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2013年03月03日 イイね!

スズキ ワゴンRスティングレイ(T) ターボエンジン搭載車 試乗

 少し前に、現行ワゴンRの自然吸気エンジン搭載車に乗車しました。ワゴンRの大まかな姿は理解できたものの、フラッグシップモデルであるスティングレイのターボエンジン車にも乗ってみたくなったこと、同日にVW UP!に試乗し、対局的な存在である国産軽乗用車のハイパワーエンジン車の実像が気になったため、その足で試乗に行きました。

軽乗用車背高ワゴンのターボエンジン車について

 軽自動車は、法的に定義が決められています。排気量や車体サイズなどです。このため、大昔からハイパワー競争が起こりやすく、過去何度も同じことがありました。

第一次石油ショック、排ガス規制前には、ツインキャブを搭載するなどし、当時の排気量の上限である360ccながら、36馬力も発生していました。

石油ショックからの省エネ志向や、排ガス規制を2ストロークエンジンで乗り切ることが難しいことから、急速に流行が廃れ、「軽自動車は登録車(普通車)を買えない人が買う車」というイメージになってしまいました。

1979年からターボエンジンが解禁され、軽自動車にも徐々に過給器付きエンジンが広まっていきました。当初は「クーラーを付けても坂道を登れる仕様」位にしか考えられていませんでした。5500ccエンジン第二期辺りで、「アルトワークス」「ミラTR-XX」「レックススーパーチャージャー」辺りで「軽カーターボ」が注目され始め、各車次のモデルで、本格的なスポーツ志向になっていきました。一番最後のミニカでは、「DOHC5バルブターボエンジン」が搭載され、ハイパワーウォーズの頂点を極め(?)ました。

その後、1994年にスズキがワゴンRを発売しました。前回のブログで大まかな歴史は書きましたが、「荷物を搭載しても十分に走るためのターボ」として、流行が始まってからターボエンジンが搭載されました。やがてダイハツ ムーヴとの戦いが始まるとK6A DOHCターボエンジンが搭載され、以後、背高ワゴンにもパワーウォーズが勃発しました。

なお、スバルはプレオにDOHCターボエンジンを搭載していましたが、みなさんもご存知のように現在では自社開発を終了しています。三菱もトッポBJを販売していますが、現在のところワゴンRとムーヴの戦いからは外れています。

エンジン
 
 一見すると旧型との違いがわからないといえる本モデルですが、今回から「R06A」エンジンに変更されました。前任のK6Aエンジンは、1990年代の設計した。現行の普通車のエンジンは、2000年代初頭に発表されたエンジンですら、既に引退が始まっていたりします。それだけエンジンに対する解析が進んだこと、燃費規制がさらに強化されたことなどから、さらに無駄をそぎ落とす傾向にあるからと思われます。

スティングレイシリーズでは、ターボエンジン車と自然吸気エンジン車がありますが、今回はターボエンジン車に乗ってみました。軽自動車のターボエンジン仕様は、最近ではN ONEに乗っています。N ONEは「ジェントルで余裕あふれる走り」でしたが、こちらのエンジンはまさに「ベビーギャング」といった吹け上がりを見せます。

後述する副変速機付きCVTの効果もありますが、発進時に若干鈍く感じるところがあるのみで、過給が始まると強烈な加速が始まります。発進時も、副変速機の効果によるローギヤ化により、ごくわずかの鈍さを感じるだけです。おそらく、人によっては感じないかもしれません。

過給が始まると、恐ろしい勢いで加速が始まります。エンジンの最高出力は64馬力、最大トルクは9.7kgf・mを発揮します。トルク特性などは示されておりませんでしたが、N ONEと比較すると本格的に過給圧が高まる回転域は若干高く、トルクも回転数が上がるほど(といっても限度はありますが)に高まっていく特性ではないか、と考えられます。

いくら荷物をたくさん詰める車とは言え、ここまで出力が高いと持て余し気味になってしまいます。もともとは「余裕のためのターボ」だったのが、若者向けスポーツモデルがアルトからKeiに、そしてワゴンRに移ってきているからだと思うのですが、これまた後述する、「着座位置」や「ボデー形状」から出られる競技もなく、やや使い道に困るかもしれません。しかし、「ハイパワー=競技」というのもちょっと偏った思考ですね。。。

