2014年05月18日
……。ショックです。
知っての通り、CHAGE and ASKAの飛鳥さんが覚醒剤使用容疑で逮捕されました。
僕は昔からチャゲアスファンだったので、とても残念に思います。
古くからのファンの中には「信じられない」「裏切られた」と言っている人も居るようですが、僕は素直に残念だという気持ちです。一流のアーティストがどうして覚醒剤に走ってしまったのでしょうか……。
考えてみればアーティストが覚醒剤で捕まるというのは昔からよくある話ですねえ。
「捕まって名声を失うことが分かっていて何故やるのか?」「一度使うと止められないと分かっていて、何故やるのか?」「ファンのことを考えていないのか?」「これだけ情報があるのに、分かっていて覚醒剤を使う人の気がしれん」
ま、そのような声が殆どでしょう。
僕もそれらの意見を否定しないし、覚醒剤の使用を肯定する気もないですが、彼らの心境についてちょっと考えてみました。ただ否定するだけでは何も教訓が得られないですからねっ。
かなり昔の話ですが、超人気ロック歌手の尾崎豊さんが覚醒剤で捕まったことが有りました。ちなみに26歳で急逝した時も、覚醒剤の多量摂取が直接的な死因だったようです。
僕は特に尾崎豊さんのファンではありませんでしたが、当時、一人の友人が僕に
「覚醒剤をやって捕まったのにファンで在り続ける人の気が知れない」
と言われて、反論したことが有りました。その時に友人に言ったことをちょっと書いてみます。
若い人は知らないかもしれませんが(尾崎豊とブルーハーツは時代を問わず不朽だという説もありますが(笑))、尾崎豊さん(以下敬称略)は社会に対する反発の歌を多く歌っていました。
デビューした時も高校停学中であり、学校や大人に対する若者の気持ちを歌った歌詞が多く有ります。「15の夜」や「卒業」などは有名ですね。「サラリーマンにはなりなくない」なんて歌詞も有りました。
特に「卒業」の中にある歌詞、「夜の校舎 窓ガラス壊して回った」というフレーズはインパクトがあり、実際にラジカセで「卒業」を流しながら不良生徒たちが夜に校舎のガラスを割るのが流行ったりし、社会問題にもなった記憶が有ります。
そういった、若者視点から見た大人社会への不満や反発を歌ううちに、尾崎豊は「若者の代弁者」などとメディアで言われることになります。徹底的に大人の論理に反発した歌を歌って、ファンの間でカリスマとなっていったわけです。
そして、尾崎豊のアーティストとしての人気はうなぎ登りとなり、短い期間でお金も名声も手に入れてしまいました。
そうです。やがて尾崎豊自身が、あれだけ批判してきた大人になってしまったわけです。
事務所のスタッフもレコーディングスタッフも当然みんな大人で、自分もその中で仕事をし、大人たちの要望に応える立場になってしまったのです。
一度得た人気はとてつもなく大きく、もはや尾崎豊が新曲を出したというだけでCDは売れるのです。そしてレコード会社は商売ですから、尾崎豊に多くの曲を出すことを望みます。だって出せば必ず売れるんですから。
そしてある時、レコード会社の人が尾崎豊に言ったそうです。
「尾崎くん、次は「15の夜」みたいなやつを書いてくれないか?」
と。まあ、超ヒット曲の「15の夜」みたいな曲を作れば、またたくさん売れると考えたのでしょう。
でもこれには尾崎豊も悩んだそうです。尾崎豊のアーティストとしてのそもそものモチベーションは反骨精神だったでしょう。そして「15の夜」は、ある意味その象徴的な曲です。
「盗んだバイクで走りだす、行く先もわからぬまま」の歌詞で知られるこの曲は、文字通りに何も無い若者の心境を歌った曲です。
しかしながら今の自分は多くを持ち、いつの間にやら自分があれだけ否定してきた大人の論理で生きていることに気づいたのです。ずっと反発し、あれだけ反抗してきた大人に自分自身がなってしまったのでは?と思ったのでしょう。
しかしながら、普通の人はそれについて特に疑問を持ちません。誰でも大人になれば考えは変わるものです。そして大人になれば、自分の利益のために割り切ることも覚えます。
「俺も昔は何か色々なこと言って、社会に反発していたなあ。いやあ、あの頃は若かった。でも今はそんな気持ちを歌った曲のおかげで金も名声もあるし、離れないファンもたくさん付いている。普通にこれを維持していけばもう、将来安泰だ。ま、大人になるってこういうことなんだろう。そんじゃあ会社の利益のために、一つ「15の夜」みたいな曲でも書いてみるか」
もしも、そう思えていたら尾崎豊も悩まなかったでしょう。しかし彼はあまりに潔癖だったのだと思います。十代の頃に会場を埋め尽くすファンの前で叫んでいたことが、全て若気の至りだったことには出来なかったのでしょう。
僕は友人に「どうして尾崎豊は覚醒剤をやったと思うか?」
と聞かれて、「彼は潔癖すぎたからだろう」と言いました。
それを聞いた友人は、「潔癖だったら、なおさら麻薬なんかやらないだろう」と言っていました。
ですがそれは私を含め我々凡人の考え方です。彼は、ファンを裏切って大人の論理でアーティストとして生きるくらいなら、覚醒剤をやった方がマシだと考えたのではないでしょうか?その方が、まだファンを裏切っていないと……。きっと彼は、あまりに潔癖だったのでしょう。
もちろん、上記のことはすべて僕の推測です。真実は尾崎豊本人しか知りません。ですが、僕なら彼の行動をそう解釈しますし、もしこの通りなら覚醒剤に走った彼を理解できます。
話を戻しますが、飛鳥もとても真面目で、ノーテンキなチャゲとは対極的な性格です。チャゲアスのライブに行くとトークが結構あるのですが、飛鳥のトークからはその真面目ぶりがにじみ出ていました。まあ、トークの内容はこれからまたライブに行く人の楽しみのために言いませんが、
「そんなこと、客の前で言わなくてもいいのに……」
そう思ったことを覚えています。(まあ、そんなところも飛鳥の魅了なんですが)
そしてその真面目さ故に、飛鳥も精神的なスランプにハマっていたのではないかというのが、僕の推測です。もちろんだからと言って覚醒剤をやっていいという話にはなりませんが、自殺されるよりはファンはマシです。きっと飛鳥は死ぬほど苦しんでいたのではないか、と僕は推測しています。そう、彼の価値観の中でファンを裏切らないように。
飛鳥にしても尾崎豊にしても、我々凡人とは人種が違います。彼らは自分の名誉よりも優先すべきものを持つ、侍なのです。大きな期待を背負いながらも、妥協を知らない、真剣で誇り高い生き方をしている人達なのです。だから凡人の尺度で計って、彼らを否定するのが僕は好きではありません。
僕は飛鳥がカムバックしてきたら、両手を上げて迎えるつもりです。
頑張れ!!飛鳥!!
Posted at 2014/05/18 23:54:52 | |
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