■Porsche 911 (997) Carrera S PDK
ケイマンSを運転して以来、すっかりポルシェ好きになって3年間。
ずっと乗ってみたかった911を運転してきた(ポルシェセンター中大阪にて。ありがとうございます)。
【エンジン】
水平対向6気筒
3799[cc]
385[ps]/6500[rpm]
420[N・m]/4400[rpm]
圧縮比:12.5:1
【トランスミッション】
レイアウト:RR
7速PDK
【車重】
1500[kg]
●エクステリア
911は911というジャンルであり、デザインについてはあまり議論の余地がないなあ。
歴代モデルとの比較も今となってはナンセンスに思える。
ケイマンと比較すると、個人的にはケイマンの方が好きなデザイン。
●インテリア
座ってみて・・・・。
うーん、なんだか3年前にケイマンSに乗ったときのような硬派感、ゾクゾク感、緊張感は感じなかった。
また、B4のようなツーリングカーでは得られない、スポーツカーならではのコックピット感、囲まれ感もあまり感じなかった。
B4の運転席がスパルコのフルバケ、サベルトのハーネス、スパルコのディープコーンのステアリングなどで、コックピットぽくなったから感覚が鈍くなったのかな?
インパネの5連メーターは911の伝統だが、質感を感じなかったのと、硬派さもあまり感じず、良く言えばナチュラルな感じだった。
やっぱりこのあたりは、同じ911でも旧車の方が雰囲気があって良いネ。
ステアリングホイールは、太く、硬質なレザー。
いかにも質実剛健な感じだが、個人的にはもう少し、「ギュッ」としたグリップ感が欲しい(抽象的過ぎる表現だが)。
ダッシュボードの質感(シボなど)は、レガシィB4(BL5A)とそんなに大差ない。
また、B4購入当初にすごく不満だったセンターコンソールの安っぽいシルバーの質感は、案外ケイマンなんかと似たようなもんだったりする。
そんなこんなで、昔B4に抱いていた内装のチープさのコンプレックスはポルシェのおかげで払拭できた。
シートは、良い意味で硬質なレザー。
良くできているが、スポーツカーとしての演出には物足りない気もする。
大人なシートである。
これをすぐにフルバケに換装するのもちょっと違う気もするし、結局GT3やRSのような走りに振ったモデル以外の911はスパルタンなスポーツカーではないのだろう。
左ハンドルのPDK車両だったのだが、ブレーキペダルはかなりアクセルペダル寄りに位置していて、左足ブレーキ向きなレイアウトではなかった。
左足ブレーキを使うには下半身をセンターコンソールに寄せる格好となり、シートのホールド性も高くないので、不安定な体勢となる。
後部座席に次女(もうすぐ4歳)を座らせての試乗だったが、幼児が乗る分には十二分に広そうだった。
●ドライビング・インプレッション
はじめは、助手席に乗って、営業さんの運転で、解説を受けた。
助手席に座るとき、その着座位置の低さに驚き、いいな、と思った。
さて、自分で運転してみた。
結構長い時間、試乗させて頂けた。
●エンジン
まず思ったのは、ケイマンSと較べて随分と静かでソフトなクルマだなあ・・と。
ケイマンは、運転席のすぐ後ろにエンジンがあるので当たり前だが、もっと「エンジン背負ってます!」というミッドシップならではの感動があった。
エンジンの存在感がデカかった。
対し、911はエンジンが遠く、うるさいクルマ好きな私には少し物足りなく思えた。
エンジン音は、「水平対向だから」という安直な理由なのか、スバルのEJと良く似てた。
私のB4はターボでキノコ型エアクリやソレノイドバルブで「シュコーッ」「プシャーッ」とか、ターボカー特有の音を出すのだが、そういうのを差し引いたエンジン音はカレラSのFLAT6に酷似しているんだな、と思った。
気持ち、カレラSの6発の方がキメ細かく、雑味が少ないけど、走行年数の差かも。
PDKを2速ホールドにして、アクセルを踏んでみると、結構な勢いで加速する。
BMW E92 M3のようなシャープな加速感ではなく、コシのある力強い加速。
私のB4もそれなりに速いクルマだと思っていたが、カレラS試乗の後、同じように2速で踏んでみたら、ターボラグは大きいし、力強さでは随分と劣っていた。
ECUを煮詰めて、かなり低回転域から力強いエンジンになったと思っていたが、ポルシェの3.8L 6気筒 NAにはだいぶ及ばなかった(エンジンだけでなく、減速比などももちろん絡んでるとは思うが)。
