2011年09月29日
先日、フランクフルトモーターショーが開幕しました。内容的には今年度の他のモーターショーに比べてそれほど華やかでもないのですが、個人的にはこのフランクフルトが一番興味深かったりします。それというのも、最も身近なメーカーであるVW から面白そうなモデルが二つも発表されたからです。以下はそれらについてと、もう一車種について、感じたことを書き連ねてみたいと思います。
■ビートルRコンセプト
端的に言えば、次期愛車候補の大本命です。シロッコに裏切られた私にとって、新型ビートルのRバージョンの生産は一縷の希望であったのですが、それが今回のモーターショーでほぼ確約されたことになります。正直なところ、私はビートルという車種にそれほど関心を持っていたわけではありません。私が好きなのは「2ドアのクーペ」であり、そういった意味ではアウディ・TTでもホンダ・CR-Zでもトヨタ・FT-86でも良いのです。しかし、コストパフォーマンスの点でVW 車に勝るのはなかなか難しく、そんな折に発表された新型ビートルのデザインがやけにクラシカルかつシンプルで格好良かったことから、俄かに興味を持ち始めたというわけです。FT-86(もしくはスバル・BRZ)はまだ詳細なスペックが明らかにされていないですし、BMW の新型1シリーズにもかなり惹かれるのですが、とりあえず今後の乗り換え計画はこのモデルを軸として進めていくことになるでしょう。
エクステリアやインテリアのデザインについては、このままでもOKかと思います。さすがに20インチのホイールは頂けないですが、いざ販売となれば18か19インチに下げてくるはずです。全幅がノーマルモデルに比べて30mm 拡大されている点は少々気になりますね。トレッドを拡大した結果であるのなら良いのですが、リム幅の大きなホイールを履かせるためにフェンダーを広げているのなら納得できません。4モーション搭載ならば8J (なんなら7.5J )でも充分だと思います。タイヤの幅でグリップを稼ぐという方法はやめて、ハルデックスとXDSの能力をフル活用した前後左右のトルク配分の妙技でコーナリングスピードを高めて欲しいところです。エンジンはまず間違いなくゴルフRやシロッコRと同じものが積まれるでしょう。客層もゴルフRのそれより若くスポーツ志向が強いことが予想されるので、ROMチューンで簡単に300psオーバー → サーキット走行、というのがトレンドになりそうです。実際のところ、具体的な情報は何も出ていないのですが、このモデルに関しては大いに期待したいですね。
■ポロR WRC
以前から登場が噂されていたポロRが、遂にその姿を見せました。エンジンは1.6L直4ターボで300ps / 35.7kgmを発揮し、駆動方式はフルタイム4WD、車重はWRCの規定により1200kgとなるそうです。このまま市販されることはまず無いでしょうが、エンジンを200~250psくらいにデチューンしたモデルが必ず登場するはずです。車格と車重を考えれば、こと峠においてはインプやランエボと互角に戦えるでしょう。逆に、サーキットや高速道路などのハイスピードなステージおいては、スタビリティやサス・ブレーキのキャパの面で不利を被ることになると思います。もちろん法定速度内で走行する限りは何の問題も無いのですが、ここまでスペックが良いとどうしても「そっち方面」での性能に期待してしまいます。
シトロエンやフォードがC4やフォーカスRSのWRCモデルをレプリカとして限定販売しただけなのに対し、VW はポロRを量産前提で開発しています。企業としての体力が違うとはいえ、このような姿勢はもっと評価されても良いのではないでしょうか。現在、スズキからはスイフトスポーツの新型が発表され、MINI からは小さくも凛々しいクーペが登場し、アウディもA1のクワトロモデルをテストしている状況です。今後は世界規模でホットハッチというジャンルが再び隆盛を迎えるのかもしれませんね。
ポロRの3ドアが国内に導入されるのであれば、これは私にとってビートルRの強力な対抗馬となります。今はあれこれ夢想して楽しんでいるだけですが、来年の今頃には切実な悩みになっているかもしれないし、むしろそうなっていてほしいなと思います。
■up !
フランクフルトショーではVWに関してもう一つ大きなトピックがありました。それは数年前から開発が公にされていた次世代型コンパクトカー「up !」の登場です。むしろ今回のショーにおいては、このモデルをお披露目することがVWの最大の目的であったと言えるでしょう。かつてショーカーの「IROC」が「SCIROCCO」の原型として発表されたことから、「up !」も販売時には「LUPO」と名乗るのではないかと噂されていましたが、実際はそのままになるようです。up !という名前の格好悪さと、旧ルポの知名度の高さを比較すれば、VW の首脳部には今からでも遅くないから是非とも考え直してほしいところですね。
このモデルの詳細については各サイトで確認して頂けるかと思います。率直に言うと、私は何も魅力を感じませんでした。強いて挙げるなら、バギーup !が面白そうかなと思ったくらいです。何故魅力を感じないかというと、それはパッケージングの面で革新的と呼べる部分が全く見当たらないからでした。もっと簡単に表現すれば、「これなら軽でいいじゃん」ということになります。
コンパクトカーが商品として成立するためには、まず何よりも安価であることが優先されます。up !は一般的な軽自動車よりもお手頃なのでしょうか?次にコンパクトカーにとって大事なのは、日常生活における利便性です。up !は一般的な軽自動車よりも広くて乗り降りがし易いのでしょうか?また、現在ではコンパクトカーといえども多少の趣味性(多様性)は必要です。複数のメーカーから把握しきれないほどの種類が販売されている日本の軽自動車群の中に置いてもなお、このup !にはキラリと光る何かがあるのでしょうか?プレス向けのリリースでは盛んに技術面での先進性をアピールしているようですが、それらは全てup !以外のVW 車にも搭載すべき技術であり、このモデルの個性と呼べる要素とはなりえません。そのおかげで価格がポロに近づくのであれば、本末転倒ですからね。どちらかといえば、それらの新技術は満を持して登場するであろうゴルフVII にまとめて搭載するほうが、世間に対して強烈にアピールできるのではないかと思われます。
結論を述べるなら、このup !というモデルは軽自動車の文化を持たない欧州のメーカーが初めて造った軽自動車であり、欧州市場での新たなジャンルの始祖とはなりえても、初代ビートルや初代ゴルフのような自動車業界全体での革新を起こしうる存在とはなりえないと言えます。初代ビートルや初代ゴルフが絶賛されたのは、当時の基準としてそれ一台で充分だと思わせるくらいにパッケージングが優れていたからでした。史上初の「安価に販売される電気自動車」、あるいは史上初の「カーシェアリング用シティコミューター」としてup !がデビューするのであれば、まだ一応の評価もできる(私はそれを期待していた)のですが、残念ながら現状では単なる小型車という以外に何もエポックメイキングな部分は見当たりません。2013年に電気モーターのモデルを追加するというなら、それまで発売を延期しても良かったのではないか…。それが、私の偽らざる感想です。
今回のフランクフルトショーでは、VW 以外のメーカーに関して、個人的にはさしたる感慨を抱くことがありませんでした。いや、より正確には、またしてもトヨタとスバルが確定的な情報を何も出さなかったせいで他に書くことがなかった、というべきでしょうか。スポーツカー好きの日本人にとって今年最大のイベントは、やはり東京モーターショーまで持ち越されることになりそうです。果たして、その時展開されるのは拍手喝采の絢爛絵巻か、はたまた阿鼻叫喚の地獄絵図か。あともう暫く期待をして(あるいは手薬煉を引いて)待っていたいと思います。
Posted at 2011/09/29 01:39:06 | |
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