そんなびっくりするほどの吹け上がりを見せるエンジンですので、市街地走行ではフルスロットルにはできませんでした。

アイドルストップ機能について

 いま普及期にあるアイドルストップを、ワゴンRではターボエンジン車にも搭載しました。詳しい仕様についてはわかりませんでしたが、スターターモーターはタンデム方式かと思われます。普通のスターターモーターですと、ピニオン飛び込みと作動開始が一工程でしか行えないことから、原則中からの再始動は不可能です。

この車では、時速12km時でもアイドルストップが始まります。ブレーキペダルから足を離すとすぐさま始動されますが、要する時間は0.35秒程度のようでした。普通スターターモーターの0.4秒とは、明らかに時間が違います。

減速中にエンジンを止めるということは、軽いブレーキペダル操作量でもエンジンが止まり、止まり続けることを意味します。そのまま軽いブレーキ操作量でもエンジンは止まり続けますが、ほんの少しブレーキペダルを戻すだけで、すぐにエンジンがかかります。しかし困ったことに、完全にペダルを緩める前にもエンジンがかかってしまいます。すると、副変速機の効果によって「車輪トルク」が強いため、発車しようとしてしまいます。気をつけていないと、渋滞路などでは前車に衝突してしまうかもしれません。

このアイドルストップ・エンジン始動機能は、「エネチャージ」によって実現されています。減速時に、車の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換、リチウムイオンバッテリーに充電、発車時などはその電気によってエンジンを始動します。気をつけて減速すると、「ちょっとエンジンブレーキが強いかな?」と感じることがあります。

このシンプルな機構で十分なアイドルストップを実現しているのですから、ハイブリッド車が普及するまでの間、この方式によるアイドルストップ車が増えるのではないか、と考えられます。

トランスミッション
 スズキお得意の、副変速機付きCVTが搭載されています。副変速機により、発車時は低い変速比にして素早い発車が可能となり、定速領域では高い変速比にして、低いエンジン回転による静けさと低燃費を実現しています。しかも、それぞれの変速比でCVTとしての変速も可能です。

CVTは、その名前から「幅広い領域で自由な変速比を実現できる」と思われがちですが、最も低い変速人高い変速比の幅が狭く」、多くの車では低い変速比側を諦めています。

スズキは、CVTと直列に二段式の変速機を設け、ローギヤとハイギヤを自動で選択出来るようにしています。このため、発車時は低い変速比で発車、定速域ではハイギヤとしています。この効果はどのエンジンと組み合わせても如実で、特に自然吸気エンジン車では他社の同程度の車と比較しても、走りが活発になっています。

ターボエンジンと組み合わされた仕様には初めて乗ったのですが、ターボエンジン特有の無過給領域の鈍さを、ほとんど感じない程度にまで軽減しています。このCVTを採用するだけで、他車の性能を大きく凌駕します。街中走行などでは特に効果が高く、排気量のハンデを全く感じない俊敏な走りが可能です。

ブレーキ
 バキュームサーボを組み合わせる過給器付きエンジンの軽自動車は、どうしてもサーボの効き具合が悪くなるため、ブレーキペダルがやや硬くなる上に、ブレーキ自体の効きも悪化しがちです。

この車では、やはりややスポンジーなペダルフィーリングが気になりましたが、それでもダイハツのものと比べるとはるかにまともです。しかし、同日試乗したUP!と比べると、ペダル踏み込み量と制動力の高まりの関係、ペダル操作感のしっかりさなどでは、「ああ、やはり輸入車は優れているな」と感じられました。

この原因は、おそらくマスターシリンダーの設定によるものでしょうが、国産車のブレーキは「スイッチのように操作して停車するためだけのブレーキ」になってしまっています。ブレーキパッドを変えることである程度対処できるとは考えられますが、「気になって車をおすすめするのに戸惑うほど」ではありません。しかし、スポーツモデルを名乗り、ハイパワーエンジンを搭載し、車体も重いことから、ブレーキの強化を望みます。

ステアリング
 お馴染みの電動パワーステアリングを搭載しています。操作感は軽く仕上がっています。もう少し路面の状態を伝えて欲しいと思いますが、スイフトで感じたような違和感はありません。

この車は車高や地上高、着座位置が高く、急な操舵では横転も考えられる(?)ため、コーナーではやや恐怖を感じます。もちろんメーカーでは十分な試験をし、横滑り防止装置も協調するでしょうから普通の運転では横転はしないでしょう。しかし、もう少しステアリングを重く設定し、急な操舵を控えさせるような設定でも良いと思います。

