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2025年10月01日 イイね!

生成AIを使った日産の次世代自動運転(Wayve協業)

日産から生成AIを使った「次世代プロパイロット」のデモ走行が公表されています。

日産、英国Wayve AI採用の次世代プロパイロット(CarWatch, 2025.9.22)
日産プレスリリース(2025.9.22)
五味やすたかさんのレポート動画

いや凄い!
デモ走行の場所は、銀座-新橋の、ものすごく「わちゃわちゃ」したムヅカシイ道路です。配達車が止まっていて荷物を出し入れしているし、横断歩道は応勢の人が赤になっても渡ってくるし、駐停車を避けるために複数車線をまたがって走行しているし、すり抜けバイクは沢山いるし…

こんな一般道でも安全に手放しフル自動運転できるようになったんですね!

驚きポイントをまとめるとこんな感じです。
① 生成AI(フィジカルAI)を使った実用的なAI自動運転
② Wayveと協業したのは昨年(2024年春)。そこからわずか1年足らず
③ 日本の道路向けチューニングはわずか3か月
④ 車載搭載できる小さな生成AI(クラウド接続不要)
⑤ 高精細地図が不要。既存のカメラ+センサでフル自動運転できる

すべて、生成AI(フィジカルAI)だからこそ実現できたわけで、いや、生成AI(Transformer)の万能っぷりがスゴすぎます。


仕事柄AIの専門家なので解説すると…

協業相手の Wayve は、イギリス・ケンブリッジ大学(世界トップの超優秀名門大学の1つですね)発祥のスタートアップです。ケンブリッジ大は Vison Computing が強いので成程とうなづけます。2017年ごろからAI自動運転の研究を始めてます。

生成AIの実装手段は複数ありますが、最も使われているのが「LLM(大規模言語モデル / Large Language Model)」というモデルで、その中核が「Transformer」という複数の数式が組み合わされたアルゴリズムです。
Transformer(さらにその中核が Scaled Dot-Product Attention というメカニズムなのですが)は、あらゆるデータを細分化(トークンと呼びます)して与えれば、それぞれのトークン同士の出現確率を演算させることで「このトークンの次に出現するのはこのトークン」という「次のトークンの出現予測する」という動きをさせることができます。(論文1論文2論文3

数千億~数兆個のトークン同士の全ての関係性(出現確率)を計算すると、その結果、LLMは学習に使ったデータセットの全体が何を意味しているのかを理解(把握)できるようになります。例えば、入力データとして、ありとあらゆる文書(数万冊分の文書)をトークン化して学習させると、「言語そのものを理解」できるようになります。それがいま皆さんが使っている ChatGPTのように「自然言語で質問すると、なんでも自然な文章で応えてくれるAI」になります。

入力するデータを「車から撮影した交通状態の映像」+「その時の車の運転操作の数値データ」+「どうしてそういう運転をしたのかの言葉による説明」にし、それをものすごく大量に収集して、全て小さなトークンに分解して、LLMに学習させると、LLM自身が「運転とはこういうものだ」ということを「理解」するようになります。
その状態で、例えば「左から物影が動いた」という映像データが入ってくると、「次に最も確率が高いトークン」として「ブレーキを踏む」という「行動トークン」が知識から選ばれてきて、「車を制動させる」という運転アクションが実行されます。これが生成AI(LLM)による自動運転の仕組みです。
Wayveがすごいのは、このトークン化のメカニズム(VLAM:Vision-Language-Action Model)を作り出したことです。(トークン化が超絶ムヅカシイのです)

このような生成AI(LLM)の応用は、「フィジカルAI(Physical AI)」または「エンボデイドAI(Embodied AI)」と呼ばれています。「物理現象(Physical)を理解しているAI」という意味です。


LLMのさらに凄いところは、「2段階の学習」システムが特長だ、という点です。最初の学習では、膨大なデータをLLMにぶち込んで、全てのトークンの関係性(出現確率)を学習させるフェーズ。これを「PT:Pre-Training」と呼びます。
2段階目は、PT済みのLLMに、数千セットの「固有の学習用データ」を与えると、LLMはその固有の状態に合わせたモデルに変化する、という仕組みです。これを「FT:Fine-Tuning」と呼びます。
言い換えると、PTは、小学生・中学生の基礎学力を勉強するもの。FTは高校・大学の専門教科を勉強するようなものです。医学用のデータをFTで与えると診断ができますし、法律用のデータを与えると弁護士のような助言ができるようになります。つまり、最初からそれぞれの専門領域に合わせて膨大な学習をさせる必要はなく、PTでは基礎部分を、FTでそれぞれの専門に合わせた少ないデータで学習させれば済む、という利点があります。

