社用車(社長車)の先代レクサスGS450hについては過去に何度かレビューしたが、先日、その「先代GS450h」のハイブリッド用バッテリー交換(=保険で無料だったらしいが、保険ナシだと28万円だか29万円だからしい)で、1泊だけ代車で新型GS450hのL SPORTが来たので、昼休みの短い時間だが、観察・運転させて頂いた。
■Lexus GS450h (GWL10-BEXQB) F SPORT
●エクステリア
この2代目GS登場時に、「ああ、また中国でのウケ狙いか・・・」とガッカリした。
先日の
BMW 528i(FR30) のレビューで書いた、中国の富裕層ウケするちと言われるデザイン文法に2代目GSも該当するという印象。
街で見かけても、
「先代の方が個性的でカッコイイな」
「先代の方がGTカーっぽくてカッコイイな」
「先代の方がある意味DQN向けだが、毒だって必要だよ」
と思っていたが、まあ、GSに限らず、モデルチェンジしたてのクルマのデザインに好印象をもてなくても、数年後に理解できる・・・というケースもあるので。
・・・と、2代目GSにはあんまし良いイメージがなかったのだが、実物を間近で見てみて、
「案外、カッコイイかも」
「思ってたよりボリューム感あるな」
と思った。
それはこれが「F SPORT」というグレードで、そのF SPORTの下品なエアロが、良い意味でも悪い意味でも、先代GSのテイスト・方向性に少し近いからかもしれない。
ヘッドライト周辺とか結構カッコ良かった。
ただし、サイドビューは
先代の方が好きだなあ。
2代目は、特にお尻がBMWのイケてないバッタもん臭い。中国車っぽくもある。
サイドビューに引き続き、リアビューもなんかダサい。
テールランプのディテールが、顔とチグハグな気がするのは私だけだろうか?
中国ではこういうのがウケるのかなあ?
ホイールのデザインは極めてオーソドックスなもの。
私の乗っていたスバルのBL・BP前期型レガシィのSpec.Bのホイールにも良く似ている↓。
※Alfa 159 TIにも酷似
ツマンナイけど、ひとつの定番なんだろう。
●インテリア
先代GS450hのインテリアが黒ゴリ押しの、硬派で男臭いスポーティーさを演出しているのに対して、2代目GS450hは「普通の高級車のインテリア」になった。
方向性としては無難で凡庸になったものの、クラウンとかパナメーラみたいな下品なものではなく、センス良く調和の取れたものとなっており、ひとつひとつの素材感などもメルセデスと較べても負けてないと思える、非常にクオリティの高いものとなっている。(このジャンルではBMWがブッチギリで低クオリティ)
ステアリングのテレスコのストロークが長く、シートポジションが極めて後ろな私にも適性なハンドル位置の調整ができるのが良かった。
アナログ時計と「マークレビンソン」のオーディオ♪
わかりやすい「高級車の内装」の演出。
わかりやすさって大事だと思う。
ベタだけど下品・嫌味じゃない・・・てのも技術が必要だと思うので、ここは評価できるんじゃなかろうか?(mistbahnにはあまりに無関係な要素だが・・・・)
メータ部分は、先代がヘアラインっぽい独特の仕上げだったのに対し、凡庸なモノになった。
先代のメータはステキだったが、光を反射して見にくいと評判だったので、そのあたりの反省からなのかな?(コストダウンのための仕様変更ではないと思う)
サイドブレーキの解除方法がわからず、しばらく悩んだ。
この「AUTO」「(P)」がサイドブレーキのレバー。
「電動パーキングブレーキ」だそうだ。
サイドブレーキは試してみなかったが、きっと電制でムリなんだろうなあ。(レバー位置も悪い)
ペダルはベタだけど好感のもてるデザイン。
異様にデカいフットレストが個人的には◎。
●パワートレイン
3.5L V6エンジンを電動機と組み合わせたハイブリッドであるのは一緒だが、
Motor Fan illustrated vol.70には、2代目GSの3.5L V6(=2GR-FXE)が、先代GSの3.5L V6(=2GR-FSE)よりかなり仕様変更していることが解説されている。
エンジン諸元
エンジン型式: 2GR-FXE
最高出力: 295[ps](217[kW])/6000[rpm]
最大トルク: 36.3[kg・m](356[N・m])/4500[rpm]
種類: V6DOHC+モーター
総排気量: 3456cc
ボアXストローク: 94.0mm×83.0mm
圧縮比: 13
燃料供給: DI/PFI
過給機: なし
モータ諸元
モーター型式: 1KM?