サスペンション

 自然吸気仕様で感じた、サスペンションが突起に乗り上げると「ドコドコ」と車体全体がたわむような振動は、この車ではかなり軽減されていました。となると、自然吸気エンジン仕様車で感じた振動の原因は、車体というよりはサスペンションやショックアブソーバーにあったのではないか、と考えられます。

サスペンション自体はかなり硬く、少しの突起でもかなり突き上げられます。ショックアブソーバーよりもスプリングが勝ったような印象で、ストロークそのものもかなり少なくされているようです。横転を防ぐ意味もあったのでしょうが、乗り心地はお世辞にも良いとは言えません。突起の手前では運転しながらも構えてしまうほどです。

コーナーリング時には、外輪のサスペンションが突っ張る印象で、横転に対する対処は十分です。しかし、なんとなくつま先立ちでコーナーリングをしている印象で、安定感は今ひとつです。しかし、他のフロントスタビライザーを省略しているモデルと比較すると、はるかに安心です。これを解消するためにはボデー形状を変えるしかありません。ワゴンRの難しい点です。

4人が十分に乗れる車ですが、後席に乗ってロングドライブというのはちょっとゴメンです。かつてのスターレットなどの、「ホットハッチ」を思わせる設定です。この点からも、N ONEなどとは対象としている客層が全く違うのでしょう。

ボデー

 スズキはこれまで高張力鋼板をあまり採用してきませんでしたが、最近は積極的に展開しています。このモデルでも採用部分が増大し、剛性はそのままに車重を減らしています。軽快な走りは、車重軽減の結果とも言えます。

内装は、このスティングレイグレードでは「ピアノ調ブラック」「黒銀の組み合わせによる、シルバーアクセサリー感」が強められています。今の女性(30-40歳代)は、こういう内装が好きなんだそうですね。女性女性したノーマル仕様のような内装は、むしろ嫌われるそうです。スバルのR1,R2は、そのあたりの調査が甘く、女性から総スカンを喰らいました。


この車は、いわゆるスポーティーな内装になっています。ちょっと黒すぎやしないか、と思うのですが、これも流行なのでしょうね。

 地上高、着座位置とも充分高く、乗用車として使いやすいものです。その一方で、コーナーリングでは不安感を感じてしまいます。荷物や人をたくさん載せて余裕で走れるけど、カーブでは怖い、そんな印象です。ボデー剛性は前述のとおり、前回私が感じた「たわみ」は誤りで、十分あると言えます。

四角いボデーと広いガラス面積から、視界は十分です。斜め後方の視界も良好です。安全運転には視界、良い傾向です。

ところで、鉄道関係の書物で読んだのですが、運転士の前の窓が大きいと、走行中に動く部分の面積が広すぎ、疲労に影響するのだそうです。目は無意識に動く部分を追うのですから、最もな説です。

この車の視界は非常に良く、走行中に動いて見える部分が多いことから、上記のことが思い出されました。

まとめ
 
 自動車評論的な表現をすると、「日本の法規制が生み出したガラパゴス車」とでもなるのでしょう。おっと、この「紋切り表現」も、そろそろ流行遅れですかね。

しかし、地域ごとに違った運転状況に合わせた進化形態とも言えます。坂道と渋滞が多く、地域によっては一人車一台となることから、ハイパワーで時には多くの人と荷物を積めて、というのは、なかなか便利な車と思います。

内装がなかなか若々しく、しかもセンス良くまとまっているのは良いです。ダテにCMにファッションモデルを使っていません。そのモデルさん達の年代層もやや高く、子育て中の「まだ老けたくない」女性の心を掴んでいます。車自体もそれに応える仕上がりになっています。

一方で、この車のネガティブな点は、乗り心地とコーナーでの安定感にあると思えます。特にN ONEと比べると随分と悪く感じます。いくら室内の容積が広くて使いやすくても、車は車、走行性能をおろそかにすることはできません。その点にお金をかけるのはホンダで、省略するのがスズキ、そんなことを思いました。

従って、この車が気になっている人は、必ず他車(ムーヴ)には試乗し、若干背が低くて対象から外していても、N ONEには乗ってみてください。

この車は、上記走行性能の件を除くと、「ちょっと元気な女子、男子」、「まだ未婚に見られたい女性」におすすめです。

参照して欲しい記事

トヨタ パッソ+HANA

日産 ルークス(スズキ パレット)
日産 モコ(スズキ MRワゴン)

ダイハツ ムーヴ(マイナーチェンジ前)
ダイハツ ミライース

スズキ パレット、ダイハツ タント(旧型)比較試乗

ホンダ N-BOX
ホンダ N-ONE

スズキ ワゴンR(旧型、試乗)
スズキ ワゴンR(旧型、乗車)
スズキ ワゴンR(FX、現行)

VW UP!
Posted at 2013/03/30 22:52:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | 試乗 | クルマ
2013年03月03日 イイね!

