少し前、7月末の事でしたが、宮城県主催の「燃料電池自動車(FCV)の体験試乗会」に参加しました。
嫁さんがたまたまJAF宮城支部のホームページで見掛けて申し込んだところ、参加人数が少ないのか抽選なども無くすんなり受付となりました。
車両購入価格の高さや、EVを普段使いしていると、イーロン・マスクじゃないですが「水素社会なんて来ない!」なんて言葉も思い浮かぶので、購入対象としては「アウトオブ眼中」なんですがFCV自体には興味津々だった訳で・・・。
「とりあえず乗ってみたい」だけの好奇心で参加しました。
試乗会場には「MIRAI」が2台、「クラリティ FUEL CELL」が2台用意されていました。
初のFCV試乗にテンションが上がります。
さっそく受付に向かうと、試乗する車両が「MIRAI」か「クラリティ」か選択できました。 先日、「クラリティPHEV」に試乗していたので、今回は全く未体験の「MIRAI」を選択。
ナンバープレートを見て見るとなぜか全車希望番号で「40-20」になっています。
何か意味があるのかと考えてみたら、嫁さんが「CO2ゼロなんじゃ無い?」と・・・。
多分これで正解なのでしょう。
受付を済ませて外に出てみると、展示用の「MIRAI」も用意されています。 これはチャンスとばかりに各部を観察します。
ボンネットが開けてあったので覗き込みます。
「MIRAI」のFCスタックは前席下に搭載されているので、ボンネットの中はパワーコントロールユニットとモーターなどが納められているようで、見慣れているリーフのボンネット内とも似ています。
気になったのは「エアクリ?」の存在ですが、FCスタックで使う空気(酸素)を取り入れるためですね。
EVには搭載されていないものですから気になるワケです。(笑)
FCVですからこれが重要です。
水素の充填口は車両の左後方、給油口の位置に付いていました。
こんな所もガソリン車などから乗り換えても違和感の無い所でしょう・・・。
タイヤはブリジストンのエコピアEP-133という専用タイヤを履いています。
サイズは215/55R17ですので、リーフ(215/50R17)より少し大きいタイヤです。
次は室内。
インパネ周りはガソリン車と比べれば未来的かも知れませんが、いつも初代リーフに乗っている私には普通に見えます。(それだけ初代リーフのメーター周りがブッ飛んでるワケですがw) 年式が新しい分、自動ブレーキやレーンディパーチャーアラートなども装備されていますが、最近では当たり前の装備ですね・・・。
4人乗り仕様のEセグメントセダンですから後席は十分な広さです。
後席用エアコン吹き出し口もあるので、いわゆる上級か高級セダンって仕立てです。
そんなこんなしていると試乗の時間になりました。
試乗会場の周辺を左回りに回る5.8kmほどのコースです。
程よくアップダウンや路面の荒れた場所もあり、試乗するにはちょうどよい感じです。
乗り心地はと言うと、いわゆる少し前のトヨタのセダン・・・。
フワンフワンとしたサスの動きなどが、クラウンや実家の親父が乗っているウインダムなどを思い出させます・・・。
で、肝心のドライブフィールですが、普段リーフやe-NV200に乗る私には拍子抜けするほど普通にEVフィーリングなのです・・・。
まあ、考えてみればEVの走行用バッテリーをFCスタックに置き換えてあるだけなので、要はFCスタックで電気を供給するEV(FCV=FCEV)なワケです。
EVとの違いと言えば、フルスロットルにすると「ゴー」と聞こえる空気を吸い込む音が聞こえる程度でしょうか・・・。
加速でのアクセルに対する反応の早さや、「Bsモード」での回生ブレーキなどは、普段「エンジン+CVT」の車に乗っている方には驚きがあったと思うのですが、EVユーザーにはごく普通のフィーリング・・・。
一時的に電気を溜めておくバッテリーも搭載され回生ブレーキも使えるので、発電がエンジンとFCスタックの違いは有るものの、日産の「e-Power」システムに近い物なのではと思いました。
「燃料電池」とやたらと強調するのでどんなものかと思っていたのですが、よく考えてみれば「FCV=FCEV」ってことでEVの一つの形・・・。
「近縁種」とか「親戚」とかって感じで、EV(BatteryEV)から見て「FCV=敵」って言うのは違う気がします。(笑)
そんな感じで運転席の私はいろんな事を考えながら試乗していたのですが、後席では息子がリアセンターアームレスト周辺をイジリ回してご機嫌だったようです。 基本的に静粛性が高いのですが、そのためか「タイヤノイズが大きめに感じた」とは後席の嫁さんの感想です。
試乗後に係の人と話をしていたら、貯まった水をパージする所を撮影できました。 コース2周と待機中に使った電力分でこの程度らしいのです・・・
意外と少ない量なのだなあと感じました。(走行中などに自然排水される残りのようです)
車としての完成度は文句なしなのですが、FCVを運用するに当たっての問題はやはり供給インフラ・・・。
仙台の場合は常設の水素ステーションがあるのですが市内(県内)には1カ所だけ・・・。
お隣の水素ステーションはと言うと、福島県の福島市と郡山市で日替わり営業する「ふくしま移動式水素ステーション」・・・。
航続距離が長いとは言ってもこれでは運用の足かせになりかねません。
とは言っても、車両価格が高価になる理由の白金触媒は、白金代替触媒「カーボンアロイ触媒」などが解決してくれそうですし、水素の供給についても太陽光や風力による発電で水素を製造する設備なども開発されています。
水素の製造・充填装置が小型化されて家庭や街角に設置できるようになれば、供給インフラの問題も解決に向かうでしょうし・・・。
「水素社会は来るのかも知れない?」というのが現在の私の考えです。
帰り際、e-NV200と「MIRAI」を並べて撮影できないかと思っていたら、駐車場に仙台トヨペットの「MIRAI」止めてあるじゃありませんか。 さっそくe-NV200を移動して撮影させてもらいました。(笑)
とにかく「FCV」が何者なのかを理解するには最適な試乗会でした。
私的には、「燃料電池車」とか「FCV」とか言わずに、「燃料電池・電気自動車」とか「FC・EV」とか表現してくれれば、理解しやすいのにと思わずには居られませんでした。
それだけに、「MIRAI」のFCスタックと高圧水素タンクを大容量バッテリーに載せ替えたら、単純にEVの「MIRAI」が出来てしまうではないですか・・・。
車両の完成度は文句なしですから、「トヨタにはEVが無い・・・」とは言ってられない状態だったのです・・・。(現実としてクラリティにはPHEVとEVが有りますし・・・)
図らずも「トヨタ侮り難し」(ホンダも)と思わせた試乗会でした。