
RMLというイニシャルを見てもどういう意味なのか予想するのは難しいかもしれない。しかし、この3文字は重要な意味を持っているのだ。
レイ・マロックは、1958年のマロックU2レーシングカーを製作したアーサー・マロックを父に持ち、アストンマーティン(ニムロッド)や日産のル・マンカーの製作・運営を経て、ツーリングカーに進出、複数の有名メーカーにワークスとセミワークス・レーサーを製作したレーサー兼コンストラクターである。
その後、レイ・マロック・リミテッドはRMLグループ社となり、一流のOEMのために多くのハイエンドエンジニアリングを生産している。RMLは、50年代後半に活躍したイタリアの有名なスポーツレーサーを模した独自のマシンを製作し、その実力を披露しているのだ。
ミルブルック試験場を訪れ、30台ほど生産される予定のカー・ゼロを試乗したとき、レイの息子マイケルが、このテーマを選んだ理由を説明してくれた。
「最初はハイパーカーを造ろうと思ったのですが、ハイパーカーは市場が飽和していますし、正直なところ、サーキットを走っていないときに運転しても楽しいとは思えません。そこで、時速200kmで走らなくても、公道で楽しめる、さらに最近の車には欠けているドライバーとの一体感が感じられる車を造ろうと思いました。また、身長180cmの私と、もう一人同じくらいの体格の人が一緒に乗れて、なおかつサーキット走行でヘルメットをかぶれるだけのスペースも必要だったのです」
SWBは575より30kgほど軽いため、0-60mphは4.1秒、最高速度は180mph(時速約290km)と推定される。低音はあまり出ないが、弦楽器に例えられるような「トップエンド」的なノイズだ。パワーとトルクの数値は工場出荷時のままであり、後者も十分なものであるため、非常にバランスよくチューニングされた1960年代のエキゾチックを運転しているような気分になる。
7リッターV12エンジンに火を入れると、騒々しさとは無縁の、心地よいサウンドが響く。ミルブルックのガレージから走り出してみると、SWBは驚くほど簡単に操縦できる。パワーアシスト付きのステアリングは、低速域だともう少し重みがあったほうがいいかもしれないほどだ。RMLは、実はすでにこの件に取り組んでいる。
ミルブルックの「アルペンルート」は、突然の山頂や急な傾斜、ヘアピンコーナー、タイトなバンクコーナーなど、文字通りスイッチバックで、その容赦のなさでよく知られている。しかし、SWBには程よい安心感があり、18インチリムに装着されたZR規格のロープロファイルピレリが期待以上の快適な乗り心地を実現している。マイケル・マロックに、リビルトされたばかりのグラツィアーノ製6速ギアボックスのギアチェンジはやや硬めだから気をつけてと注意されたが、金属フレームのゲートをカチッと通過することで、”本物の時代”の雰囲気がより増した。
不満な点はひとつだけ。ただ、これは重要なことだ。575Mのワイドトレッドのために必要な、ワイヤースポークの偽合金にどうしても納得がいかない。せっかく高価なビレット合金から削り出したのに、ハルフォードのプラスチックトリムのようなビジュアルになってしまっているのだ(マイケル、ごめんなさい!)
ディープディッシュのボラーニワイヤーはフェラーリ250の美学に欠かせないものだが、RMLではそのデザインを忠実に再現することはできないし、したいとも思っていないそうだ。マイケルは、RMLのSWBでいちばん満足できていないのはホイールだと言いながら、他のどんなスタイルもうまくいかなかったと語る。やはり、もう一度トライしてみる価値があるだろう。
このディテールが気にならず、RML社が30台製造する予定のSWBの、1台に対して135万ポンドと付随する地方税が払えるのなら、私は迷わず「買うしかない!」と言うだろう。エンジニアリングの深さと製品の質の高さは群を抜いており、結果として、いつでも、いや毎日でも遊ぶのに躊躇しない“おもちゃ”となるだろう。
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2024/04/15 17:28:46