メリー＆メリーのブログ一覧

時は過ぎ、ロードスターが私の相棒となってから

半年が経った。

走行距離わずか3500キロ

彼女を見るたびもっと走れと

言われているようだ。


その間にも数多くの友人から

ロードスターを買ったのか？乗せてくれ。と聞かれ、

半ばうんざりしていた。


これは俺のだ、俺だけの物だ。

誰にも触らせない、鍵を渡してなるものか。

やれ馬力が欲しい、狭い、寒い、暑い。


知るか。

恥知らずな友人とやらは、もう友人では無くなっていた。


親友は、

お前がこれに乗って来たときは、

ついにやったかと思った、と言った。


それから。


大事に乗ってやれ。とも

言ってくれた。


無論そのつもりだ。

今日だって

185㎝の長身を

コンパクトに折り畳み、

キャビンに滑り込む。


小気味良くエンジンを吹かして、

まるで運転が上手くなったかのように

スパッと決まるギヤを動かし、

私は私の行きたい所へ行く。



一人で。



どこまでも。

さて、かつて馬力至上主義者だった小僧は

ディーラーに着いてすぐ試乗することになったのだが

そもそも現物を見たことがない。


さてどんなものかと案内された所にあれは居た。

ロードスター。

とても小さいのになんてのびやかなのだろう。

夏場の太陽がボディを焦がす。

妖艶だ。

呼ぶとすれば彼女、となるだろうか？

船は女性。と聞いたことがあるが、

これだって立派な女性だろう、と思った。


恋をした時のあの感覚。

頭の中がそれでいっぱいになる。

肺と心臓が一緒くたに締め付けられるあの感じ。


それに似ていた。


今頼んだら納期は何時になりますか？

咄嗟にその言葉が口を突いて出た。


恐らく10月中旬かと。

ディーラーの店長が虚を突かれたように言った。

まさかこの小僧はロードスターを買う気じゃ無いだろうな？


無論そのつもりである。

買う気満々である。




私は面倒くさがりである。

そう、新車購入には

これほど書類を書くのかと、

幸いバッグには予め必要だろうと入れていた

各印鑑等が入っていたので契約自体は早く済んだ。




買ってしまった。

我ながら良く震えずに判を押せたと思う。

私の人生で

一番大きな買い物。


車


次の日の仕事が手に付かなかった事は

言うまでもあるまい。

今まではただ高ければいいと思っていた。

速ければ正義、馬力がどうの、ターボがどうの、と。

免許を持っていない世間知らずの小僧はそう思っていた。

教習所でハンドルを握りアクセルとクラッチに苦戦しながら、

とりあえず免許は取った。


さて車。

中古車検索の履歴は外車ばかり。

こんな未熟者に乗られる車が可哀想だと今は思う。


ロードスターの新型が発売されたということで

近くのディーラーへ向かった。

自転車で。

私は少し行動が遅い節がある。

夏、大汗をかきながらクーラーの効いたディーラーへ到着した。

向こうはきっと


なんだか無知な小僧が冷やかしにきたな。

と思っていたかも知れない。

私だってそう思う。


着いて一言

ロードスターを見せて下さい。


そう、他の車には目もくれず、

真っ先にロードスター。


何故か？

インターネットで画像を見た瞬間、

「俺は今こいつに乗らなくてはきっと後で後悔する」と、

直感でそう思ったからだ。


車のイロハを知らない小僧は

この3時間後、

実印を押すことになる。