1998年7月△日土曜日、我がサバイバルゲームチーム「ラープ」の島田副隊長から、「隊長!戦闘に参加求む!このままでは我々はまた全滅してしまう!」
との緊急連絡が私の非常用緊急簡易無線機(PHSとも言う)に連絡が入った。
断っておくが隊長といっても、始めのミーティングの司会だけで単なる一人のゲーマーでしかない。
サバイバルゲームは春から秋の間、隔週で開催されているがここ数回我々のチームは負けが続いていたのだった。暇をもて遊んでいた私は断る術を知らない。
しかし、このところ家庭サービスを疎かにしていた私であったので困った。
我が家の最高司令官である奥さんに「愛してるから、愛してるから」という呪文を30
回も唱えまくり...やっとのことで出撃許可をもらい非常用簡易連絡無線機を持参し
て戦場へと向った。
兵士達の集合場所である某ホームセンターの駐車場から愛機(今話題の富士重工が作
った歴史に残る名車、スーパーチャージャー付きスペシャルマシン、スバル・サンバー
軽自動車)で飛び立ち、約20分で戦場に到着した。
そこは広大なベトナムメコン川流域を思わせる濃いブッシュ地帯であった。
(石狩川河川敷とも言うらしい)
我が軍は総勢14名からなる小隊である。
敵部隊もどうやら15名ほどの小隊らしかった。
本日は双方の陣地に掲げたフラックを奪取するフラック戦から開始だ。
それぞれが陣地に付くと数分で攻撃と守備体制の確認と作戦をねる。
やがて戦闘開始のホイッスルが響き渡り、即座にディフェンス、アタッカーに分散。
我が小隊は慣れた足並みでそれぞれ任務についた。
まずは左側面からのアタックだ。ふと横をみると、いつもノロノロとしたマー軍曹
私の悪友で味方撃ちの名手?!)が一目散に単独で右側面のブッシュから突破を試みて
いる...!?
いつもは食あたりをした中近東のダンサーのような奇妙な腰つきで進撃するのだが、
あいつ、いったいどうしたんだ?と思いながら私一人で彼の後を追った。
彼は茂みに飛び込むと一気に銃口を敵兵に向けるかと思いきや、一気にズボンを降ろ
し野○○モードに入ったのであった。(@_@)
(-_-;)ムムムム、神聖なフィールドで、しかもこの緊急事態?!にあって戦線離脱と
は!まったくもう...マー軍曹ときたらぁ..。
トイレぐらい済ませておけっちゅうの!
私は普段味方撃ちは間違ってもしないのだが、白いプリプリしたお尻をみて悪魔が
私にそっと囁いた。
「マー軍曹を撃て!」と。
この私に悪魔に逆らう力など到底持ち合わせているわけがない。
クレー射撃のようにしっかりと銃を構え、目標?!に向けて
「タン...タン...タン...」と
セミオートで3発発射した。
距離50mはあっただろうか、内一発のBB弾が緩やかな弧を描いて見事に日焼けの
してない白いお尻のホッぺにヒット!
「アゥ!.ヒッ、ヒットォ~!ヒットォ~!」
飛距離があるので、ジャイアント馬場の水平チョップより痛く無いはずである。
しかし、マー軍曹は次弾のフルオート掃射を恐れているのか、愛銃のスコープの中で、
前のめりにズボンを下げたまま慌ててマヌケな匍匐前進をしていた。
これを見て私の中の核爆弾が炸裂!その場で笑い転げたのは言うまでもない。
笑いを堪えながらマー軍曹に気づかれないようにそぉっと身を低く構え、静かに
反対側の敵のいるフィールドへと移動した。
そして島田副隊長と合流、敵が発砲するのを待つ....。
サバイバルゲームで勝つには、いかに相手に気づかれずに接近し、敵を仕留めるかが
カギを握る。
腰まであるブッシュの中で堂々と足音や銃声を聞かせながら進むのは自殺行為と言って
良い。チョット根暗的かもしれないが、子供のころ大人にしたイタズラの感覚に似てい
るかもしれない。
フィールドはブッシュの丈が高くて隠れやすいが、いかんせん歩くと音がする。
こんな時は他の兵士がフルオートで発砲している時の銃声に紛れて前進するか、ゲート
ボールの順番待ちをする老人よりゆっくりとした動作で這って行くしかないのである。
やがて開けた原野に到着。
敵のフラックまであと30m、これから先が一番の難所である。
スナイパーライフルを構えた敵兵がどこに潜んでいるかわからない。
それにしても暑い、気温は軽く30℃を超えているだろう。どこかの大統領が日本にテポドンミサイルを頭上を落とすと脅迫しても、この暑さだけは止められない。
ゲーム後の冷たいビールを飲み干す自分を想像した。
緊張の冷や汗と暑さの汗がゴッチャになってこめかみを伝う。
背中は既にベトベトだぁ。
シーンと静まり返ったブッシュ...「ホー、ホー、」と山鳩の声..
