■Nissan FAIRLADY Z Version ST (Z34)
Z34のMTを試乗した。
型式:CBA-Z34
6MT
エンジン型式:VQ37VHR
排気量:3696[cc]
V型6気筒
最高出力:336[ps](247[kW])at 7000[rpm]
最高トルク:37.2[kg・f](365[N・m])at 5200[rpm]
車両重量:1520[kg]
●エクステリア
やたらと評判の悪いヘッドライトの形は、確かに少し見慣れてきた。
楔形となっていなければ、このランプはガヤルドの踏襲だと思う。
全体フォルムとしては、S30ZからのフェアレディZの流れをきちんと継承している感じがするし、なかなかよくまとめたデザインなんじゃないだろうか?
タイヤ・ホイールを強調するデザインは近年のトレンドだが、やり過ぎ感もなく、でもうまく強調できていると思う。
サイドビューは、前や後ろからのアングルよりもコンパクトに見え(前後オーバーハングが小さいからだろうね)、好感がもてる。
好感はもてるのだが、心の琴線に触れるデザインではないなあ・・・。
個人的には、なにかトキメク要素が足りない。
また、じゃあ、Z34が歴代Zよりビジュアル的に好きか?と訊かれると、S30やZ32の方が好きだ。
Z32には否定派も多いが、フェンダーの流麗で繊細な面など、最近のクルマでは見ることのできなくなった素敵なものだと個人的には思う。
まあ、Z32は中坊のときに発売日周辺に名古屋の日産ギャラリーまで見に行ったり・・・と、思い入れもあるんだけど。
●インテリア
インテリアは、写真で見るよりも実際に乗り込んでみると、かなり素晴らしかった。
メーター類からドア内側のエアコンの噴出し口までを円形の連なりで統一したデザインも秀逸。
シートの皮の色・質、ドア内側のオレンジっぽいアルカンターラ(日産の場合は「エクセーヌ」かな?ま、一緒のものなんだけど)、センターコンソール周辺のレザーの使い方と質・・・・
いずれもハイクオリティだ。
プレミアムなクーペ。
BMW Z4の内装なんかと較べると雲泥の差で良くできていると思う。
メーター周辺のインパネ部も、写真で見るとただのシルバーなのだが、ヘアライン仕上げとなっており、運転席に座って見るとイケてる。
で、座ったときの「囲まれ感」「コックピット感」が素敵だ。
これはRX-8なんかでも感じたことだが、やはりこの「囲まれ感」「コックピット感」は、「スポーツカーならでは」なところで、スポーツセダンではシートをフルバケにしたところで同じ土俵には上がれないなあ・・・と再認識。
●ステアリング、足回り
ディーラーから道に出るまでの数メートルで、電動パワステの軽すぎるところに違和感。
私は「車速感応式」の電動パワステが大嫌いだ。
路上に出てみて、ウレシイ誤算だったのが、足回りにもペダル類にもきちんとインフォメーションがあったこと。
酷評なので掘り返したくないが、
ブログエントリ:「
【試乗】Nissan Skyline(V36) 250GT 」
でレビューしているように、スカイラインですらインフォメーションはかなり希薄だった。
他車種も含め、ニッサン車はステアリングホイールも足回りもペダルも、まるで手応えがなく怖いイメージがあるので、「スポーツカー」であるZがどうなのか、以前から気になっていたのだが、これは良い意味で裏切られた。
Z34にはインフォメーションが存在した。
ガッチリとした、重量感・剛性感のあるボディを、硬く締まった軽い脚で支えているような印象。
車重はあるけど、おそらく重心のバランスが良いからと、おそらく前後オーバーハングが短いことで、自分のB4よりも良く曲がる印象を受けた。
また、低速カーブでも、アクセルワークでFRらしい挙動を示してくれたのがとても好印象だった。
●エンジン
エンジンは、大排気量のV6ということで、試乗前は「トルクフルだが、野太く、フォーカスのボケた感じ」をイメージしていたのだが、これもある程度良い意味で裏切られた。
意外とシャープさも伴っており、ちょっと「カリッ」としたテイスト(点火時期をかなりMBT寄りにセッティングされてるようなフィーリング)。
硬さと太さが共存するような感じ。
友人が「
NCロードスターの排気量を大きくしたようなフィーリング」と例えたが、私も全くの同感だ。
