峠のシエルパ訪問
碓氷峠鉄道文化むらに保存されている
電気機関車 EF63形訪問
EF63形
信越本線横川 - 軽井沢間の碓氷峠専用の
補助機関車としての役割に特化して
開発された機関車
このことから
別名「峠のシェルパと呼ばれていました
碓氷線(信越本線 横川~軽井沢間)の歴史はこちら
開発経緯
新線建設と並行して試作機を使用した性能試験により最終設計が行われ、
1963(昭和38)年3月から7月にかけて第一次量産車としてEF63形が12両完成した。
登場時、第一次量産車の外板は茶色塗装であり、
後に直流電気機関車の新標準色である青色に変更された。
EF63形は第二次量産車8両、第三次量産車4両、試作車(1号機)と合わせて
1976(昭和51)年までに合計25両が製造された
(うち2両は事故廃車、碓氷線廃止時には21両が配備)
EF63形は、横川-軽井沢間の66.7パーミル勾配を粘着運転するために
当時の技術力を結集して開発された碓氷峠専用の電気機関車である。
構造、装置
通常の空気ブレーキのほか強力な発電ブレーキ、
急勾配停車中の非常用転動防止装置として
電滋吸着ブレーキ・転動防止用ロックシリンダ・電機子短絡スイッチを備え、
さらに過速度検知装置(OSR)、電機子分路再粘着装置等、
急勾配の安全対策装置を備えていた。
また大容量の蓄電池を搭載し、
停電時でも空気圧縮器や保安装置を動作させ、
発電ブレーキの予備励磁電源として用いるなど、
勾配途中での長時間停車ならびに下り勾配運転再開を可能とした。
過速度検知装置(OSR)は下り勾配運転中に設定した制限速度に近づくと警報を出し、
制限速度を超えた場合は自動的に非常ブレーキを作動させる仕組みであった。
設定速度は「高」(旅客列車)で警報動作が35㎞/h、非常ブレーキが38㎞/h、
「低」(貨物列車)で警報が22㎞/h、非常ブレーキが25㎞/hとなっていた。
なおこの装置の作動のため、空転や滑走に影響されない正確な速度を検知するために
中間台車に速度検知用の遊輪が設けられた。
ED42形で実績のあった回生ブレーキが採用されなかったのは、
列車荷重の変動と架線電圧の変動の組合せによる速度変動防止ならびに
架線電圧の急変や停電時などでの安全性維持などの点で
発電ブレーキの方が有利と判断されたからであった。
なお運転整備重量108トン軸重18トン、
旧国鉄時代の電気機関車として最大軸重であったが、
この軸重も急勾配での粘着性能維持のためであった。
この軸重を支えるため、碓氷線には新設計での重軌道構造が採用されている。
また架線にダブルシンプルカテナリが採用された。
運用方法
碓氷峠を通過する列車には電車列車も含め全てEF63が連結されることになったため、
EF63の軽井沢方の連結器には電車とも連結可能な双頭連結器及び
電気ジャンパー連結器を備えていた。
過酷な実地試験の結果、
列車重量の制限の上でEF63形は2両ペアーで重連運用されることになった。
EF63は上り列車下り列車ともに横川寄りに連結された。
従って、横川から軽井沢に向かう下り列車(峠を登る)では列車の最後尾に連結されることとなり、
アプト時代と同じ運転形態となった。
アプト時代の電気機関車とは異なり、EF63には両エンドともに運転台があったが、
機関車のみでの回送運転時を除き通常の列車牽引では横川寄りの運転台が使用された。
ただし、碓氷峠での列車牽引で必要な運転装置は
横川寄り運転台に集中的に設置されていたため、
両エンドの運転台の様子は相当異なっていた
。このようなEF63特有の運転形態ならびに運転台の構造は
、66.7パーミル勾配がほぼ全区間で一方的に続くという
碓氷峠の特異な線形において
下り勾配逸走防止対策が最優先されたことからきていた。
これは碓氷峠で使用された歴代専用機関車共通の特色でもあった。
1997年10月1日に北陸新幹線高崎 - 長野間が先行開業したため
横川 - 軽井沢間の在来線区間は前日の9月30日限りで廃止となり
用途を喪失した本形式は在籍全車が同時に廃止された横川運転区から
高崎運転所(現・高崎車両センター)に転出となり1998年に廃車・廃形式となった。
保存車両
碓氷峠鉄道文化むらで4両が動態保存され運転体験ができるほか、
静態保存ならびにカットモデルを含むと全体で11両が保存されている。
11・12・24・25:碓氷峠鉄道文化むら内で動態保存
1・10・18:碓氷峠鉄道文化むら内で静態保存
18の横川側運転台は、CGによる運転シミュレータに改造され使用中
19:長野総合車両センターで静態保存
2:しなの鉄道軽井沢駅で静態保存
13:前頭部(2エンド側)のみ大宮総合車両センターで静態保存
22:個人所有で「碓氷峠の森公園交流館 峠の湯」近くに静態保存
碓氷峠鉄道文化むら内では、1,500Vを750Vに降圧させた環境ではあるものの
動態保存されている11・12・24・25を用いての運転体験が行われている。
すべて有料・予約制ではあるが、学科講習および実技講習を受け
修了試験に合格すると『EF63形電気機関車運転体験証明書』が交付され、
軌道上を走行させることが一般人でも可能
運転体験証明者名簿