この仕組みを使って、Wayve でPTされた「運転の基礎」を学習したモデルを日本に持ち込んで、日本の公道の状態や、標識、日本ではどういう運転をするのか、といった、わずか数千セットのデータを FT (カスタマイズ)するだけで、たった3か月で、銀座や新橋のようなとってもメンドクサイ公道を走行できるようになった、というわけです。まさに LLM の真骨頂を活かした使い方です。

もう1つ凄いところは、WayveのフィジカルAIは、デスクトップPCで動くような、性能が低く安い GPU で動作している、という点です。皆さんが使ってる ChatGPT (GPT-4) や GoogleAI (Gemini)、Claude3 は、クラウドの数万個のGPUサーバを並列動作させて動いています。毎月数百億円の電気代で動いてます。これで数兆個のパラメータを使って処理されてます。(だからどんな質問をしても答えを出してくれるわけですけれど)

一方で、Wayve のフィジカルAIは、映像解析する8億パラメータのLLMと、全体解析する30億パラメータのLLMを組み合わせて動いてます。数兆個のパラメータに比べれば1000分の1以下の演算なので、性能が低く安いGPU(多分数十万円くらい)でも動くわけです。これだけの装置で、一般道のフル自動運転ができてしまえる、というのが驚愕です。こういうLLMを SLM(Small Language Model)と言います。

フィジカルAIは、スバル・アイサイトや、日産・プロパイロット1.5 やプロパイ2.0とは、根本的に自動運転へのアプローチが違います。アイサイトやプロパイは、①映像解析し、②人が与えたルールに従って、③処理(運転操作)をする、という仕組みなので、あらかじめルールを与えていないと何もできません。(こういう従来型AIを、識別系AIと言います)

一方、フィジカルAI自動運転は、AIそのものが「運転とはこういうものだ」という概念全体を理解しているので、センシングした情報(例えばカメラで前方に何かを発見したとか)から、「このまま運転していると次にどういう運転操作をすべきなのか?」という「次に実施すべき最も確率の高い行動」が選択されるようになってます。まさに「ナイト2000の K.I.T.T. の世界」ですね。

日産では2027年に実車投入すると言ってます。11台のカメラ、5台のミリ波、1台のLiDARを搭載し、GPUチップも搭載しないといけないので、おそらくシステム全体で100万円-150万円アップと予想します。そうなると高額車種しか搭載できないので、次期アリア、フルモデルチェンジ版・エクストレイル、エルグランドのオプション搭載、ってことになるんでしょうね。
実車が販売される頃が楽しみです。
Posted at 2025/10/01 11:53:11 | コメント(0) | トラックバック(0) | XTRAIL | クルマ
2025年09月12日 イイね!

発電機のリコール

三連休前の9/12に深刻なリコールが出ました😰

https://www.nissan.co.jp/RECALL/DATA/report5714.html
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/goonet/trend/goonet-265149

車番3桁から16000番台の初期ロットで、ウチもモロ対象です😭

発電機ステータの絶縁ワニス量不足でショートして発電機が機能しなくなるって致命的。

発電機はエンジン直結なので交換修理にはエンジン取り外さないといけない。一連の対策作業には2, 3週間かかるでしょう。結構な大ごとです😮‍💨

これまで「亀マーク」が一度出てますが、その時は原因不明でした。以降、5万キロ走ってますが今のところ亀マーク出ていません。

でも、絶縁ワニス不足なら経年とともに障害が出やすい。走行距離があるので心配です。

それにしても発表タイミング遅い。
初期ロットの多くは7月〜9月に3年目車検を終えてます。せっかく車検に行ったのに、またディーラー予約して入庫しなきゃいけません。
リコール発表が6月なら車検の時に発電機のチェックも同時にできたのに🤬

三連休は遠出する人も多く、休み明けにディーラーに連絡取るしかない。

万が一修理対象なら長期入庫。
日産東京は車検時の代車は有料がデフォなのですが、今回のようなメーカー責任の修理でも有料対応なのかしら?
不安しかありません…

Posted at 2025/09/13 16:35:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | XTRAIL
2025年08月23日 イイね!

