ドイツ自動車連盟(ADAC)による燃費テストで、キャシュカイ第3世代e-Powerの
実用燃費が 5.4 l/100km (18.5km/l) だったそうです。
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日産『キャシュカイ』の新型e-POWER、燃費15%改善でセグメントトップレベルに…独ADACがテスト(RESPONSE)の記事
ADACエコテストは、カタログ燃費だけではなく
実際に様々な道路環境を走行して燃費計測しているそうで、130km/h高速走行も含めており、他のHVと比較しても全く遜色ない結果がでているようです。
いくつかのHV車でのADAC調査値と比較すると…
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Nissan Qashqai 1.5 e-POWER N-CONNECTANissan Qashqai 1.5 e-POWER N-CONNECTA 5.4 l/100km (18.5) : 市街地4.3, 郊外4.9,
高速7.2
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ZR-V 2.0 i-MMD e:HEV Advance 6.2 l/100km (16.1) : 市街地4.1, 郊外 5.8,
高速8.5
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Toyota RAV4 2.5 Hybrid 5.6 l/100km (17.8) : 市街地3.6,
高速7.2
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Toyota Corolla Cross 2.0 Hybrid 5.4 l/100km(18.5) : 市街地4.0, 郊外4.7,
高速7.5
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X-TRAIL 1.5 VC e-power 7.3 l/100km (13.7) : 市街地5.5, 郊外6.8, 高速9.6
だそうです。RAV4やカローラクロス、ZR-Vのように「高速道路でも燃費は良い」と言われている車と
同等以上の高速走行燃費性能があるようですね!
T33/1.5VCT e-power と比較すると、燃費の差は明らかです。特に130km/h高速走行では 10km/l → 14km/l と劇的に進化。33% も燃費が上がっています。
第3世代e-power と 5-in-1 ドライブトレインの効果はすごいんですね!
これは、次世代エクストレイルへの期待値も大です。(いや、その前にキャシュカイを日本でも売ってよ)
これくらいの数値が出ていればマーケットで好材料ですね。e-power は高速燃費が悪いとはもう言わせない、というところでしょうか。
HV車は燃費が良いって言われてますが、構造上、どのメーカー車種も高速走行時には燃費がガタ落ちします。トヨタTHS式でも高速走行時はエンジンフル回転ですし、ホンダ直結型e:HEVも高速時はエンジン直結です。
HV車は「なるべく多くの時間エンジンを止めていること」が燃費向上の条件なので、エンジンをフル回転させる高速走行ではそりゃ燃費は落ちるわけです。
また高速走行は、空気抵抗による燃費悪化要因がとても大きいです。速度の二乗で空気抵抗を食らうので、CD値が小さい=プリウスのようなクサビ形の前傾、の方が燃費は良くなります。SUVはどの車種も車高・座面は高いためCD値は小さくはできず、概ね 7.0-7.5 l/100km 位になるというわけですね。
第3世代e-power は、これからまだまだ燃費が向上する余地が残っています。
エンジンは発電専用にチューンアップさせることができ、走行系は完全にモーター性能と電池性能だけにフォーカスしてチューンアップすればいいからです。
トヨタTHSやホンダ直結e:HEVでは、どうしても「内燃エンジンによる車軸駆動」が残ってしまいます。車軸を駆動させるために、アクセル開度に対する俊敏な応答性能が無いといけません。「燃料噴射→爆発→ピストン上下→クランクシャフト回転運動→フライホイール伝達→ドライブシャフト伝達」のタイムラグがあるため、この部分の応答性能に必要なエネルギーロスがどうしても削れません。
具体的には、エンジンの熱効率を上げるには、タンブル燃焼を増やす(ゆっくり確実に多くのガスを燃焼させエネルギーを取り出す)、ロングストローク化(爆発エネルギーをより長い上下工程で取り出す)、エンジンの熱損失を減らす(3気筒化)、エンジンの機械損失・摩擦損失を減らす(フライホイール伝達を簡素化する)という手立てが必要です
しかしこれらは、アクセル開度に対しては「緩慢な応答」になってしまうため、これまでの自動車エンジンではそこにおのずと「限界値」が存在しています。アクセル踏みこんでも全然回転が上がらずモターっとした加速しかしない車は売れないですからね。
ところが、発電専用エンジンは違います。車自体の加速とは無縁に、好きな時に回転を始めて定速回転をし続けていれば良い、ので、アクセル開度とは無関係です。なので、これまでタブー視されていた「限界値」を越えた、いわばこれまでの常識ではありえないチューニングが可能になってるというわけですね。
第3世代e-power専用エンジンの「
ZR15DDTe」は
熱効率42%を達成しています。すでに実験室では熱効率50%は確認しているそうなので、実用化でどこまで熱効率を上げてくるのか、だと思います。
一方でTHSやe:HEVは、走行用エンジンとしては限界までチューニングが進んでいるので、エンジン改良によるHVシステム全体の効率化は厳しい。できるだけエンジンを掛けなくして燃費を稼ぐには、電池、モーターの効率化がフォーカスポイントですが、はたして。一方で、高速燃費を上げるだけなら、HVを効率化するより、CD値を下げる(より車の前方を寝かせるとか、床下の気流を整えるとか)という手を打ってくるような気はします。
日産はバッテリー開発でも技術革新のプレスを出していました。
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日産の全固体電池、ドライ電極でEV航続距離2倍
全固体電池の実用化は高い期待値がありますが、正極製造に目途が立ったのは大きいです。e-Power は小さなバッテリで車体価格を抑え、電欠の心配もなく燃費も稼ぐ、という実用的な事実上の電動走行車です。いまはフル充電で2分間、2kmくらいのEV走行しかできませんが、これが倍になると、4kmに1回発電すればいい感じになる。
キャシュカイ第3世代が、50L のタンク満タンで 1000km を走破できる性能なので、40km/l くらいの燃費になると、2000km無給油走行。これは相当にすごいですよ。その前にガソリンが腐ってしまうから、タンクを20Lに減らして空いたスペースにいろんなことができますね。
e-Power のようなシリーズ式HVは、制限値を外した専用エンジン開発、電動系ドライブトレインの高効率化、全固体電池、駆動モーター改良、など、個々の改良進化に大きな期待があります。一方でメーカーとしての日産は経営と販売がズタボロになっていて、それは会社内のメンタルとして製造・生産・品質・調達などの質の低下にも影響を及ぼします。
せっかく技術革新の可能性(種)を沢山持っていても、結局はヒトが働いているので会社内の空気(コンテクスト・ダイアローグ)がそれらの技術革新の可能性をスポイルしてしまうのは、やめてほしいなぁ、と願っています。
Posted at 2025/12/01 12:46:04 | |
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