思えば去年の邦画は特撮やアニメの映画がずいぶん話題になりましたね。
シン・ゴジラ、聲の形、君の名は。
その中でクラウドファンディングで2015年当時、映画ジャンルとして最多人数、最高額記録を樹立し、出資企業が動き出して6年越しの製作が軌道に乗ったアニメ映画がある。

それが「この世界の片隅に」。
去年から観たいと思っていたけど、この田舎の片隅にはなかなか上映する映画館が無く、名古屋茶屋のイオンまで出張るのも週末の23号の渋滞を考えると面倒だなあと思っていたところ、今年になってから津のイオンシネマで上映するという。
今日、ようやく観に行く事ができた。
クラウドファンディングを募集してた頃に少しでも協力したいと思ったが当時は自分の自由になるお金が一銭も無かったので協力できなかった。
こうの史代さんが07~09年にかけて連載していた漫画を2010年に監督がこうの氏にアニメ化をオファー、正式に製作決定が決まる前から監督は当時の広島や呉についてのリサーチを始める。
たとえば当時の広島の街並みを再現するのに「大正屋呉服店」を描こうとすると路地を挟んで手前の「大津屋モスリン堂」という店を描かねばならないが、この店の写真が無い。監督は現地に入って当時を知る人々から徹底的にリサーチして昭和のあの時代の広島の街並みを再現した。
また、主人公のすずさんが夫の周作と大和の呉軍港入港を見る場面、この日付を大和の行動記録から昭和19年4月17日と特定。日付が特定できれば当日の天候もわかり、実際の昭和19年4月17日の呉が映像として再現された。
姪っ子と呉軍港を見ていて姪っ子が「大和がふたつおる。いっこは武蔵じゃ」と言う場面も、当時大和と武蔵が呉にいたことが記録されている。
このように時代背景を細かく再現したことで、当時に生きていた人々の日常の姿が説得力を持って僕たちに体感させられる。
既存の戦時中を描いたあまたの映画やドラマでは、市井の人々は日々空襲におびえ、欠乏する物資に困窮し、絶望のふちに立たされた姿ばかりが強調されてる感じだったが、この映画ではそんな大変な時代でありながらも普通に生きようとする人々の姿が活写されている。物資が無いなら野草
を利用しよう。楠公飯を作ってみよう。工夫してご飯のかさを増やそう・・・。
大変な時代でも普段と変わらぬ日常を紡いでいこうとする人々の姿。
そんな世界に生きてる天然ボケな主人公のCVをアテてるのん(「あまちゃん」の能年玲奈)の脱力系の声が合ってるんだ。
そんな戦時中であっても変わらぬ日常を生きようとする人々にも、戦争の現実が残酷に忍び寄ってくる。
ついに始まる呉への絶え間ない空襲、
普段と同じある夏の日の空に、突如対空戦闘ラッパが鳴り響き、軍港の軍艦や山の上の高角砲が発砲。瞬く間に青空が砲煙で満たされる。
程なくして高角砲弾の破片がバンバン降ってきてそこいらじゅうをえぐりまくる。
その頃になってようやく鳴り響く空襲警報・・・・・。
こんな生死が日常になった日々の中で様々な大切なものが失われていく。そして広島への原爆投下・・・。
15日の玉音放送を聞いたすずさんが、戦争が終わったと安堵する人々と違って抑えきれない感情を爆発させる。あの天然ボケな彼女が怒りをあらわにする・・・。
前半の、厳しい状況ではあってもあれこれ工夫して日常を維持しようとするすずさんや他の人々、苦しくても笑い、少しでも日常を維持しようとしていた場面に対し、昭和20年6月以降、終戦までの苦しい描写が胸に突き刺さる。
それでも夫に「この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう」
大事なものを、人々をたくさん失い、自分自身も失った彼女がこう言って戦後を生きていこうとする姿にとても感動しました。
劇場では泣かなかったけど、こうして内容を思い返しながら日記を書いてたらちょっと目頭が熱くなってきた。とても良い映画でした。未見の方はぜひ鑑賞していただきたい。
そんな映画でした。
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2017/02/19 00:07:22