
中国には「新大洲本田」と「五羊本田」という二つのホンダ合弁会社が存在し、それぞれから販売されるバイクには 独立標 と 联合标(連名ブランド) の二種類があります。
独立標:車体には「Honda/ウィングマーク」だけのロゴが付けられ、世界各国で販売されるグローバルモデルと共通することが多い。ブランドイメージの統一性を重視。
联合标(連名ブランド):車体には「Honda」と中国側ブランド(五羊WUYANG・新大洲Sundiro)の両方のロゴが付けられ、中国市場のニーズに応じた独自モデルを企画・開発できるのが特徴です。
この「联合标」体制から生まれた代表的なモデルのひとつが、今回紹介する NWT150 です。
NWT150 は五羊本田が開発した 150cc クラスのフラットフロア・スクーターで、一般的な PCX のように中央に高いトンネル(骨格部)があるタイプとは異なり、床面がフラットです。最も狭い部分でも 29cm の幅を確保しており、大きな荷物を載せることができ、通勤からビジネスユースまで高い実用性を発揮します。
惜しいことに SHAD SH40トップケースがちょうど入らないサイズ(笑)。
搭載される eW15 エンジンは、PCX160 の「eSP+」(157cc)をベースに、中国の150cc以下に対する購入税優遇政策に合わせてストロークを短縮したものです。
排気量は 149.7cc となり、最大出力は 11.4kW/8500rpm、最大トルクは 14.4Nm/6500rpm。PCX160(12.5kW/15Nm)と比べるとやや抑えられています。
また、名称も「eSP+」ではなく「eW15」と独自に改められており、ホンダの技術を基盤にしつつも、中国市場向けに最適化された联合标モデルならではの仕様となっています。
装備面では、7インチの TFT メーターが大きな特徴です。
スマートフォンに「五羊本田智联(WUYANG HONDA SMART LINK)」アプリを導入すると、スマホ画面をメーターにミラーリング表示でき、ナビゲーションなどの機能を利用できます。
この点は PCX にはない装備であり、联合标モデルとしての現地化された付加価値がよく表れています。
シート下収納スペースは28L、バッテリーを収める空間が必要なため、リード や PCX のような大容量メットインには及びません。
それでも 3/4 サイズのヘルメット 1 個と、グローブやレインウェアなどのライディング用品を同時に収納可能で、通勤や日常使いには十分な実用性があります。
リード(36L)& NWT(28L)
NWT150 のオールタンクは 8.3L で、リード と同じくフロント給油式を採用しています。燃費は 2.0〜2.3L/100km、 約43〜50km/L です。
このため、一度の満タンで およそ360〜415km の走行が可能となり、通勤から長距離ツーリングまで安心して使える実用性を備えています。
走行フィーリングについても触れておきましょう。エンジンのフィールや排気音は PCX やリード言える仕上がりです。扱いやすく、街乗りでも違和感なく使える点は大きな安心でしょう。
一方で、シャシー面ではやや特徴があります。ホイールベースは 1398mm と PCX より約 80mm 長く、そのぶん直進安定性は高いのですが、最小回転半径はやや大きめ。取り回しや細かい Uターンでは PCX や リード ほど軽快ではなく、「大柄スクーター感」を少し意識させられます。
さらに、安全装備についても PCX とは異なる特徴があります。NWT150 には前後輪をカバーするデュアルチャンネル ABS とトラクションコントロール(TCS)が標準装備されています。ただし採用されているのは本田がグローバルモデルでよく使う日立Astemo/NISSINのシステムではなく、中国の大手サプライヤーである航特(HANGTE)製ユニットです。制御の滑らかさや介入のタイミングは十分実用的で、コストを抑えつつ安全性を高めている点はローカル開発モデルならではの特徴と言えるでしょう。
総合的な装備水準から見ると、NWT150 はリード の上位車種にあたります。
それにもかかわらず、価格は 14,980〜17,980RMBに設定されており、 30.9 万〜37.1 万円に相当します。
すでにリードは中国市場で生産終了しているため、NWT150 は事実上、中国市場における リードの後継モデルという位置づけを担っています。
リアまわりは丸みを帯びながらも張りのある造形で、どことなく現行型ヤマハ NMAXを思わせる雰囲気があります。
Posted at 2025/09/07 16:27:02 | |
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