ホンダという会社、バイクは基本的に4ストロークエンジンです。
創業当初こそ、A型やカブ(スーパーカブではなくて)等、原動機付き自転車は2ストロークでした。
そこは、まだ会社の生産設備が揃っていない頃。
それ故、簡単な構造の方を選んでいました。
しかし、1951年のドリームE型の成功以降は、ほぼ4ストになります。
そうこうして、だいぶ時が流れ・・・。
1980年代の日本に巻き起こったバイクブーム!
1980年、ヤマハから渾身の思いで創られたモンスターが誕生します。
RZ250
パワーの出しやすい2ストですが、この頃はちょっと人気薄でした。
威勢よく出る白い排ガスとオイル、高めの排気音・・・
パワーは出るのですが、市場からはちょっと敬遠気味で。
そこで立ち上がったのが、2ストを得意とするヤマハ。
当時の市販レーサーTZをイメージさせるモデルを、公道に放ったのです。
そのネーミングからも、ヤマハの気概が伺えます。
「R」は先代RDから続くレーサーの意味。
そして「Z」は水冷を意味ものですが、きっと本当はこちらのことなんでしょう。
アルファベット最後の文字が意味するもの、それは・・・
究極の2ストローク
パワーはクラストップの35ps。
速くない訳がありません。
RZはデビュー直後から大反響!
一躍、大ヒットとなりました。
(私も買いました、中古ですが)
その頃、ホンダのバイクはこのCB250RS-Z。
当時はそれほど非力ではなかった26ps。
う〜ん、これではちょっと役不足ですねぇ。
RZになんとか一矢報いたいところです。
そこで、ホンダの選んだ道は・・・
さらなるパワーアップ、絶対4ストで!
同じ土俵の2ストで勝負する、という選択肢はない様です。
ただ、2ストと4ストには、決定的な構造の違いがあります。
それは、爆発の回数。
2ストは、クランク1回転で1回爆発します。
対して、4ストは2回転で1回爆発。
つまり、同じ回転数であれば、4ストは2ストの半分の回数しか爆発していないのです。
排気量が同じならば、1回の爆発で得られるパワーも、ほぼ同じ。
どっちが速いの?
聞くまでもありません。
そこでホンダが選んだのは・・・
エンジン回転数を2倍にすればいいじゃないか!
いや、まぁ、そういうことなんです、理論的には。
でも、そんなもの普通は出来ません。
でも、そこはホンダです。
1960年代のレースシーンで、やったことあるんです。
例えば、これ。
RC149
125cc、5気筒で、34ps/20,500rpmです。
高回転化させるには、ピストンを軽くすることが必要です。
多気筒化すれば、ピストンが小さくなるので、軽量化出来ます。
但しエンジンの内部抵抗も増えてしまうので、その損失も無視出来ません。
それでも、ブン回せばいいんだろ? という声が聞こえそうな2万回転オーバーのエンジンでした。
その代償で低速トルクは皆無で、それを9速ミッションで補っていました。
あと、こんなのもあります。
RC166
250cc、6気筒で、60ps/18,000rpmです。
とうとう出ました、6気筒。
私、以前RC174(300cc、6気筒)の走行を見たことがあります。
等間隔爆発の並列エンジン。
当時は集合マフラーの概念がなく、6本のメガホンマフラー(消音してないから、ただのエキパイ?)。
不思議な共鳴音を奏でていて、4ローターに匹敵するほどの感動でした。
もう一つ、1980年代からは、これ。
NR500
時代的にも、まさにこれがGP参戦していた時です。
きっとホンダ以外ではやらないであろう、伝説のエンジン搭載車です。
オーバルピストン、V4 32バルブ
当初は、ホンダ伝家の宝刀、V型8気筒を想定していました。
ですが、1960年代に起こったホンダマルチシリンダーの脅威から、レギュレーションで上限4気筒とされてしまいました。
ならば、V8のうち2気筒づつをくっつけてしまえ、と誕生したのが、このピストンです。
打倒RZは、このイメージで行こう!と相成りました。
そして完成したのが、このエンジン。
空冷から水冷へ。
単気筒が、V型2気筒へ。
OHCがDOHCに。
今までに過程から比べると、進化と言うよりは革新。
26ps/8,500rpmから、一気に35ps/11,000rpmへ。
RZの35ps/8,000rpmに、馬力で並びました。
(回転数は2倍ではありませんが)
そのピストンスピードは、当時のホンダF1のV6ターボと同等だったそうです。
しかし「RZキラー」と呼ばれていたVTですが、4スト故にフラットトルクで乗りやすいと評価されまして。
その為、ユーザーの裾野が広がり、RZを凌ぐ大ヒットとなりました。
ここまで力説していながら、私、VT250Fに乗ったことがありません。
文中にもある様に、RZを買ってしまいました。
パワーバンドに入ってから炸裂する加速に、やられてしまいまして。
でも高回転エンジンも体感すべきであろうと、CBR250Fourは買いましたよ。
この頃はまだ「独創のホンダ」が色濃く残ってましたねぇ。
10年くらい前だったでしょうか。
ホンダがハイブリッドに、大きく蛇を変えようとしていた頃。
ホンダの設計さんとお話しする中で、この言葉を聞いて驚きました。
内燃機は、まだ死んでいない。
トヨタの影響もあり、車の行く末はハイブリッドからのEV。
既に100年の歴史を超える内燃機での燃費向上は、乾いた雑巾を絞る様だと。
あれから、10年・・・。
ガソリン直噴化、アトキンソンサイクル、ディーゼルエンジンと。
本当に内燃機だけでも燃費が大きく向上しました。
そして最近では、ダウンサイジングターボ。
ハイブリッド一辺倒からの脱却を図られている様に見えます。
私は、そんなホンダの動向に期待しています。
だって、ホンダは世界一のエンジン屋なんだろ?