フォルクスワーゲン UP! 試乗

フォルクスワーゲン UP! 試乗 この日は、前々から気になっていた「フォルクスワーゲン UP!」の正体がどんなものか確かめるべく、試乗に行ってきました。このUP!(以下、UP)は、自動車ジャーナリストの間では大変評価が高いようで、中には「日本の軽自動車は、この車の登場でうかうかしていられなくなる」とすら言う人もいます。

実際には、自動車税や重量税、保険料金の点で登録車(いわゆる小型車)が軽自動車にかなうことはありません。「収入は低いけれども車が必要な人」が軽乗用車から、「規模は小さくても畑を作っている人」が軽トラックをやめてこの車を選ぶとは考えられず、軽乗用車は軽乗用車でも、かつてのソニカやセルボ、なんとかカスタムの類と比べられる車だとは思います。

理由はさて置き、輸入車を試せる機会自体が少ないため、じっくり味わうことにしました。

UPの位置づけ
 今でこそ「(エンジンの)ダウンサイジング」のトップを行くVWですが、同社の各車は大型化しては下位車種を新設定する歴史の繰り返しでした。

1974年にゴルフがカローラクラスの車として登場しました。当時世界中がオイルショックの影響を受け、急速に小型車に注目が集まっていました。日本車でも、ホンダのシビックが大流行の兆しを見せていました。当時月に1万台も売れていたスカイラインを手放し、シビックを買う人もいたほどです。ゴルフは、いつの時代にもいる「国産車はつまらない」という、人とはちょっと変わったことを望む人に売れていたそうです。

ゴルフは1980年代初期に二代目に移行し、やや大型化しました。背の高さは違いますが、アコードのハッチバックと同クラスになりました。初代ゴルフの層を補う形で、「ポロ」の輸入が始まりました。当時のヨーロッパ車は、エレクトロニクスを中心とした「ハイテク」の導入が遅れ、当時の国産車の感覚で言うと、「まるで10年前の車をそのまま持ってきた」感覚でした。「新車情報」でも、酷評されていたように記憶しています。

そのポロの反省からか、1994年にフルモデルチェンジされたポロは、当時の流行を受けて「超モダン」「シンプル」ないでたちで登場しました。2001年の次のモデルでは、その「シンプル」が反省された結果、ほとんど「小さなゴルフ」として登場し、かつての地位を「ルポ」に譲りました。そのルポにはGTIがあり、ワンメイクレースも行われました。新車情報で紹介された時に、その排気音の野太さに惹かれ、真剣に購入を考えた時期もありました。

 そしてそのルポがフルモデルチェンジされる形で、さらにこれから厳しくなる二酸化排出量炭素規制を受け、再びベーシックな車として、この「UP」が設計されている模様です。


エンジン
 直列3気筒のDOHC4バルブ999ccの自然吸気エンジンです。VWお得意の「直噴+ターボ」ではありません。3気筒ゆえ、独特な振動と排気のビートがついてまいります。もうお馴染みの、軽自動車特有の「ブィーン」という音質です。ごく低速、低回転域だけで走行する場合にはこの振動も音も伝わってきませんが、後述する「パワーが高まって気持ちが良い領域」では、特に排気音が聞こえてきます。

振動はかなり押さえ込まれており、トヨタのKRエンジンよりはかなり良く、日産のHR12DEにはやや劣る印象です。ちょうど、ホンダのS07Aに近い感じです。また、アイドルストップ機能が加わっておりますので、平時の停車時には特有の振動は感じられません。

また、後述するトランスミッションが、MTの変速とクラッチ操作を自動化したAMT(VWの名前では、ASG)であるため、アイドルストップが効かない時でも振動を感じません。というのも、駆動系とエンジンとが完全に切り離され、エンジンの振動が車体に伝わりにくいからだと思います。

