第3世代e-powerが発表されました。
youtubeにも、キャシュカイを使った試乗会動画(従来型(VC-turbo+第2世代)と次世代型(新エンジン+第3世代))がいくつか上がっています。
・藤トモさんの
試乗動画
・河口まなぶさんの
試乗動画
・ワンソクさんの
試乗動画
どの動画を見ても、
今まで以上にものすごく静粛で
振動もなくますます上質感とEVそのものの走りだ、という評価でした。特にワンソクさんの一般目線から見た「驚きの声(マジか!)」は、実感がこもってるんだろうな、と思いました。
また第3世代は、高速域の燃費が15%、WLTC総合モード燃費で9%も改善しているそうです。キャシュカイ(第2世代)が 18.9km/l なので、20.6km/l になりますね。
欧州は街中の渋滞もあるし、アウトバーンなど高速ツーリングもあるので、高速燃費の向上はウケるでしょうね。
技術的には、①ロングストローク、②定速回転、③STARC燃焼、④駆動系のx-in-1構造 に振り切った設計が特長なのだと理解しました。
①のロングストローク化。レシプロエンジンは、爆発力によって生み出されるエネルギーを
なるべく長いストロークで運動エネルギーに変換する方が、エネルギー変換効率は良くなります。同じ排気量なら、ボア(シリンダの直径)を広げるより、ストロークを増やした方が熱効率は高くなります。その分、上死点から下死点までの移動時間は長くなるので、1回転にかかる時間が長い、つまり、アクセル開度に対して
反応の遅いエンジンになります。
通常の速度域(停止0km/hから、高速120㎞/l)でまんべんなく反応が良くトルクを稼げるエンジンを作ろうとしたらストロークは長くできず、結果、熱効率を上げることはできなくなります。
直接駆動にかかわらない第3世代e-power専用エンジンだとエンジンの反応速度は走行フィールとは全く関係なく無視してよく、一定のエンジン回転域にだけ合わせた最適なストロークを設計できるので、ロングストローク化が可能になったというわけですね。
②の定速回転。ロングストローク化ができれば、一度の爆発から取り出せるパワーも高くなります。その分、強い力で発電機を回すことができるため、高負荷時にもエンジン回転数を高く上げる必要が無くなります。現行VC-turbo版第2世代だと、どうしてもエンジンパワーが得られないときは結構高回転にエンジンが回る音がしますが、第3世代だとそもそも同じ回転域でパワーを回収できるし、エンジンを回すとしても回転数も低く抑えられるんでしょうね。
③のSTARC燃焼。通常のエンジンだとアクセル開度に応じて俊敏に回転数を変動させないといけないですが、発電専用に割り切り、定速回転しかしない第3世代e-power専用エンジンだと、定速回転に最適なタンブル流で吸気させて、燃焼を安定させ引き出せるパワーを最大化させる、という大胆な設計ができるようになった、ということですね。すべて発電専用に割り切った(最適化した)設計の見直しがなされているんですね。
④駆動系の一体化。エンジンから生み出されるエネルギーの11%は、振動やギア摩擦などの内部機械損失として失われます。駆動系を一体化すると、この振動や摩擦による機械損失を減らせるのですね。組み立て時の生産効率も上がるので、コスト削減にも大きく寄与すると思います。
その分、パッケージングが重要になります。できるだけ多くの車種で、同じパッケージを使って生産効率もコストも抑える必要がある。バリエーションの複雑化は禁物です。第3世代e-powerは、1.2L版、1.4L版、1.5L版 の3系統に絞ることになるんでしょうね。(となると、VC-turbo版e-powerは、現行エクストレイルだけのレア設定で終わるのかもしれません)
欧州では、キャシュカイは13万台、エクストレイルは6万台のヒットで、走りや振動、車内静音の
上質さが評価を受けているようです。
欧州はダウンサイジングが一般的なので、1.5L/3気筒エンジンは問題なく受け入れられています。そこに静粛性が高く、高速ロングドライブの燃費の良さも加わったら、さらなるヒットが期待できますね。楽しみです。
第3世代e-powerの方式で高速燃費が向上するなら、e:HEVのような「直結機構」は不要になります。逆にここまで発電専用に割り切ったエンジンでは直結機構は作れない(アクセル開度に合わせた応答性がないエンジンでは直接駆動に向かない)ということも示していますけれど。ただ、欧州や日本ではこの発電専用設計は「当たる」と思います。個人的にもこの戦略には賛同します。静かで、燃費もよく、走行フィールもpure EVと同じなら、良いことづくめですし。
一方で北米向けにはどうか?
マスコミは「e-powerは高速燃費が悪いから投入できない」と評論してますが、それは違う、と個人的には思ってます。それよりも北米では「エンジンは2L以上、4気筒以上」神話が根強くあり、そもそも1.5L/3気筒エンジンが受け入れられていない、のだと思います。現行の1.5L/3気筒/VC-turbo/CVT版ROUGUEが全く売れてないですから。また BMW X1 は、欧州・日本だと 1.5L/3気筒横置きエンジンですが、
北米版 BMW/X1 は 2L/4気筒です! BMWが同じ車種でエンジン排気量を変えている戦略から見ても、北米では1.5Lが受け入れられないことを表しているのではないでしょうか?
第3世代e-powerを搭載したROGUEは2026年に北米投入だそうですが、この神話のせいで受け入れられないんじゃないかなぁ?と心配します。
北米向けに2L/4気筒のシリーズHVを作るとしたら、直結機構は必要になる。2025年に三菱アウランPHEVのOEMをROGUEとして投入するそうですが、その動向を見ながら、次々世代北米向けROGUEには、アウランの駆動系を調達してそのまま組み込む。それしか手はないんじゃないかなぁ。
それとも1.5Lから4気筒化して、2L/4気筒版の第3世代e-powerにするのでしょうか?
これだけ評判の高い第3世代e-powerですが、日本での投入予定はエルグランドから、という話。えー?
重いエルグランドを、1.5L/3気筒の発電力で駆動できるのかしら?それともエルグランド用に「2L/4気筒のe-power専用エンジン」を作る?だとしたらその2Lエンジンを北米ROGUEにも使えば解決かも。
それに、エルグランドからですか?
試乗会で使った「第3世代版キャシュカイ」の右ハンドルを、そのまま日本にも輸入して売ればいいのに。(左ウィンカレバーが駄目なら、そこだけT33エクストレイルのウィンカ&ワイパーレバーブロックに交換すれば良い)
日本での売れ筋はノートとオーラなのだから、第3世代1.2L版でノート&オーラを先に第3世代化した方が、よほど売れると思う。
エクストレイルのフルモデルチェンジ(T34)に入れてもいいと思う。ただそうなると、VC-turbo はT33限りの「レア・エンジン」ということになってしまうけど… それはそれで残念過ぎますけどねぇ。
VC-turboは本来なら、スカイラインやZに搭載すべきエンジンですね。いまの日産の体力でそういう車種は作れないのだろうけど…
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XTRAIL | クルマ
Posted at
2025/04/04 13:22:41