マイナーチェンジ

エクストレイル国内マイナーチェンジ版の発表がありましたね!
メディア記事や評論家のyoutube動画を色々観て楽しんでいます。

日産公式ページ
MoterFan (2025/8/21
CarWatch (2025/8/21)

藤トモさんの試乗動画
ワン速さんの試乗動画

個人的に気になった点をつらつらと…

【外装】
・ポジショニングライトのデイライト化は羨ましいです。BMW/X4/F26には特徴的な意匠のデイライトがONにでき、見た目もデザインも良く安全性も高くて重宝してました。T33のライトも良いデザインなので、デイライトで走るといい感じになりますね。

・前フォグは廃止になりました。個人的には無くても困らないだろうな、と思います。初期型の標準フォグは小さく光量もなく、あまり明るくなりません。それなら最初から無くコストカットし、どうしても必要な人は社外版のフォグを付ければいいと思います。

・グリルのブラック一色はスッキリしてて良いですね。初期型の銀のラインは個人的にも無くても良かったんじゃないかと思ってたのでMC版は良いと思います。
第3世代キャシュカイのような鎧デザインもカッコイイのですが、そこまでの変更にはコストが掛けられなかったのかもですね。

・後方ターンライトのLED化は良かったですね。ターンライトの社外品は内蔵抵抗が発熱するのでウィンカーを切るたびに冷却用ファンの音がうるさくLEDへの交換を躊躇しがちです。最初からLED専用になってれば便利ですしね。

・後退灯、ナンバー灯がLED化されてないですが、ディーラーオプションで用意してディーラーの売上貢献させる作戦なんでしょうね。社外品でもDIY交換できるので困りはしません。

・全グレード標準18インチ。19インチはディーラーオプションにしてディーラー売上貢献という作戦ですね。18の方がホイールは軽くなるので燃費は少し良くなるのでしょうね。また18の方がエアボリュームがあるので、突き上げは18の方がマイルドになると思います。SUVなので18でも見た目は良いと思います。

【内装】
・本革シート色がブラウンと黒から選べるのは羨ましいなぁ。初期型のタンカラーは明るくて好みではなく、黒を選びたかったので合皮(テーラーフィット)にしたのですが、最近、劣化で白い粉が吹いたような問題が出てしまって困ってます。黒本革が選べてればそっちにしたのになぁ。

・ダッシュボードポケットの上の「木目調」がダークブラウンになったのも良いなぁ。初期型は黒に木目調なので全然目立ちません。ここはダークブラウンの木目調の方がワンポイントになるので、その方がいいですよね。

・ハンドルは本革ではなく合皮(テーラーフィット)に変更になったそうです。これは今の初期型の方が良いですね。ハンドルはずっと手に触れる部分なので、ここが合皮だと気分も下がってしまいます。

・トリプルゾーンエアコンが廃止になったそうです。まぁ、ウチも後席のエアコン温度だけ変えて運用することは無いので、付いて無くてもいいのかな、と思います。後席が寒い場合は風量を落とせますしね。

・後席のアームレストを倒した時、相変わらずラゲッジルームが丸見えです。ここはふさいでほしかったな。

・シートベンチレーションは付きませんでした。シートの構造を全面的に作り直さないといけないし、ダッシュボードの配置や制御SWも新規開発が必要になるので、そこまでの改造コストを掛けられなかったんでしょうね。最近は夏場の車内高温は大変なので、この価格帯の車にはシートベンチレーションの標準装備は必須だと思いますけどねぇ。

【Googleナビ】
・NISSAN CONNECTナビがGoogleビルトインになりました!これは羨ましい。初期型のナビはほんと出来が悪くて、個人的にはほぼ使っていません。

目的地の検索性能がとにかく使いづらい。ほしい情報がすぐに検索で出てきません。ナビをさせるとその性能も悪く、高速道路と一般道が立体で重なっていると途中で一般道を案内し始めるなど、道路追随アルゴリズムがダメです。渋滞情報も到着予測も精度が悪い。音声操作も全く誤認識が多くて使えません。

特に使えないのが「地点登録・編集」です。車内でナビを使わないと登録・編集ができません。BMW/X4のidriveはPCで地点編集ができ、そのファイルをUSBでナビに読み込ませるという使い方ができました。
普段よく行く場所の管理や、旅行に行くときなど重宝してましたが、初期型NISSANナビはホント使えないです。

・GoogleMAPと同じ機能が使えるのはホント良いですね。検索性能は素晴らしいし、音声認識も抜群です。同じgoogleアカウントであれば、スマホやPCで地点登録しておけば同期(共有)できるし。