モーター最高出力: 200[ps](147[kW])@何rpm以上?
モーター最大トルク: 28.0[kg・m](275[N・m])@~rpmまで?
※出力・トルク値は先代と同じ
ボア×ストロークは全く変わっていないものの・・・
2代目の2GR-FXEは「アトキンソンサイクル」らしい。
「アトキンソンサイクル」も最近、聞き慣れたが、2012/7時点では、V6エンジンでは世界唯一のアトキンソンサイクルだそうな。
アトキンソンサイクルの実現には連続可変バルブタイミング「Dual VVT-i」が使われている。
燃料噴射はDI/PFI併用・・・ってことは、86/BRZのFA20と同じD-4S。
これも先代の2GR-FSEからの進化ポイントっぽい。
Dual VVT-i、D-4Sが役に立ってるんだろう。必要な部分でノッキングマージンが確保された成果だと思うが、
先代2GR-FSEの圧縮比: 11.8
現行2GR-FXEの圧縮比: 13.0
と圧縮比はかなり高くなっている。
コレはいまどきのエンジンって感じ。
ただし、数字的には
先代2GR-FSEの最高出力: 234kW/6400rpm
現行2GR-FXEの最高出力: 217kW/6000rpm
先代2GR-FSEの最大トルク: 380Nm/4800rpm
現行2GR-FXEの最大トルク: 356Nm/4500rpm
と、諸元上の数字を重視するよりも、ダウンスピーディング化を重視し、実用域での使い勝手と燃費を重視している模様。
正しいと思うが、個人的にはロマンを感じることができない。
と、スペックの話はここまでとし、では実際運転してみてどうだったのか?
爆発的な加速は健在だが、CVT(※ベルトではないよ)の制御が結構変わったような・・・・。
極低速からドンとアクセルをベタ踏みすると、まず車速に連動せずにPOWERゾーンにメータがギュイーンと上がってから、車速がリンクし、ドンと加速する。まるでターボラグのように。
電動機のトルクがデカいのは低回転域なので、その制御を見ていると、電動機よりもエンジンに役割分担させた加速・・・という印象もあるが?
たまたまバッテリー残量が少なめだったから、そういう制御が働いた・・・とか、そういう事情ってあるんだろうか?
あるいは、設定を「ECO」「S」ではなく「S+」にすると、足回りだけでなくパワートレインもエンジン寄りになる・・・とか、そういう制御が働いたりするんだろうか?
あるいは、先代GSよりも、低トルク・高回転型の電動機に仕様変更していて、高回転域でのモータアシストを行なっているとか?
いや、電動機は先代と最大出力・最大トルクが同じなので、あまり変わってなさそうだ。
うーん。。。
エンジンは相変わらず回すと掃除機っぽい音がするが、そんなに酷く安っぽい雑味ってワケでもないので、ステキなマフラーに換装したりすれば、結構美音を奏でるのかもしれない。
低回転型だけど、6気筒(=比較的多気筒)だし。
先代よりも、実用回転域に振られたスペックの割には、先代の「高回転域で苦しそうに回る」特性が、意外にも現行2GR-FXEでは小マシに思えた。(とは言ってもどうせ低回転型なのだが)
「高回転域で苦しそうに回らない」のは、F SPORT仕様のECUの味付けがあるのかもしれない。
このあたりは燃費を無視すれば、バルブタイミングでの味付けに自由度があるからな。
●パワートレイン(EVモード)
センターコンソールのHMIに「EVモード」というボタンがあったので、「おっ?」と思って試してみた。
1)
運転しながら押す→「EVモード切換不能」的なメッセージ。
2)
減速→回生して、GS450hを側道に停める。
「EVモード可」のランプが点くので、EVモードに切り換える。
走りだす。
「EVモードが解除されました アクセル踏み過ぎ」
「アクセル踏み過ぎ」って・・・・
文字数制限があるとは言え、これが「おもてなし」のレクサスの表現で良いのだろうか?
