
さて、自動車オーナーの多くが興味を持つ「腕時計」。
その理由は定かではないものの、両方とも高度な磁術とデザインが集結した製品ということが共通していて、さらに両者とも「現代においては両方とも”さほど必要がない、無駄な嗜好品の部類”」ということになるのかもしれません。
よって、この両方を愛する人は、機能美や芸術性を重んじ、無駄を愛する人である、と考えることもできそうです。
そして、そういった傾向を自動車メーカーも理解しているのか、芸術性や機能性にこだわる自動車メーカーほど、腕時計メーカーとのコラボレーションを好むようで、数多くのパートナーシップ契約が結ばれています。
ここでどんなコラボレーションがあるのかを見てみましょう。
●アルピーヌ×ティソ
ティソ(TISSOT)は比較的求めやすい価格にて高品質な腕時計を製造しており、ビジネス上「嫌味のない」デザインを持つことでも知られます。
そんなティソですが、復活したアルピーヌとのコラボウォッチを発売しており、これはなんと「腕時計本体部分を取り外し、それをクルマに取り付けることができる、というもの。
ぼくがアルピーヌA110のオーナーだったら100%この腕時計を購入しているだろう、という魅力的な製品です。
●アストンマーティン×タグ・ホイヤー
タグホイヤーは設立当初からクロノグラフ等のスポーツウォッチを多数生産していましたが、マクラーレンの大株主であるマンスール・オジェ氏率いるTAG(Techniques d'Avant Garde)グループの出資を受け入れて現在のTAG HEUERへと社名変更し、その後さらにモータースポーツとの関わりを深め、F1の公式タイムキーパーを務めていたことも。
カレラ、モナコ等のモデルが有名で、「アイルトン・セナ」名義の腕時計を発売していたこともありますね。
現在(2018年から)はアストンマーティンとパートナー関係にあり、アストンマーティンはタグホイヤーのロゴをプロトタイプ、レーシングカーに大きく表示するなど、その関わりはかなり深いようです。
参考までに、2013年には、ケン・オクヤマ氏とのコラボレーションによって「タグ・ホイヤー カレラ CMC kode9 リミテッド」を発売していて、これは腕時計のケース部分を取り外し、(KEN OKUYAMA DESIGNから発売されたKode 9の)ダッシュボード上にセットできるという構造を持っています。
●ブガッティ×ジェイコブ
それまで提携関係にあったパルミジャーノ・フルリエから2019年にジェイコブ(Jacob & Co)へと乗り換えたブガッティ。
ジェイコブは比較的新しいウォッチメゾンでもあり、伝統を重んじるブガッティの行動としては「意外」であったものの、その構造やデザインの革新性、新しいブランドだけにチャレンジングな姿勢はむしろブガッティにマッチしているのかも。
つい先日、「ツインターボ・フュリアス・ブガッティ・エディション(Twin Turbo Furious Bugatti Edition)」なる、約5700万円ほどの限定腕時計を発売していますが、ブガッティのクルマ同様、簡単には購入できない価格帯です。
●ベントレー×ブライトリング
かなりな長きにわたりパートナーシップ関係にあるベントレーとブライトリング。
両者の共通性はほぼなく、しかし頭文字が両方とも「B」ということくらい。
ただしベントレーは「B」を車体のあちこちに(ときにはテールランプやサイドギルのデザインモチーフとして)採用しているので、この「頭文字B」というのは意外と重要なのかもしれません。
もちろん文字盤に「B」が表示されることが多く、ベントレーのヘッドライト、操作系(スイッチやダイヤル)に使用される、ピラミッド状のギザギザを持つナーリング加工が用いられることも多々。
ベントレー・ベンテイガのダッシュボードには2300万円くらいのブライトリング製トゥールビヨンがオプション設定されたことでも話題を呼んでいますね(だれか注文した人はいたんだろうか・・・)。
なお、以前は「ブライトリング・フォー・ベントレー」としてブライトリングのサイト上でも独立したコレクションとして紹介されていたものの、現在では「クロノマット」「ナビタイマー」など自社コレクションの中のバリエーションとして格納されており、ちょっとだけ扱いが低くなっています。