AMTゆえ、トルクコンバーターはありませんから、エンジンの性能をダイレクトに感じられます。低回転時のパワーは、最近速くなった軽自動車に比べると明らかに低めになっています。タコメーターが小さいためによく確認はできなかったのですが、2000から2500回転を超えると、びっくりするほど力が増し、ターボはないもののターボでも効いたかのように感じます。



雑誌が低速トルク低速トルクと叫ぶものですから、低回転から高回転まで万遍なく回るエンジンが多い中、「ドラマチックな」回り方をするエンジンで、車好きには充分楽しめる特性ではないかと思います。おおよそ3500回転まで回しましたが、隣にセールスマンが乗っているため、高速回転時の性能はわかりません。

低速時のパワーは、発車と停車を繰り返す地域では、ちょっとまどろっこしさを感じるかもしれません。トランスミッションの性能のこともありますが、最近速度が落ちている都市地域以外では、交通についていくのに大変さを感じるかもしれません。具体的には、郊外のバイパス、首都高速のインターチェンジなどでしょうか。

自動車趣味の道具としての性能ではなかなか楽しいのですが、坂道が多いところにお住まいの方、せっかちな方などは、よくよく試乗されて、この性能が自分に合うかどうか、確かめたほうが良いでしょう。

アイドルストップ
 たしか、停車してからエンジンが停止したと記憶しています。ブレーキペダルから足を離すか、ステアリングを少し動かすことで始動が行われます。これまたたしか普通のスターターモーター方式で、始動時間は0.4秒級だと思います。

トランスミッション



 クラッチもトランスミッションも、MTを自動化したものです。詳しい構造は不明なのですが、クラッチは油圧、シフト・セレクト操作はモーターで行っているのかもしれません。ちょうど、年末に試乗した日産アトラスと似たような変速感覚です。

 雑誌などでは、「日本の交通事情にはちょっと合わないかもしれない」という書き方をしていますが、前述のエンジンの項目と同じく、「都市内の低速走行」と「田舎で後続車がいない場所」では、十分走行できます。

というのも、クラッチ操作もシフト・セレクト操作がゆっくりすぎるからです。ちょうど、運転教習中の車のような感じです。半クラッチの時間も長めで、ショック低減を優先しています。シフト操作も、特に1速から2速にかけての時に、まるでダブルクラッチでもしているのではないか、というくらい時間をかけます。しかも困ったことに、急発進をしようとしている時でものんびりと操作をしてくれてしまいますので、ショックは少ないのですが、「遅いなあ」と感じさせてしまうのです。

実際のMT・クラッチ操作では、「急いでいないときはショック低減優先、急いでいるときは素早い操作」とする人がほとんどでしょうが、このシステムは急いでくれません。また、コンビニの買い物などで急いでいる時に、店員さんがのんびりした人だとこれまたイライラしてしまうものですが、運転士の意図を感じてくれないところに問題があります。

これがトラックの「クラッチフリー」や、DSG方式では変速タイミングなどを設定できるのですが、このシステムにはありません。変速速度やクラッチ締結速度を、アクセル開度によって調整してくれれば、このシステムは気持ちよく使えそうです。

かつて国産車にもMRSに「SMT」という、クラッチもシフト・セレクト操作も油圧で行うシステムがありましたが、これに比べるとややシフト・セレクト操作に時間がかかります。

変速スケジュールは、1速から2速がまるでトラックのように早い時期に変速し、それ以上では意外に高回転まで回そうとしてくれます。ちょうど、スカイアクティブATに近い印象でした。

 また、マニュアル操作も可能です。操作はシフトレバーを前に倒すとシフトアップ、後ろに倒すとシフトダウンです。外人の体型に合わせているためか、やや小柄な私にはレバーが遠くてシフトアップがしづらかったです。マニュアルモード付きATに乗ると、前に倒すとシフトダウン、後ろに倒すとシフトアップ方式の方が使いやすいように感じました。

変速が行われる時には、当然ですがスロットル操作が自動で行われます。DSG方式以前にBMWが採用したSMG方式がそうでしたが、シフトアップの前には減速するように感じ、加速シフトダウン時には空走する期間が長い、という特徴的な状態はそのままです。シフト・セレクト操作は、ポジションセンサーの信号を見ながらモーター駆動、クラッチ操作もポジションセンサーの信号を見ながらソレノイドバルブで油圧を調整、エンジン回転数を目標にしながら電子制御、と、書いているだけでも長いように、電子制御とはいえ、のんびりしています。

