
・・・時は2015年末に遡る。
謎の声「・・・・・ーサン!・・・オトーサン!」
Jaz「・・・声を落とせ、俺は任務中だ」
謎の声「オトーサン涎が垂れてるよ」
Jaz「・・・3号か。敵を欺くために寝た振りをしていただけだ」
謎の少年3号「ボク1号がいい」
Jaz「生まれながらに背負ってきた宿命によりお前は3号だ。こればかりは年功序列だから仕方がない。で、一体どうした?」
謎の少年3号「オカーサンがお年玉の用意をしてるよ」
Jaz「ああ・・・良い子にはサンタさんが来た後、またすぐにビッグマネーを手にするチャンスが訪れるもんだ。大人には辛い時期だがな」
謎の少年3号「・・・良く分からないけど、オトーサンにもお年玉を上げるんだって」
Jaz「何ッ?!・・・一体どういうことだ?!」
謎の少年3号「オトーサン今年お小遣いを減らされたでしょう」
Jaz「減らされた訳じゃない。セレナを買った時にローンが厳しいと言うから、酔った勢いで『じゃあ俺の小遣いを減らして良いぞ』と口が滑っただけだ」
謎の少年3号「ウン、何か買ってもらいたいときはオトーサンがお酒飲んでる時に言いなさいってオカーサン言ってた」
Jaz「クソッ・・・あの女、言わせておけば・・・」
謎の少年3号「汚い言葉を使っちゃダメだよ」
Jaz「あ、済みません・・・イヤそんな話をしている場合じゃない!小遣いを減らしたから少し家計に余裕が出来たということか?」
謎の少年3号「オトーサン最近お仕事が大変みたいだし、全然休まないで頑張ってるからご褒美だって言ってた」
Jaz「お前も分かっただろう。人間頑張れば良いことが必ずあるもんだ・・・で、いくらだ?」
謎の少年3号「え?」
Jaz「とぼけるんじゃない。オトーサンのお年玉はいくらなんだ?!」
謎の少年3号「・・・知らない」
Jaz「流石にトップシークレットか・・・よし3号、お前に任務を与える」
謎の少年3号「え?何?」
Jaz「オカーサンの見ていない時に、その袋の中身を数えるんだ」
謎の少年3号「ダメだよ、人のものを勝手に見ちゃいけないって先生が言ってた」
Jaz「この前家庭訪問と称して潜入してきたアイツか・・・先手を打ってくるとは侮れない奴だ・・・仕方がない、2号を呼んでくれ」
謎の少年3号「お兄ちゃんならオカーサンに怒られながら宿題やってる」
Jaz「アイツまた宿題サボったのか・・・誰に似たんだ全く・・・こうなったら最終兵器を出すしかないな、1号を連れて来てくれ」
謎の少年3号「大きいお兄ちゃんならさっき塾に行ったよ」
Jaz「真面目な奴だ・・・きっと俺に似たんだな」
謎の少年3号「・・・ボクも友達と遊んでくる」
Jaz「ま、待て!3号!・・・・3号!!!」
再び静かになる室内。
微かに聴こえる謎の女と2号の声。
Jaz「・・・あの女のことだ、この騒ぎに乗じて袋を隠したに違いない」
そして膨らむ妄想。
仮に1万円だとしよう。
LEDフォグなら何とかなる。
余った分は・・・そろそろガタのきた電工ペンチ、或いは不足してきたギボシセットという手もある。
イヤ待てよ?
今年減らされた分×12ヶ月と考えると1万円では安すぎる。
・・・!!!
今思い出したが、File.01で確か俺はバックドアオートクロージャーの話をして・・・パーツ代が3万円ということも伝えているぞ?!
間違いない!今回の成功報酬は3万円だ!!