・運転席LCDにも常時地図が表示されるようになったのは羨ましいです。いまだと純正ナビで案内してないと地図が出ないですが、表示される地図がチープで分かりにくい。GoogleMapの案内地図は小さいスマホ画面でもわかりやすくできてるので、運転席LCDに表示させてもわかりやすそうです。

・気になるのは、スマホ版GoogleMapを使うとT33の車幅ではとても通れそうにないとんでもない道を案内してきますが、そこは改善されてるのかな?企業向けに出荷されるGoogleMapなので、車幅考慮とか無料版にはない機能アップがされてるんだろうなぁ。

・Google音声認識では「エアコン操作」などもできるようで、これもすごいですね。ネット接続して音声認識させると通信ラグがあるだろうから、車載システムだけで音声認識ができるということですね。ホントすごい。

【アラウンドビューモニター】
・360度好きな方向から見えるのは良いですね。特に狭い駐車場所とかで、前後左右の気になるところに障害物がないかを確認したいことが多々あるので、これはとても便利そうです。

・インビジブルビューというのも良いですね。水たまりなどがある場所だとそこは避けて通りたいとかあるので、重宝しそうです。

【駆動系、走行系】
・駆動系や走行系は初期型と変わっていないそうです。個人的には橋げたのつなぎ目などでの「突き上げ処理」があまり上手ではないと思ってるので、サスペンション周りは見直しされていてほしかったですが、その辺りの開発修正コストはかけられなかったんでしょうね。

・引き続きVCターボエンジンが搭載です。第3世代版1.5Lアトキンソンサイクルエンジンへの変更はフルモデルチェンジのタイミング(3年後ぐらい?)なんでしょうねー 第3世代e-Power版キャシュカイが相当静かだそうなので、今後に期待大です。

【NISMOモデル、ROCK CREEKモデル】
・個人的には走り屋でもないし、オフローダーでもないのでこの2種に食指は伸びませんが、今回、標準版、ハイセンスなAUTECH、走りのNISMO、オフロードのROCK CREEK と、好みに合わせて選択肢が増えているのはイイと思います。

残念ながら機能面でのフルモデルチェンジが今の日産の体力ではできないので、趣向に合わせたバリエーションに変化があるのは、良い展開戦略だと思います。

・NISMOモデルは、前後モーターへの出力チューニングがされていて、若干、FRっぽい制御になってるのだそうです!
BMWでもFRベースの四駆を乗っていたので、FRの良さはとても良く分かります。今の初期型T33も、SPORTモードにすると若干FRっぽい駆動になるのが楽しいですが、NISMOモデルは標準でFRっぽい制御だそうなので、これはFR好きにはたまらない選択になるかもしれません。

・ROCK CREEKモデルの外装色は、オレンジのアクセントが良いですね!いかにもオフロードを走破します、という雰囲気を出しつつ、オレンジのワンポイントがおしゃれです。こういう配色はちょっといいなぁ、と思います。


久々に国内版エクストレイルではいいニュースと思います。
人気が出るといいですね。
Posted at 2025/08/23 18:38:04 | コメント(0) | トラックバック(0) | XTRAIL | クルマ
2025年08月16日 イイね!

ウインカーレバー操作で指が滑る問題

T33でウインカー操作する時、レバーの先で指が滑って上手く操作できないことがあります。

右手薬指と小指でレバー操作するのですが、レバーがあと1cm長ければ!と思うことが多々あります。
しばしば滑ってしまうので、なんでだろ?と思ってたら、ふと思い当たる節があり🤔

ずっとBMW右ハンドル車に乗ってました。ウインカレバーは左に付いてて左手でウインカー操作してました。

右ハンドル車は、シフトレバー、idriveジョグダイアル、ダッシュボードの操作は全て左手になります。
左手はハンドルから離して操作する癖が付いてて、ウインカレバーもハンドルの上で左手をスライドさせて、左手人差し指、中指でしっかり操作する癖が付いてました。その間、右手はハンドルから動かず。

T33になりウインカレバーは右に。でも長年の癖で右手はハンドル2時3時の間から動かず、右手の親指と人差し指はハンドルをホールドしたまま、薬指と小指をレバーに伸ばしてウインカ操作してました。で、レバーの先にしか触れられず滑っていたのだと思います。

そうか… 左手でハンドルをホールドして、右手はハンドル上を滑らせて右手人差し指、中指でしっかりレバー操作すれば良かったのか 😅

意識して試してみたら右手中指でレバーをしっかり操作でき滑らなくなり。

左ウインカレバーから右ウインカレバーに変わってレバー操作の手の切り替えは意識したんですが、ハンドルホールドの利き手の意識はなかったなぁ。

Posted at 2025/08/16 22:04:37 | コメント(0) | トラックバック(0) | XTRAIL
2025年08月05日 イイね!