 マニュアルモード時には、MRSもそうでしたが、レバーを動かしている最中にアクセルペダルを少し戻すとオートモードよりも素早く変速されるように感じました。このモードで運転すると、この車は痛快そのものです。「エンジンのパワーが高まる領域を外さないようにシフトレバーを前後させ、シフトが早く起こるようにアクセルペダルも連携させる」と、クラッチペダルがないだけのMT車として、走らせる楽しみを感じます。

 ところで、普通の3ペダル式でも良いのではないでしょうか??この種のシステムはトラックで採用されているとはいえ、クラッチが油圧式であった場合は、10年程度で寿命に達するものです。油圧を作るポンプか、その油圧を蓄えておく、「アキュムレーター」というタンクが故障するのです。まあ、実際にはその時にならないとわからないものですが、Y32セドリック・グロリアも、10年を経過したホンダ車のABSも、みんなアキュムレーターが故障しました。

ブレーキ
 踏み応えがしっかりしていて、踏み込み力で制動力を調整できるブレーキです。やや重い印象で、ペダルをしっかり踏む必要があります。ちょうど、プレマシーに似た印象で、かわいらしい外観とは裏腹なイメージです。

試乗ですので、いわゆるアイサイトと同等の「シティエマージェンシーブレーキ」は試せませんでしたが、ブレーキの印象は国産車と違う、と考えておいたほうが良いでしょう。

ステアリング
 電動パワーステアリングですが、国産車のよくできた車と同様に、センターはしっかり、そうだ力はやや重目にできています。これまた、プレマシーによく似た印象です。気になったところとしては、これも外人の体型を基本としているためか、ステアリングホイールの位置が高すぎるように感じます。ステアリングに位置を合わせるとペダルが遠く、ペダルに合わせるとステアリングが近くて上にある印象です。

サスペンション
 やや硬めながら、しなやかなサスペンションです。おそらく、相対的に減衰力が高いショックアブソーバーを使っていると考えられます。動き出しもスムーズで、突っ張ることはありません。車体の幅が狭く、やや車高も高いことから、山道ではややロールを感じるのではないか、と予想されます。もう少しスタビライザーやスプリングを固めても良いように感じました。

ドライブで山道にも行く人であれば、強化スタビライザーの類(あれば、ですが)を装着してもよいと思います。都市内走行では不要でしょう。

ボデー



 車輪同士の間隔も狭く、ボデー剛性には有利に働きますが、それを補って余る程ボデー剛性は高いように感じました。突起などを乗り越える場合でも、不快なボデーの振動を感じません。

スタイルのバランスは、ちょうどN-ONEのような感じです。幅は1640mmもありますが、室内の幅は決して広くありません。男性二名が横に並んで乗ると、かなり近さを感じてしまいます。フロントマスクの、「マンガの泥棒の口ひげ」のようなアンダーグリルは、まあ、好みでしょう。ちなみに、私は好きになれません。

内装は簡素そのものです。ここのところ内装の仕上げ技術が向上した軽自動車に比べると、寂しいものです。海外の車は、時々思い出したように内装にボデー同色部分を残すようにしますが、この車ではインパネ部とドア上部にこの部分があります。



雑誌などでは「ポップなデザイン」と書くものですが、赤系統ボデーの場合にはいつも視界の中に赤が有り、落ち着かない気分を味わうことになります。メーター内のマルチ表示部にも赤照明の表示部がありますが、私は運転士の目がつくところに常時赤色を置くことには反対です。赤色や黄色は警戒色かつ人間を興奮させる色なので、安全運転の邪魔になります。安全運行が求められる鉄道の運転室、お客様にくつろいでもらう客室には、長い間「灰緑ないしは若草色」シートには「青色」が使われてきました。昭和40-50年代こそ黄色が濃いクリーム色が使われましたが、それ以前も以降も人の心を落ち着かせる色を使っています。どうか、メーカーには再考を願います。

パワーウインドーは、「運転席からのリモート操作機能なし、後席はロックを外して後ろを少し開けるだけの換気窓」としています。割り切りといえば割り切りですが、後席は緊急時と考えているようです。また、内装はナビゲーションの装着を考えておらず、まだまだスマートフォンナビゲーションが一般的ではないので、この点からも都市内移動車の性格が見て取れます。