ただし、アクセルペダルを踏み込むと、十分な加速をするものの、何か物足りない。
実際の速さなのか、音なのか、スポーツカーとしての「刺激」「ドラマ」は存在しない。
ただし、それは吸排気をイジったターボカーに乗っている者としての感想なんだろう、とも思う。
だがやはり、同じNAでも
友人のBMW E30 M3や、
Honda S2000 (AP2)に存在するような、魂に訴えかける何かは存在しなかった。
また、
大排気量V8でFRのBMW E92 M3クーペのような冷徹さ、精密感があるというワケでもない。
NCロードスターもちょっと似たエンジンテイストで、且つ、パワー的にはプアだが、NCには「きちんと上まで引っ張って、シフトアップ」というマナーを要求され、これが運転の楽しさに繋がるのだが、Z34はパワフルなだけに、そういったマナーを要求されずにズボラ運転できてしまうのも裏目なのだろう。
そんなこんなで、Z34のVQ37VHRは、良くできたバランスの良いエンジンだと思うが、単に個性のないエンジンにも思える。
まあ、でも、EJ20だってRE13Bだって、「キレイに回る」=「味ナシ」なエンジンなので、VQ37もあれこれと弄るときっと楽しいエンジンになるのだろう。
潜在能力はかなり高そうなだけに、チューンドベースのエンジンとしては面白そうな印象は受けた。
●自動ブリッピング機能
で、話題の世界初「自動ブリッピング」機能。
どうも2速のギアの入りが悪く(車両の問題なのか、私の操作が悪いのか不明)、うまく3→2とシフトダウンできないことが多かったのだが、きちんと3→2とシフトチェンジしてやると、驚くほどキレイにブリッピングして繋がる。
これはこれで、素晴らしい技術だなあ・・・・と感心はしたものの、シフトダウン時の空ぶかしを自分で行わないのは、普段MTに乗っている者としては「考えてのシフトダウン」「我慢」が必要だった。
評論家がこぞって「違和感ナシ」と言ってるのは、私より運転スキルが高いからではなく、日産からお金をもらっているからだと思う。
「動作」としては違和感ナシなのだが、「操作」としては慣れが必要なんだもの。
昔から、シフトダウン時の空ぶかしはシンクロを労わる意味で、クラッチを切った状態ではなく、ニュートラルでクラッチ接続した状態で行ってきた(ダブルクラッチ)。
以前に皆様にアドバイス頂いてから、現在は、アクセルを煽る瞬間にノークラッチでギアを抜き(ニュートラル)、そのままの流れでアクセルを煽ってから、クラッチを踏んで下のギアに繋いでいる。
そんなこんなで、そもそも「クラッチを切った状態でのブリッピング」自体にかなりの抵抗感があるので、自動化以前に私には違和感ありまくりなんだろう。
シフトアップ時は、いくつか試してみたが、いつもどおり、アクセルを抜く瞬間にノークラッチでギアを抜き、タメのあと、上のギア接続・・・が一番キレイだった。
「自動ブリッピング機能」はシフトアップ操作には影響を及ぼしたりはしていないようだ。
●ほか
あと気になった点は、フットレストがかなり奥にあるのに対し、クラッチペダルが結構手前だということだろうか?
左足ブレーキを多用する私は、フットレストから、かなり手前に左足を引き寄せて、クラッチペダルをかわしてブレーキを踏む必要がある。
自分の運転スタイル的に、Z34ではフットレストはあまり使わずに、左足かかとを軸に、クラッチペダル、ブレーキペダルに対してスタンバイ状態にしておく必要があり、これは好みじゃないなあ・・・と思った。
●総評
良い意味で裏切られることの多かったZ34試乗。
なんだかんだでバランスの取れた良いクルマだとは思ったが、ターゲットとする客層が掴み難いクルマかなあ・・・とも思った。
高価なクルマだが、S2000のようなスパルタンさはなく、プレミアム性ではZ4やTTクーペに負ける可能性大(内容が劣ってるとは思わないが、ブランド力)。
SC430のようなラグジュアリー志向のフワフワ足ではなく、適度にスポーティーだが、S2000やケイマンのような魂に訴える「熱さ」はない(と私は思った)。
チューンナップしたら、きっととても面白いクルマにはなりそうだが、チューンドのベース車としては高価すぎる気もする。
難しい位置づけだ。
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