提携解消のウワサも過去に何度か流れており、そのうちベントレーは他ブランドに乗り換えるのかもしれません。
●フェラーリ×ウブロ
パネライからウブロへとコラボ先を変更したフェラーリですが、ウブロの持つ「セレブ向け」というイメージとぴったりマッチし、現在では不動の関係を構築していると言えそう。
ビッグ・バン、クラシックフュージョンをメインにコラボレーションモデルが展開され、とくに最新作の「フェラーリGT」はフェラーリのデザインスタジオによってケースデザインからして「専用に」開発されたもの。
数ある自動車メーカーと腕時計メゾンとのパートナーシップにおいて、これほど「マッチしている」組み合わせもないと思われ、この関係はしばらく継続することになりそうですね。
●レンジローバー×ゼニス
レンジローバーは2017年にゼニスと提携しており、「クロノマスター・エル・プリメロ・レンジローバー・ヴェラール・スペシャルエディション」という長い名前の腕時計を発売していますが、いまひとつ両者の美点を活かしきれていないようにも思われ、ちょっと存在感を発揮できない状態です。
ここからプロモーションを強化するか、それとも提携を解消するのか、その動向には注目したいところですね。
●マクラーレン×リシャールミル
泣く子も黙る超高級腕時計、リシャールミルとのパートナーシップを獲得したのはマクラーレン。
P1やセナ、スピードテールなど、マクラーレンの”アルティメットシリーズ”オーナーしか購入できない「数千万円の」腕時計を限定発売したりと積極的なコラボレーションを展開中です。※1億円を超えるものもある
リシャールミルは非常に新しいブランドですが、「腕時計界のF1」を標榜し妥協のない腕時計を作り続けており、その意味ではマクラーレンと共通するところが多いのかもしれません。
なお、リシャールミルは角界のトップとアンバサダー契約を結ぶことが多く、それはモータースポーツにおいても変わりはないようで、ミック・シューマッハ、シャルル・ルクレールの個人スポンサーも務めています。
●マセラティ×ブルガリ
けっこう長い期間にわたりパートナーシップ契約を継続しているマセラティとブルガリ。
オクト マセラティ クロノグラフ リミテッドエディション ウォッチ(1,339,800円)が有名で、こちらは今やブルガリウォッチの代名詞的存在でもある「オクト」の文字盤やストラップをマセラティっぽく変更し、秒針のエンド部を「ネプチューンの銛(トライデント)」へと変更したデザインを持っています。
●メルセデスAMG×IWC
メルセデス・ベンツブランドではなく、「メルセデスAMG」と協力関係にあるのがIWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)。
メルセデスAMG車のダッシュボードにIWC製アナログウォッチが採用されたり(全車種ではない)、ルイス・ハミルトンなどドライバーのシグネチャーモデルが発表されたり、面白いのはF1ドライバーのグローブにもIWCの腕時計が「プリント」されていること。
なお、メルセデス・ベンツと「ゴリラウォッチ」とがコラボモデルを発表したことがありますが、こちらはおそらく地域限定、かつ単発だと思われます。
●ランボルギーニ×ロジェ・デュブイ
それまでのブランパンとの提携を解消し、ランボルギーニが新たなるパートナーとして選んだのが「ロジェ・デュブイ」。
非常に高い技術を持つマニファクチュールとして知られ、そのエクストリームなイメージはランボルギーニとぴったりかも。
「エクスカリバー」を中心に、アヴェンタドールやウラカンをイメージしたシリーズを発売しており、そのムーブメントやケース、ストラップにはそれぞれのクルマをイメージしたデザインや構造が用いられ、相当に特別感のあるコラボウォッチをリリースしています。
ランボルギーニもそれに呼応するかのように、レーシングカー「スーパートロフェオ」に大きくロゴを表示したりという良好な関係を構築しているようですね。
なお、ロジェ・デュブイはランボルギーニのほか、そのモータースポーツ部門であるスクアドラ・コルセ、ランボルギーニが株式を保有するイタルデザイン、そしてピレリとも提携しています。
●ポルシェ×ショパール
