いざ受話器を掴み 巨万の富を掴むのだ!神様コール発信!おれは近所にある人気のない深夜の公衆電話の前にいた。万が一 通報されたときに家の電話や携帯電話を使ってたら発信記録を調べられて一発で御用だからな。念には念をだよ。いよいよ、俺が犯罪者としてデビューする瞬間が来た。テレホンカードを公衆電話に差し込み 電話帳をパラパラと開き 目を閉じて適当に指で差した電話番号に標的を定める。緊張して間違えないよう 何度も電話帳を確認しながら慎重にプッシュボタンを押している。プルルルと呼び出し音が数回鳴ったあと 寝ていたのだろうか ボソボソとした低い声で男が出た。『・・・・・はい』『あっ、あの、えーと、俺、俺ですけど。寝てましたか?』『は?・・・・・誰、お前?』『ですから私は、俺です。俺のことわかりませんか?分からなかったら別にいいんですけど』『警察に電話するよ』慌てて電話を切り ポケットから取り出したくしゃくしゃのハンカチで受話器やプッシュボタンの指紋を拭き取ってから、全速力で走り去った。 なぜだ?初っ端から見破られた。しかも『警察に電話する』と男は言った。・・・つづく