3)
再び停車。発進。
そろそろとアクセルを踏む。まだ20~30%も踏み込んでいないのに・・・・
「EVモードが解除されました アクセル踏み過ぎ」
i!|i ○| ̄|_....
4)
再チャレンジ。
本当にデリケートにアクセル操作。
今度は50km/hで
「EVモードが解除されました EV速度超過」
と出た。
・・・なるほど。
要は、EVモードはエコロジー、エコノミーのためのモードではなく、夜中にコッソリ帰宅するときに、近所迷惑を回避するためのモードらしい。
なので、徐行にしか使えない。
それにしても、なんかネタ、ツッコミどころだらけのモードだ。
●ドライブトレイン、タイヤ、ボディとか
サスペンションは常時「S+」設定とした。
先代GSは「ドシッ」「ガシッ」とした、かつてのドイツ車風味の質実剛健さを全開アピールしていたが、2代目GSは、路線自体は踏襲しているものの、かなり薄味になっている。
ステアリングホイールの反力(どうせ電動パワステの味付けなのだが)も軽めで薄味に。
フレーム剛性感的なものはシッカリあるが、なんか爽やか。ドッシリ感は良くも悪くも薄くなった。
もっとも、ドイツ車もドッシリ感を貫いているのはポルシェとBMWぐらいで、メルセデスもAudiもVWも、6~7年ぐらい前からドンドン、爽やか・軽快路線に移行しているので、これが世界的な潮流なのかな。
高級車としてはトレンドを押さえた味付けにシフトしたんだろうケド、先代GSは日本車・・・・それもよりによってヨタとしては稀有な個性派だったので、個人的には非常に残念。
先代GS450hでは乗る度に、「やっぱり後輪駆動ってサイコーだよなあ・・・」「307SWがFFなのはやっぱり残念」と思い知るぐらい、普通の街乗りでも「後輪駆動です」アピールが強い味付けだった。
スプリングレートやデフの味付けなんかによる違いだと思うが、BMW以上に後輪駆動感をゴリ押ししたテイストで、個人的には大好きだ。
2代目GS450hにも後輪駆動感はあるのだが、先代ほど強烈なアピールはない。ここでも薄味に。
先代はそんなこんなで、BMWよりもむしろポルシェ911を連想するテイストがあるのだが、2代目にはポルシェ色はないなあ・・・。
残念。
タイヤは先代はTURANZAのランフラットだったが、この2代目は「F SPORT」だからか、バカのひとつ覚え、BSの「RE050A」。
mistbahnの苦手なモデル。
BL・BPレガシィの純正もRE050。
Audi A4も、
997カレラもRE050A。
なんでRE050Aはこんなに普及してるんだろうか?
個人的にはグリップ→スライド→グリップのスレッショルドが唐突なクソタイヤだと思ってるのだが、OEMのセカンドグレードとしては安いのかな???
この2代目GS450hではなんか、サイドウォール剛性感がプアな気がしたが、単に空気圧が低かったのかもしれない。
せっかくの大トルクFRなので、Uターンの際に、ステアリングを目一杯切った状態で、アクセルベタ踏みしてみた。
テールはスライドせずに、リア外輪(右回り時の右後輪)から「ガガガガガ」という、変な振動・異音がした。
2回試してみたが、再現性アリ。
GS450hって純正でもなんらかのLSDが入ってるのかな?で、LSDによるものだろうか?
フルブレーキング時の、フロントの沈み込みなんかは、先代より少なかった。
先代1890kg→2代目1860kgと、30kg軽くなっているが、それよりフロントサスのセッティングなんだろうな。
これは好印象。
ちなみにブレーキパッドだけでなく、電動機の回生による制動も働くので、重たいクルマなのに、かなりの減速Gで良く止まるのでちょっと面白い。
●総評
文句ナシに良くできているが(EVモードを除く)、薄味になったのが残念。
個人的には新車で2代目GS450hを買うよりも、中古で先代GS450hを買う方が粋だと思う。
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