<殉職>
我が社の若手のホープ(本人の自己申告による)サイトーくんは確かに仕事は速いのですが、ちょっと雑です。
以前も急にジャズを聴いてみたいと言い出したのでCDを10枚ほど貸したことがあるのですが、1か月ほどして返ってきたのを見たところ、そもそもケースと中身がバラバラだっただけでなく1枚紛失、流石に申し訳ないと思ったのか単に入れ違えたか、ここではちょっと書けないようなタイトルのDVDが代わりにケースに収まっておりました。
そんなサイトーくんが外回りから帰ってきた時のこと。
のんたん「・・・ぢゃ、ぢゃづさん・・・サイトーさんが帰ってきました・・・」
ぢゃづ「何なのそんなにサイトーくんが嫌いなのキミは?」
のんたん「ハイ・・・あ、いえそうじゃなくてアレ見て下さいよ!」
指差されるままに窓際に近寄ってみると、駐車場から社屋の入り口に歩いてくるサイトーくんの姿が。
遠目にはチャラ男に見えなくもない風貌も、どんなに遅刻していても決して慌てることのないのんびりした歩き方もいつも通りです。
ただ一点を除いては。
そう、彼のワイシャツの胸元は血塗れになっていたのです。
ワタナベさん(52歳パート)「キャアアアアアア!サイトー君どうしたの?!救急車呼ばないと!!」
サイトーくん「・・・え?!何ですか誰か怪我でも?!」
全員「お前だよ!!」
指差されて自分の胸元に目を落とすサイトーくん。
サイトーくん「・・・な、何じゃこりゃああ?!」(本当にこう叫んだ)

キャップを閉め忘れてポケットに入れると胸元一杯にインクが染み渡るのでご注意ください。
<疑惑の男>
我が社の専務は人格者として知られています。
彼が部長だった頃に同じ部でお世話になりましたが、本当に仕事の面でもそれ以外でも尊敬できる方です。
ただ一点、決して触れてはいけないことがあります。
それは「彼の頭髪が純正ではないかもしれない」ということです。
専務「じゃあそろそろまとめようか。私は自分の案を推したいところだが、ぢゃづ君の案は独創的で面白いね。今回はこちらを採用ということで良いですか?」
副社長「コスト面で読み切れないところはあるが、確かに一度試してみたい案だね。良いんじゃないかな」
のんたん「あの、ちょっと宜しいですか?」
ぢゃづ「(・・・何故お茶を下げに来たお前が発言する・・・)」
のんたん「私もぢゃづさんの案は良いと思いますが、失敗した時のリスクが大きすぎると思います」
ぢゃづ「・・・済みません副社長、気になさらずお続け下さい」
副社長「イヤイヤ良いんだ、中々若い人の意見を聞く機会もないからね。・・・それで君はどの案が良いと?」
のんたん「ハイ、即効力は無いかもしれませんが、確実性から専務の案が
ピカイチだと思います!」
凍り付く会議室。
何故か私を睨む副社長。
遠くの空を眺める専務。
ドヤ顔ののんたん。
ちゃづ「・・・ええっと、のんたん、皆にコーヒーを淹れてきてくれるかな?」
のんたん「あ、はい、インスタントで良いですか?」
ぢゃづ「イヤ、水出しで頼む」
そして資料を配布するために呼ばれただけなのに、空気を読めずのんたんしか見えていないバカ社員。
サイトーくん「俺も!俺も専務案がピカイチだと思います!」
30分後、席に戻った私に歩み寄ってきたのんたん。
のんたん「あの・・・済みませんでした」
ぢゃづ「イヤ・・・」
のんたん「上司のぢゃづさんの案を推すべきだったのに、軽率でした」
ぢゃづ「・・・イヤそこじゃないから」
<続・疑惑の男>
サイトーくん「気のせいかもしれないんですが、最近専務がそっけないんですよね」
ぢゃづ「珍しく察しが良いな。お前避けられてるんだよ」
サイトーくん「どうしてですか?!営業に行くって言ってコーヒー飲んでたのがバレたとか?!」
ぢゃづ「・・・ちょっとその話あとでゆっくり聞くよ。この前の件で副社長が怒ってるのも分かってないよね?」
そして状況を説明。
サイトーくん「そんな・・・俺そんなつもりじゃないッスよ!」
のんたん「私も!ヅラだなんて思ったことありません!」
ぢゃづ「イヤだから誰もそこまでハッキリ言ってないし、問題はそこじゃないし」
サイトーくん「やっぱりお詫びに行く方が良いですよね、俺謝ってきます!」
ぢゃづ「何て言うんだ?」
サイトーくん「イヤですから専務を傷つけるような発言をして・・・あ、逆効果ですかねコレ?」
ぢゃづ「良かったな行く前に気付いて」
のんたん「どうしたら許してもらえるでしょう?」
ぢゃづ「謝るより機嫌を取る方が良いんじゃないのか?気分よくなってもらえれば水に流してくれるよ、ホント良い人だから」
サイトーくん「褒める・・・ああ、専務って渋いイケメンですよね。若い事務の子にも人気だし」
ぢゃづ「確かに。まぁイケメンって言葉が通じるかは微妙だけどな。もう少し言葉を選べば大丈夫だろう」
たまたま専務に届ける書類があったので2人に預けた私。
そして1時間後。
副社長「ぢゃづくん、ちょっと良いかな」
ぢゃづ「ええ」
副社長「さっき○○くん(専務のいる部署のお局様)が私のところに来てね、ちょっと気になることを聞いたんだが・・・君のところのサイトー君か、彼が専務に向かって「本当に専務はハンサムですよね」と言ったらしい」
ぢゃづ「はぁ・・・あ、そういえば専務って昔『ハンサムさん』って呼ばれてたって話を○○さんに聞いたことがありますね」
副社長「・・・君はその渾名の由来を知らないのか?」
ぢゃづ「彫りが深いしお洒落だからじゃないんですか?」
副社長「君も知っている通り、以前はオールバックだっただろう・・・少し広い額をそのまま出していたんだ」
ぢゃづ「まさか・・・」
副社長「そう、
『半寒さん』だ」
ぢゃづ「・・・先日のことといい、本当に申し訳ありません。私これから伺ってお詫びしてきます」
副社長「イヤ止めた方が良い」
ぢゃづ「知らなかったことにした方が良いということですか?」
副社長「イヤ、サイトーくんはその発言の後で、『ぢゃづさんも同意してましたよ』と言ったらしい」
ぢゃづ「・・・サイトー!!!!!サイトーはどこに行った!!!」
のんたん「え?・・・ああ、営業に行くって言ってさっき」
副社長「どうせコーヒーでも飲みに行ったんだろ」
ぢゃづ「・・・(本当にバレてるよサイトーくん・・・)」
今回記事にするにあたって多少細部をデフォルメはしましたが、出来事は全て事実という悲しい現実。
そして年の瀬だというのに、2人のお陰で更新され続ける私の休日出勤記録。
唯一の望みは来春の人事異動ですが、副社長の「引き続き2人の指導を宜しく頼むよ」という発言から、その僅かな希望も儚く消えようとしています。