もっとも、ターボラグというネガティブな部分を含めてのターボならではのカタルシスはあるのだけれど。
カレラSのエンジンは3.8Lと大排気量なので、2Lエンジンと違って線は細くない。
太いんだけど、締まりはある。ボヤけてない。締まりはあるが、カリカリはしていない。
S2000やE30 M3の4気筒のようにガツンと芯のある血沸き肉踊るエンジンではないが、とても気持ちのよいエンジンだと思う。
下から上までトルクがあって、まったくツッコミどころがない。
●PDK
ポルシェのデュアル・クラッチ・トランスミッション「PDK」。
以前にも書いたが、962Cの頃にCカーでPDKが開発したものを、アウディが引き継いで、長年かけて市販化したのがDSGだ。
DSGは第2世代で乾式クラッチに換わったが、PDKは湿式である。
セレスピード、センソドライブ、DSG(湿式)、DSG(乾式)、ツインクラッチSST・・・など、ロボタイズドMT車には結構乗ったが、PDKは流石に文句のつけようのない完成度だった。
自動変速モードにしておくと、40[km/h]ぐらいで3速に入る。燃費のために、どんどんと上のギアへと移行する。
このあたりは、以前試乗した、
VW トゥーランのDSGと同じだ。
手動切替モードにすると、トゥーランのDSGのように機械の勝手な介入はなく、好ましい。
シフトチェンジでのシフトショックやトルク切れは皆無だった。
ブリッピングも完璧だ。
その完成度には驚くが、同時に、「クラッチでカチッと繋がっている」感覚はなく、ちょっとトルコンを連想すらしてしまい、萎える(頑張って開発したポルシェの人、ゴメンナサイ)。
たぶん、湿式ゆえのフィーリングでもあるのだろう。
これがスポーツカーである以上、シフトショックがあっても良いからエンジンとトランスミッションがダイレクトに繋がるフィーリングを求める私は間違っているだろうか?
●ブレーキ
「宇宙一」と言われるポルシェのブレーキ。
ガツンと効くタイプではなく、踏力に応じてリニアにギューッと効く、コントロール性の高いブレーキだった。
好印象。
●ボディ、足など
ボディの剛性感は流石に強烈だった。
普段は自分のB4の剛性不足は気にならないんだけど、カレラS試乗直後は随分とヤレたクルマに思えた。
またお金ができたら近藤さんとこのロアアームバーなど入れたいなあ。
剛性感とステアリングが重めなのも理由かもしれないが、低速走行時は少しクルマが重く感じた(実際、自分のB4より100[kg]ぐらい重い)。
足も良くできていて、ロールやピッチングは非常に少ないんだけど、ゴツゴツもしない。
私のB4は6万[km]を越えて、純正ビルシュタインのダンパーもヘタってきてるのもあるが、カレラSの試乗後は、いつにも増して、足がバタつくのがわかり、また振動の減衰に時間がかかるのも気になった。
3年前のケイマンSは結構ゴツゴツとした突き上げがあったのだが、カレラSの乗り心地は非常に良かった。
今回の試乗はPASMはOFFで行ったのだが、そのあたりの絡みもあるのかな?
乗り心地は良いが、インフォメーションが希薄というワケではないのは流石だ。
ただ、出来が良すぎて、個人的には少し物足りなさも?
カレラSのステアリングはタイトでニュートラルだと思ったが、長めの試乗とは言え、ワインディングを走ったりしたワケではないので、RRの何たるかはわからなかった。
●総評
残念ながら3年前のケイマンS試乗のときほどゾクゾクできなかった。
3年前はダイハツのミニバン「アトレー7」に乗っていたので、現在とは比較の基準となるクルマが異なることもあると思うが、それを差し引いても、ケイマンSの方がカレラSよりもかなり自分好みだと思った。
ケイマンSの方がスポーツカー色が濃く、男臭かったからだ。
ただし、インプレ全般に書いているように、やっぱり911カレラSはケチのつけにくい完成されたクルマだった。
文句なしに良いクルマだと思う。
ケイマンSのときと同様に、試乗後、時間が経過するごとに印象が強くなるのはポルシェの特徴かなあ。
911試乗で、自分のB4のネガティブな部分が見えたのは良かった。
対策のできないネガではないので。
金銭的にはキリがないのだが、順々にやっていこう。
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