・・・そして迎えた2016年元旦。
謎の女「ハイみんなお年玉よ」
Jaz & 謎の少年一同「ワーイありがとう!」
謎の女「・・・子供たちにお年玉を渡す場面で何でアンタまで喜んでるわけ?」
Jaz「あ、イヤ、ただ奴等の気持ちを代弁しただけだ」
謎の女「フーン・・・じゃあおせち持ってくるわね」
Jaz「よし台所に行ったな、今がチャンスだ!1号、お前の取り分を見せろ!」
謎の少年1号「え?これオトーサンが入れたんじゃないの?」
Jaz「この家の権力は全てあの女が掌握している。お前たちにもいつか分かる日が来るだろう・・・そんなことは良いから早く見せるんだ!」
謎の少年1号「ウン。・・・うわぁ五千円札だ!良かった何買おうかな・・・」
Jaz「五千円?!・・・ちょっと待て、1号が五千円ということは・・・俺が一万円、という可能性も浮上してきたぞ?!」
謎の少年2号「ダメだよオトーサンお年玉のこと知らないことになって・・・あ、オカーサン戻ってきた」
謎の女「ハイ、じゃあいただきますの前に・・・今日はオトーサンをビックリさせることがあるのよね」
Jaz「う、うわーびっくりしたわー」
謎の女「・・・まだ何も言ってないし何なのその棒読み口調は?」
Jaz「気にするな。俺なら心の準備は出来ている」
謎の女「意味が分からないけど・・・あのね、去年はお小遣いを減らして家計に協力してくれたでしょう。それに年末も忙しいのに色々頑張ってくれたから、今回は貴方にもお年玉を用意しました」
Jaz「うわーびっくりしたわー」
謎の女「・・・・・」
Jaz「・・・済まん、続けてくれ」
謎の女「・・・車の後ろのドアに何か付けたいんだって言ってたでしょう?バタンと閉まらないようにするとか何とか。それを買いたいんだろうなと思って」
神 は 存 在 し た ! ! !
謎の女が立ち上がり、リビングの奥にある和室に向かいかけたその時。
謎の少年3号「アレッ?!テレビが変だよ?!」
謎の女「え?どうしたの?」
謎の少年2号「ホントだ、何だか画面に青い線が出てる」
確かに画面下から縦に走る2本の青いライン。幅は1mm程度だが画面の中央付近まで伸びている。
Jaz「1号、ちょっと検索してみてくれ。対処法が見つかるかも知れん」
謎の少年1号「ウン。・・・あー、何か液晶の寿命とか書いてある」
Jaz「バカを言うな、購入してから僅か10年、世界のS○NY製品だぞ?!」
謎の女「どう考えても寿命っぽいわね」
謎の少年3号「じゃあ新しいテレビ買う?買っちゃうの?!」
Jaz「分からん・・・取りあえず相場を調べてみよう」
謎の少年2号「ええと・・・今のと同じ大きさだと・・・6~7万円くらい?」
Jaz「微妙に高いもんだな。次の休みにでも見に行ってみるか・・・ところで俺のお年玉は?」
謎の女「あ、ハイハイ、ちょっと待っててね」
謎の少年1号「良かったねオトーサン、欲しい物買えるしテレビも新しくなるし」
Jaz「諸君らの協力に感謝する。・・・で、お前たちは何を買うんだ?」
謎の少年一同「えっとね・・・」
Jaz「(あの女・・・やけに手間取っているな・・・)」
・・・そして数日後。
Jaz「指令室!こちらJazだ」
オペレーター「Jaz!ちょうど今報告書を読んでいたところよ。今回はお手柄だったわね!」
Jaz「イヤ・・・」
オペレーター「特に今回交渉した訳でもないことを気にしているんでしょう?でも自信を持って。以前貴方が伝えた言葉が今になって効いてきたということよ。長官にはちゃんと報告しておくわ」
Jaz「イヤ・・・」
オペレーター「それでテレビはもう届いたの?」
Jaz「・・・買ってない」
オペレーター「ああ、休みがその後無かったのね?」
Jaz「イヤ、画面に線が入っているだけでちゃんと観られるんだから、映らなくなるまで買わなくて良いと言われた」
オペレーター「簡単に全てを許さないところが敵ながら天晴だわ・・・まぁでも、今回初めて公認でパーツを買えるんだから良かったじゃない。もう注文したの?」
Jaz「イヤ・・・」
オペレーター「どうして?弄る時間が無いの?」
Jaz「・・・円だった」
オペレーター「え?」
Jaz「だから、
2万円だったんだよ!」
オペレーター「どうして?!バックドアオートクロージャーの話が出ていたんでしょ?何故それが2万円に・・・あっ!」
Jaz「ああ、テレビだ。あのタイミングで線が発見され・・・そしてポチ袋を取りに行ったあの空白の時間・・・」
オペレーター「確かにそう考えれば全て辻褄が合うわ。流石は謎の女・・・咄嗟の判断で報酬額を変更したのね?」
Jaz「そう、つまり俺の戦いはまだ終わっていない」
オペレーター「Jaz?!どこへ行こうというの?」
Jaz「・・・決まっているだろう。ヤ○オクで中古のユニットを探すのさ」
交渉人ぢゃづ。
彼の戦いは次のチャンネルへと続く・・・。