ポルシェはかつてIWCとのコラボウォッチを発売しており、ほかにはエテルナ、オルフィナとパートナーシップ関係にあったことも。
現在ではエテルナを買収し自社で腕時計を製造販売しているものの、実はショパールとも提携関係にあって「スーパーファスト クロノグラフ」等を発売していますね(ポルシェ・モータースポーツのオフィシャルタイミングパートナーを務めている)。
なお、ショパールCEOであるカール-フレドリッヒ・ショイフレ氏がポルシェのコレクターであるということもこのパートナー関係に影響しているものと思われますが、ショパールはそのブランドイメージ(高級宝飾品)とは裏腹にスポーツウォッチも多く発売していて、「ミッレミリア(ベルトがクラシックカーのタイヤパターンになっている)」が有名ですね。
●ルノー・スポール×ベル&ロス
ルノーのモータースポーツ部門、ルノー・スポールと提携関係にあるのがベル&ロス。
ベル&ロスはもともと航空機の計器をモチーフとした「BR01」から出発していますが、モータースポーツにはずっと興味があったようで、そのデザイナーがハイパーカーのレンダリングを公開したことも。
そういった経緯か現在ルノー・スポールとのコラボモデルを多数発表していますが、いずれもF1マシンのステアリングホイールをイメージしたカラーやグラフィックを持っており、ベル&ロスの通常ラインとは全く異なるデザインを持つのが特徴です。
なお、世の中には星の数ほど腕時計メーカーがありますが、名の知られたところであっても「自動車メーカーとはコラボレーションを行わない」メゾンも。
代表的なのはロレックス(ただし”デイトナ”24時間レースの冠スポンサー)、オメガ、フランクミュラーオーデマピゲ、パテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガー・ルクルトなど。
逆にファンが多いのに「(腕時計メーカーとの)コラボウォッチを発売していない」のはBMW、アウディ、ミニ、ロールスロイス、レクサスなど。
シボレーやフォードといったアメリカのブランドも意外や「腕時計メーカーとのコラボ」が少ないようですね。
一方、「以前は自動車メーカーと提携関係にあったものの、現在解消済み」なブランドだと、下記あたりがざっと思いつくところです。
●クロノスイス
2017年頃まではアルファロメオとのコラボウォッチを発売していたものの、クロノスイス公式サイトからはアルファロメオシリーズが姿を消しており、パートナーシップ契約を解除したものと思われます。
代表的なコラボウォッチは「レギュレーター アルファロメオ クワドロフィリオエディション(696,600円/当時)」等。
●パネライ
かつてフェラーリと提携関係にありましたが、フェラーリがウブロへと乗り換えたために現在はコラボレーション相手が無い状態。
パネライ、フェラーリともに同じイタリアということでコラボレーションが実現したのだと思われますが、パネライ得意のクッション型ケースを使用し、リュウズやダイヤル(文字盤)等が専用に。
ケースにはチタンが多く、ダイヤルはフェラーリらしく「カーボン」であったり、竜頭は当時のフェラーリに採用されていたエアコン吹き出し口と同じ「ナーリング加工」が施されたもの。
3針、GMT、クロノグラフなど30種類ほどが発売されていますが、同性能のパネライと比較して中古価格が安く、「狙い目」腕時計だと言われていますね。
●ブランパン
世界最古の腕時計メーカーとされるブランパン。
かつてブランパンはランボルギーニとパートナーシップ契約にあり、「ランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオ」などレースの冠スポンサーを務めたり、ブランパンCEO自らが同レースに参戦するなど密接な関係にあったものの、現在は提携を解消し、ランボルギーニのパートナーはロジェ・デュブイに。
「ランボルギーニ・ガヤルドLP 570-4ブランパン・エディション」「L-エボリューション スプリットセコンド フライバッククロノグラフ」といったモデルが発売されています(インデックスがランボルギーニのレーシングカーに採用されるナンバー同様のフォントとなっている)。
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