操縦系の部品配置は前述のとおり、ペダル位置、ステアリング角度、シフトレバーの位置などに少々難を感じてしまいます。

まとめ
 性能の上では、パッソマーチと同等のクラスにあります。しかし、緊急自動ブレーキがついているところが一般の人では気になるところでしょう。装備品は少々寂しいのですが、価格の点で輸入車を避けていた人には、入門モデルとして最適ではないかと思います。

また、エンジン特性やシフト操作の楽しさの点からは、運転好きな方にもオススメです。なかなか楽しいドライブフィールを楽しめると思います。自動クラッチ操作だけはどうにもなりませんので、メーカーの人がこのブログを読んで改善をしてくれるしかありません。メーカーの方、アクセルペダル操作量に応じた、クラッチ、シフト操作の調整ですよ!

ライバルとしては、ワゴンRスティングレイ、ムーヴカスタム、N-ONEのターボ、マーチやノートやパッソ、デミオあたりも入ってくるでしょう。「なんとかカスタム」モデルを幼稚に感じ、さりとてパッソは女子っぽく、デミオはスポーティーにすぎる、という女性、それに、奥様と車を共有しなければならない人で、MTが忘れられない人、MTには乗りたいけど、クラッチ操作に自信がない人にも良いでしょう。なかなか楽しい車です。

しかし、何度でも書きますが、「エンジンの低速での出力のなさ」「クラッチ、シフト・セレクト操作の遅さ」だけは、自信や乗る場所に合っているかどうかを、必ず確かめてから選ぶようにしてください。我慢して買うとイライラが溜まって、すぐに嫌になってしまうことでしょう。それではもったいないです。

参照して欲しい記事

トヨタ パッソ
トヨタ ヴィッツ
トヨタ ラクティス(1300cc)
トヨタ ラクティス(1500cc)
トヨタ オーリス
トヨタ スペイド
トヨタ アクア
トヨタ イスト
トヨタ MRS

日産 マーチ
日産 キューブ
日産 ジューク
日産 ノート
日産 モコ
日産 ルークス

マツダ デミオ(前期型)
マツダ デミオ(スカイアクティブ)

ホンダ N-BOX(自然吸気エンジン車)
ホンダ N-ONE(ターボエンジン車と自然吸気エンジン車)
ホンダ フィット(普通、ハイブリッド、RS
ホンダ フィットシャトルハイブリッド
ホンダ フリードハイブリッド
ホンダ CR-Z(その1)
ホンダ CR-Z(その2)
ホンダ CR-Z(その3)
ホンダ インサイト

ダイハツ タント(初期モデル)など
ダイハツ ムーヴ(前期型)
ダイハツ ミライース

スズキ ワゴンR(現行、助手席)
スズキ スイフト

VW ゴルフ(1.2トレンドライン)

Posted at 2013/03/11 02:07:51 | コメント(3) | トラックバック(0) | 試乗 | クルマ
2013年03月03日 イイね!

ソース焼きそば 134/17X ツバメ焼きそばソース フクスケとんかつソース ミス注文 と お好み焼き

 こうしてブログを書いていると、ミス注文が増えているような気がします。途中からソースのリストに印をつけているのですが、漏れが多いようです。しかしそれでも、前回と今回の印象が変わらないので、自分の評価軸にブレがないことに、ちょっと安心しています。



ツバメ焼きそばソース
 適度な酸味と塩気があります。甘さはやや感じる程度です。辛さはほんの少しで、ピリ辛にもなっていない程度です。香りはなく、塩気と酸味のバランスの良さを感じるソースです。これなら、焼きそばをおかずにご飯をおいしく食べられます。



フクスケとんかつソース
 クミンの香りを感じるソースです。甘さと塩気を感じ、酸味もあります。辛さは感じません。粘度が高く、麺によく絡むソースです。

前回の評価は、こちらを参照してください。



お好み焼き
 今回は指向を変え、上に乗せられた豚肉をよけたところを撮影しました。この通り、小麦粉でキャベツを「とじた」程度になっています。キャベツの水分がみずみずしく、ジューシーな仕上がりです。一種の「パン」になっている関東のお好み焼きとは全く違います。
Posted at 2013/03/04 00:38:56 | コメント(0) | トラックバック(0) | ソース焼きそば | グルメ/料理

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何シテル?   08/30 17:23
小さい頃、トラック野郎を見てトラックが好きになりました。その後「太陽にほえろ!」のカーアクションを見て、乗用車も好きになりました。カーグラフィックTVや新車情報...
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