北米のVCエンジンリコール考察

1か月ほど前、北米のVCエンジン搭載車45万台のリコール届出の話が、北米の自動車関係サイトで話題になってました。日本ではリコール対象ではありませんし、後述の理由で個人的にも心配はしていません。

北米のサイトでの記事:
Nissan and Infiniti Recall Over 400,000 Variable-Compression-Engine Vehicles in the U.S.
NHTSA Closes Probe Into Nissan VC-Turbo Engine Problems, 444K Vehicles Recalled

北米では8月25日から順次オーナーに連絡が届くそうで、今月末から全数の対応作業が始まるのだそうです。

そもそも、どういうリコールなのか。なぜ北米版はリコールなのに、日本版は大丈夫なのか。公開されている情報などから推測してみます。

NHTSA(米運輸省高速道路交通安全局)への届け出の原文には、エンジン内のすべり軸受け(クランクシャフト、Aリンク、Cリンク、Lリンク)の製造問題の可能性、とだけ記されていてそれ以上の情報がありません。
またその対処は、ディーラーに持ち込まれた対象車体のエンジン内を検査して、オイルパンに金属粉が混じっていなければ問題なし。エンジンオイル交換をして返却。
オイルに金属粉が混じっていたら、エンジンを載せ替えて、ECUをリプログラミングして返却、だそうです。

また、いくつかのサイトの記事では、エンジン回転の過負荷時に、エンジンに過負荷振動が加わるなどして、すべり軸受けの一部の油膜が切れ、微小損傷が起きて金属粉がエンジン内に混入、オイル潤滑が妨げられ高熱損傷が起きるリスクがある、ということだそうです。

2023年から始まった予備調査で、約45万台の対象車(北米版ROGUE/CVT、Altima, Infiniti QX55,QX50)のうち、約1800台にエンジントラブルが起きていたそうですが… 故障率は 0.4% ですね。

ここからは想像ですが…

VCエンジンは機械的なリンク機構を多用して、上死点と下死点を物理的に移動させています。通常のエンジンの代表的なすべり軸受け箇所は、
 ① ピストンヘッドとコンロッド
 ② コンロッドとクランク
 ③ クランクシャフト(メインシャフト)
の3か所です。一方でVCエンジンのすべり軸受け箇所は、
 ① ピストンヘッドとコンロッド
 ② コンロッドとLリンク左端
 ③ Lリンク中央とクランク
 ④ Lリンク右端とCリンク(コントロールリンク)
 ⑤ Cリンクとコントロールシャフト
 ⑥ コントロールシャフトとAリンク(アクチュエーターリンク)
 ⑦ クランクシャフト(メインシャフト)
の7か所にもなります。このうち、①と⑦クランクシャフトは同じ構造、⑥はアクチュエータが動く時だけのリンクなので、エンジンの高速回転時の大きな負荷の違いは、②、③、④、⑤ のすべり軸受に大きな差として表れてきます。しかもこの4か所は気筒ごとに必要な軸受けになるので、3気筒だと3倍の数の軸受け箇所が増えてきます。

VCエンジンは通常エンジンに比べて、大きな応力を受けやすい滑り軸受けの箇所が4倍以上もあり、そのすべての軸受けでオイルによる油膜を常時正しく張れていることが正常に動く条件になります。
通常エンジンだと一番応力がかかるのはコンロッドとクランクの接触部分の軸受けなので、この部分の潤滑をどうするかを考える、ということになります。

一方でVCエンジンは4か所それぞれに別々の方向の応力がかかってしまうので、この4か所の軸受け全ての潤滑をスムーズに行うことが必要になる、という難しさがあるのだろうと思います。
例えば、コンロッドとつながっているLリンクは常時上下に運動してしまうので、Lリンクの両腕の②と④の軸受け箇所への潤滑油の供給はものすごく大変です。実際にはLリンクの②④と③の間に潤滑油が通る穴が貫通していて、クランクシャフトの内部から③に供給されるオイルがこの穴を通して②④の接面にまで吹き出して油膜を張る、という離れ業が使われています。(しかも超超鋼のLリンクの穴の切削加工と面取り加工は超絶難易度)