遥かかなたでフルオートの銃声...「ヒットォ~」の叫び声。
突然、すぐ横でボボボボボボボ、ガガガガガガッのフルオートでの銃撃音が!
☆×○■△@仝Ω...!
「やばい、見つかった、逃げろ!」私と島田氏は全力疾走で離脱行動に移った。
下痢便を我慢してやっと見つけたトイレに駆け込むような猛ダッシュ。
小高い丘の下まで退避。
トライアスロンを10往復したセントバーナードより呼吸が荒くなって窒息死寸前。
アルミのサウナスーツを十二単のように着込んだ、大食いタレント石塚氏のように
脂肪を上下にシャッフルしながらフンボルトペンギンのような姿で喘ぐ私。
コレステロールにコーティングされた心臓は限界にきていた。
島田氏もハスキー犬のようだ....(@_@)。
これだから、オイチャンゲーマーはつらい。普段の運動不足を呪った。
しばらくの休憩の後、呼吸を整えてもう一度ブッシュへと踏み込んだ。
再び緊張感が背中を走る。
どこから弾が飛んでくるかわからない恐怖と戦いながら中腰で前進。
目がカメレオンのようにバラバラに動いて欲しいと思った。(怖い)
気分はプラトーン(一昔前話題になったベトナム戦争映画)の主人公?。
カメレオンの目をしたヒーローなんていないよな。
ブッシュが開けた。
ここからの前進は非常に危険を伴うため這って進んでいくしかない。
二日酔ののシャクトリ虫より遅い...。5mも進んだであろうか。
すぐ横で「ミシッ、ミシッ、」と草を踏む足音がする。
我々は小学校の校舎の裏にある二宮金次郎のように動かなくなっていた。
亀がコウラから首をだすようなゆっくりとした動作で頭をあげると、味方の本間氏で
あった。
「ホッ...」本間氏がニヤニヤ笑いながらこちらを見ている。
彼は確か今年からゲームを始めた新兵だ。
彼が3mも歩いただろうか..「伏せろ!」と言う間もなく11時の方向から敵の
フルオートの銃声が..ババババババババッ!
「ぐぅ、ヒットー!」遭えなく彼は戦死した。
(言わんこっちゃない米国製パイナップルジュースより甘いっちゅうの。)
その銃声を聞きつけた我々も黙って見ているわけがない。
飯田氏と敵の銃声のする方向に一斉射撃に出た。
ボボボボボボボボボ、ガガガガガガガッ...ダララララララ、激しい銃撃戦だ。
敵と銃火を交える瞬間がたまらなくスリリングで楽しい。
テレビゲームに夢中になっているオボッチャマには絶対味わえない楽しさだ。
ンガガガガガ、ボボボボ、パシ、パシ、パシン、ガガガガガ、ボボボボボボボッ、カカカカ????
弾切れである。
腰のマガジンポーチから予備マガジン(300連)を取りだし、マグチェンジをする
瞬間、頭にペチ、ペチ?!。敵の弾が私の後頭部に数発ヒットした。
脳みそ「バーン!」である。
「ヒット~!」無残にも戦死。隣にいた島田氏も背中にフルオートを食らい
ヒットコールを叫ぶ。
両手を上げて立ち上がるとまわりには5人も敵兵がいた。
私を撃った兵士はマイクタイソンを叩きのめしたような得意げな顔。
完全に囲まれていたのだ。これでは勝てるわけがない。
しばらくするとタイムアウトを知らせる笛の音が青い空に響き渡った。
死体置き場と呼ばれるセーフティーゾーンに重たい足取りで戻るとそこには早くから
戦死を遂げた?!マー軍曹がいた。
マー軍曹はゲームが始まったばかりだというのに、もう焼肉の準備をしていた。
食べることに関しては抜かりの無い奴だ。
するとマー軍曹が私に気づき、話し掛けてきた。
「セブンさん、随分長生きしたねぇ。俺は激しい銃撃戦に会って早くから戦死だよぉ」と言い放った。
(こいつぅ、またホラ吹いてぇ)
「ああ、そうだったのぉ。 さっきはやけに張り切って突撃したのに残念だったねぇ」とだけ言って、軍用車に積んであるビールを取りに行った。
後から冷たいビールを飲みながらあの白いお尻を思い出してビールを吹き出したのは
絶対にナイショである。