸味を感じます。総ヒバ造り「千人風呂」は歴史の重さを感じさせてくれる混浴です。混浴とはいえ、湯船の中央にここから「女性専用」というロープの仕切りがあります。女性専用の時間帯もあるようです。
と、温泉の取材はそこそこに、インプレッサSPORTは次の目的地、十和田湖を目指します。
路面は相変わらずの雪。意外に走行車両も多く、バスなども走っています。地元と思える車両は特に雪を意識することないペースで走っているようです。しかし、私も初めての雪道でも特に意識することなく流れに乗って走ることができたのは安心感をもたらすインプレッサSPORTのおかげだったと振り返ることができます。
十和田湖に到着し、お昼にきりたんぽをいただきました。きりたんぽの語源は、練習などのため槍の先に付けるたんぽの形に似ているて、これを切って食べるから、という説と、桐の棒に刺しているからという説の2種類があると教わりました。味噌を付けて炭火で焼いてきりたんぽは、初めて食べるのになぜか懐かしい素朴な味が口中に広がります。
お昼の後は、XVに乗り換えます。グレードは2.0-S EyeSightで、ボディカラーはピュアレッド。雪の中では真っ赤なボディがインスタ映えしそうです。(つづく)
(撮影:前田 惠介/文:clicccar編集長 小林 和久)
【試乗】SUBARU AWDで雪国の「普通の道」を走る。XV 2.0-S EyeSight編
お昼の後は、XVに乗り換えます。グレードは2.0-S EyeSightで、ボディカラーはピュアレッド。雪の中では真っ赤なボディがインスタ映えしそうです。
今度は十和田湖畔で撮ろう、というカメラマンのリクエストが再び。ちょうどいい駐車場のような場所を見つけましたが、そこは積雪25cmくらいでしょうか。さらに何度か溶けて凍ったようなタイヤの後が凸凹に付いています。
最低地上高はインプレッサSPORTの130mmに対しXVは200mmと7cmの余裕のおかげで難なく侵入。ニュージーランドのような景色をバックに写真を撮ったらこれまた難なく脱出。
SUVたるXVの魅力を乗り始めてすぐに味わうことができました。
十和田湖から小坂ICまではいろんな路面を体験しました。見た目に光っていていかにも滑りそうな路面、完全なアスファルト、雪が溶けかけたような部分、凍った雪が固まった部分など。なかでも、アスファルトが見えているところと雪が乗っているところなど、対向車とすれ違うためには条件のよくないところも走らなければなりません。そこでも、路面状況が変わったことを感じさせることなく加速も減速も不安感一つなく走らせることができます。
途中、小坂町に立ち寄ります。
小坂町は鉱山の町として一時は大変な賑わいを見せたそうで、当然鉱山用のレールが敷かれ、列車が走ったと言います。
その鉄道車両を当時の富士重工業が手がけていたのだそうです。残念ながら小坂鉄道は2009年に敗戦となったのですが、その駅や施設をレールパークとして保存、公開しています。しかも、動態保存してあり、現在も走らせているそうです。
富士重工業のネームプレートを付けたいくつもの車両を見て、明治の繁栄の香りを楽しんではいかがでしょうか。
小坂ICからは高速道路で安代ICを目指すおよそ30分ほどの道のり。ここからはEyeSightを使って、さらにリラックスした運転となります。一度ACC(同じ速度を保ちながら、前走車に追い付くと自動的に減速し車間距離を保ってくれる装置)を使ってしまうと、少なくとも高速道路ではよほどのことがない限り右足に楽をさせたくなります。しかし、実際に「楽をする」のは右足の筋肉ではなく脳だと思います。前走車に追い付いて車間を保つ、緩い上り坂で速度を一定にする、といった何気ない作業に相当我々は気を遣っていたんだな、と気付きます。疲労の少なさは安全にも長い足にもつながります。「そんなの機械に頼るくらいなら電車に乗ったほうがいい!」と言ってる人にも騙されたと思って使って欲しい装置です。
そんなACCですが、発展途上の技術ゆえ、メーカー間による思想、コストのかけ方、どこまで面倒を見てくれるかなどが違って、それぞれに差があるのが現状です。前走車に追いついた時の減速感は、他社のACCに比べEyeSightは相当に運転が上手です。また、そこから前走車がランプを降りいなくなったり、自車が追い越し車線へ出て行った時の加速感もとても自然です。総合的にドライバーの感性にあっているのは、少なくとも国産では一番、世界的に見てもかなりの上位ではないでしょうか。
そうして、何事もなく安代ICでXVは高速を降り、安比高原スキー場へ向かいます。
ホテルのエントランス付近にクルマを止め、ドアを開け降りようとするとスタッフのかたに「滑りますのでご注意ください」と言われ、気付きました。そこは、多くの車両が昼も夜もゴー・ストップを繰り返す場所。路面はツルツルのミラーバーンになっています。クルマが何事もなく動いて止まってくれたので、まさかそんなに滑る路面とは思わなかったのです。
乗り終えた感想は、本当に疲れなかった、です。一般道、それも初めての雪道を主に一日中走って、「やれやれ」という感覚はまったくありませんでした。途中で温泉に入らなくても、この感想は変わらなかったでしょう。
思うに、SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)による安全への安心感と乗り心地の良さ、シンメトリカルAWDによる路面変化をすべて吸収する走行安定性、サイズに見合った余裕のパワーユニット。それに、インプレッサ/XVの身の丈にあうようなフレンドリーなキャラクターもある気がします。デザインは人それぞれ好き嫌いですが、ライバル他社がかっこつけすぎてジャージじゃ乗れないな、と気負いしそうなのに、SUBARUならクルマに負けてない、受け入れてくれそうな親しみやすが「疲れなさ」に一役買っている、と思うのは考えすぎでしょうか?
どんな天候が訪れるかわからない、雪国での性能は十分以上に理解できました。次は、砂浜があったり、スコールや台風などに遭遇するかもしれない南の島などで、SUBARU車の実力が発揮されるシーンを試したいものです。SUBARU広報の皆さんにはご検討いただきたい所存です。
(撮影:前田 惠介/文:clicccar編集長 小林 和久)
スバルグローバルプラットフォームそのものはハイブリッド化を視野に入れたプラットフォームの筈なので燃費性能に関してはそれに期待してもらうって事で
Posted at 2018/02/19 21:34:31 | |
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富士重工 | 日記