また、北米版VCエンジンは、1000rpm程度のアイドリング時から、アクセル全開の4000-5000rpm での過負荷状態まで、様々な稼働状況になります。この時、エンジンの負荷状況に応じて、Aリンク、Cリンクがせわしなく無段階に動き、Lリンクによって上死点/下死点が無段階で可変になり圧縮比が変化する、という動きになります。当然、それぞれの軸受けは過負荷な状態が状況に応じて頻繁に発生することになるのだろうと思います。

加えて。エンジンオイルを適切に交換している車体なら、過負荷な状態でも潤滑は正常でしょう。でも北米の場合、① 高温多湿でオイル劣化しやすい日本と違い、乾燥した地域が多い欧米ではオイル交換間隔が長い、② 車検も点検も一律な制度はなく整備はユーザー任せ、③ 廃棄オイルの環境影響を下げる意識が高い、などから、数年、数万キロ乗ってもオイル交換しないという人も居ます。エンジンオイルの劣化が進み高粘度なった車体もあるのだろうと思います。
ただでさえ過負荷な軸受け状態になりやすい4か所の軸受けに高粘度(いわばドロドロ血)のオイルでは行き渡らず、どこかで油膜切れが起きてしまい、金属粉が生じてしまったのではないか?と想像します。

例えば、「今まで、2年間エンジンオイル交換しなくても、他の車体では焼き付きなど問題は起きなかった!VCエンジンはどうして問題が起きるんだ!?」といったクレームも出てくるのだろうと思います。VCエンジンは特殊なんです、小まめなオイル交換が必要なんです、と弁明しても、陪審員制度の北米の裁判では、多くのケースで消費者側に有利な判断が下されます。メーカー側としては集団訴訟の陪審裁判になると相当厄介です。

それならば、全数リコール扱いにして、一旦ディーラーで検査して、金属粉がなければオイル交換で問題なしとして返却。金属粉がある車体だけ、エンジンを交換して、今後定期的にオイル交換させる、という対策をとる方が得策だろうと判断したのではないか?と推測します。

金属粉が見られる車体への対策も、エンジン載せ替えに加えて、ECUのリプログラミングになってます。恐らく、アクセルべた踏みなどの過負荷時に、VC機構が緩やかに作動するようにリミッター調整される変更が入っていて、軸受けに過負荷が生じないようなセッティングになっているのだと想像します。


日本では問題が起きないか。

資料によれば、VCエンジンは全数、横浜工場で製造され、北米向けには組み立て済みVCエンジンとして出荷されているそうです。なので、日本版エクストレイルT33のVCエンジンも、同じ横浜工場で同じ製造方法で作られていると思われます。

ですが、T33で使われるVCエンジンはe-powerの発電専用です。アイドリングもなければ、4000-5000rpmで急峻に回転数が上がるような使われ方もしません。多くのケースで、2000-3000rpm の「定速回転」であり、過負荷状態が続くことも無ければ、VC機構も緩やかで、急峻な動きもしないのだと思います。

それはそれで、本来のVC機構の性能の1/3も使ってないような気がしてもったいないですけど、逆に、VC機構が過負荷状態にほとんどならないので、軸受けの過負荷状態にもなりにくく、油膜切れによる金属粉の混入も起きないのだろうと思います。

また、日本では車検制度があるので、ほとんどのユーザは1年に1度~1万キロに1度はエンジンオイルを新品交換します。劣化オイルによる潤滑異常も起きないんだと思います。


VCエンジンは機械的に圧縮比の可変状態を作るという、30年以上に渡るチャレンジングな研究開発を具体化して量産化した、すごい技術の塊だと思います。開発陣には敬意を表します。
一方で、複雑な機構であるがゆえに物理的な問題も起きやすくなるのは致しかたない。通常はそういうトラブルを次々と解決して技術進化していくのですけど、VCエンジンが実現するアトキンソンサイクルは、吸気バルブ遅閉じで実現されるミラーサイクル(擬似アトキンソンサイクル)と、熱効率の点では大差ないことが分かっています。

製造のムヅかしさ、複雑機構から生じる課題、生産効率などの経済合理性から、機構的にアトキンソンサイクルを実現したVCエンジンは、もしかすると1代限りのエンジンになってしまうのかもしれません。
Posted at 2025/08/05 17:52:21 | コメント(0) | トラックバック(0) | XTRAIL | クルマ

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「生成AIを使った日産の次世代自動運転(Wayve協業) http://cvw.jp/b/2567380/48687985/
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