時刻は午後の7時だったか
晩ご飯を食べに、私の運転で出かけた時のこと
雨の降りしきる、新4号線で
その事故は起きた
もう15年も前の話なのに、いまだに覚えている
その場所、その風景、その出来事
一目ぼれしたサンドベージュの新車のラシーンは
ずっとずっと、一生乗ってあげると約束していたのに・・・
右折レーンにいた私
信号が黄色に変わり、対向車が切れ、アクセルを踏み込み・・・
と、次の瞬間
大きなトラックが、ラシーンの助手席側、後のドアに突っ込んで
その勢いで、反対車線へと飛び出て行った
幸いにも、私の後ろには車はなく
トラックは、火花を散らしながら縁石の上をしばらく走って、停まった
あとから話を聞けば
私が右折のために停まっていた交差点の向こうは、ゆるい坂道
信号は黄色
でも、雨の降る下り坂では、荷物を満載したトラックは
停まることはできなかった、と
あのときのトラックの車体に書かれた、会社の名前
ドライバーの顔
助手席に乗っていた、金髪のロングヘアーの若い女性
なにもかも、すべて覚えてる
「黄色の交差点内では、右折車が優先」
優勢だった状況は、保険屋同士の話し合いで見事に覆り
「今回は、負けてやってよ、向こうの保険屋、友達なんだよ」
との言葉に、知り合いの保険屋を頼んだことを後悔した
こういうときには、「知り合い」があだになる
とはいえど、私にも落ち度があるわけだし
言い訳は無用
何より、ラシーンの助手席にいた人が無傷でよかった
「あと少し、ぶつかる場所が前だったら
あなたは死んでいたよ」
と、警察官に言われたのは
助手席に乗っていた、付き合い始めて間もなくの、当時の彼
今では私の主人、ともいう
ぶつかった直後は呆然として
運転席から出ることができずにいた私に
周りにいた知らないおじさんが
「警察と救急車、呼んだからな、大丈夫だからな」
と、窓から大きな声をかけてくれた
雨の中、傘もささず、声をかけてくれた丸顔のおじさん
その現場に居合わせた人たち
警察、救急車、レッカーの業者
相手のトラックの荷物を待っているお客
互いの家族
いったいどれだけの人に迷惑をかけただろう
いろんなことが頭の中を回り、真っ白になり・・・
「大丈夫?俺、相手のこと見てくる」
という彼の声で、はっと我に返った
私の様子を見て、特に外傷はないことがわかると
彼は相手の元へと走って行った
とにかく冷静で、適切な対応をしてくれたと思う
救急車に乗る私を見送ってから
レッカーされるラシーンの運転席に乗り
解体屋までハンドルを握ってくれた彼は
その解体屋から、私の自宅まで雨の中を歩いてきてくれた
つぶれたラシーンが見たいという私を
真っ赤な彼のエボⅢに乗せて解体屋まで連れて行き
止まない雨の中、真夜中まで付き合ってくれた
下手したら、私に命を奪われていたかもしれないのに
それでも、ずっと
それからも、ずっと
言葉はなかったけれど、傍にいることで私を励ましてくれた
あのときの、冷静な彼が
一生結婚はしない、と決めていた私の人生を変えた
付き合って間もなくだったけれども
あの事故は私に、彼のいろいろを見せてくれた気がする
事故にあったからこそ、大切なひとを得ることができた
が
だが、しかし
その後の彼と言えば・・・
結婚披露宴の最後の締めのあいさつが
真っ白になって何も言えなかったり
社会人サッカーの試合の後は
必ずお尻が出ていたり・・・
子供が生まれても
週4回のパチンコ通いが止められなかったり
お母さんの手術の恐怖に耐えかね
病院を逃げ出したり
友情のために引き取ったミニカも
あっという間に飽きちゃったり
とにもかくにも
あんまり褒められることのない今の彼だけど
あの日の、あの彼のことを思い出すたび
私はこの人の嫁で良かったのだと思う
免許を取って2年か3年の、調子に乗っていただろう私に
あの事故はいろんなことを教えてくれた
保険屋の事情
廃車になるはずの愛車が、陰で売られていたこと
ここには書けないことも、いっぱいいっぱいあった
未だに許せないこともある
あるけど
振り返ってみれば、事故の一因になったのは私で
誰のせいでもなくて
それを責めることなく今日まで支えてくれた人もたくさんいて
私のせいで迷惑を被った人たちには
どれだけ謝っても足りはずもなく
自分は決して文句の言える立場ではなく
むしろ、すべての出来事と、関わった人たちに感謝するしかない、と
去年、一度だけその「許せないこと」をブログに書いたことがある
それを境に、もう恨むことをやめた
あの日、助手席に乗っていた彼は
未だにたったの一言も、私を責めたことはない
だから私も、もう誰も責めない
あの日の彼の冷静さ
事故直後の相手への対応、警察とのやり取り、レッカーの手順
一瞬、死を覚悟しながらも
ぶつかる瞬間から、トラックが停まるまでのすべてを
瞬きもせずに見ていたという
それは
若かりし頃の、日光いろは坂での
あらゆる経験に裏打ちされたものだろうか?
夜な夜な通い詰めた
あのいろは坂で培ったものなのか?
下りの第一いろは坂
ガードレールに突き刺さったハチロクや
ガソリンスタンドのバイトに遅刻しそうになって大慌て
カーブの先に停まっていたトラックのどてっ腹に
思いきり突っ込んだS13が廃車になったのも
それで生死の境をさまよったのも
それらの経験全てが
あの日の彼の冷静さ、手際の良さに繋がったのだろうか・・・
つ、つまり
私も彼も、お互いを責められないっていう
ε-(;ーωーA フゥ…
でも
どれだけ余計な?経験を積んだとしても
私だったら、事故にあったら冷静ではいられないだろう
やはり彼は、ここぞというときに力を発揮する大物なんだろうか?
と、ぽろっと言った私に向かって彼が一言
「俺、小さいころから、やればデキる子だって言われてきたから」
(`・∀・´)エッヘン!!
( ゚Д゚)ハァ?
「でもさ、やればデキる子って
結局はやらないんだよね~
デキるんだったら、最初からやってるもんね!」
≧(´▽`)≦アハハハ
(;゚д゚)ァ…
や、やっぱりこの人で良かった・・・んだよね?
この梅の写真
じいちゃんが庭の梅の木を剪定して
そのときに切り落とされてしまった、ちいさな枝を
部屋に持ち帰って、ガラスのコップに生けておいたもの
剪定した日から、水に入れるまでに
もうだいぶ時間も経ってしまい
もしかしたらダメかな・・・なんて思っていたけれど
毎日ほんの少しずつ膨らんでいくつぼみに
小さな期待をもって
いつか咲くって信じて
水を取り替えながら、一週間
気持ちに応えてくれるかのように、咲いてくれました
その梅の花は、とっても小さいものだけれど
信じるってことの大切さを教えてくれて
日ごろ、いまいちな彼だけど(笑
そんな彼のコト
ずっと、信じてるんだ
そういえば、今日は結婚記念日だった!
Posted at 2013/03/04 17:40:28 |
ダンナ絵日記 | 日記