2016年08月16日
「ジークフリード・キルヒアイスが生きていたら」を考えてみた
最近ファミリー劇場で「銀河英雄伝説 外伝」をちょいちょい放送していて、
しかも外伝だからキルヒアイスの出番が多いんですよね。
本編では初期も初期にいなくなっちゃたけど、
その後も何か問題が起こるたび「ジークフリード・キルヒアイスが生きていたら」と嘆息させるほど、
帝国各位に多大な影響を与えた皇帝ラインハルトの腹心。
実際本当に生きていたら、どうなっていたかな。
キルヒアイスはラインハルトの影に隠れて目立たなかったけど、
本当にとんでもない逸材だったんだよなあ。
実は覇気以外の総合的な能力なら、ラインハルトより上だったかもしれない(苦笑い)。
軍事においてはカストロプ動乱、アムリッツァ星域会戦、キフォイザー星域会戦で柔軟で卓越した用兵を見せ、
特にキフォイザー星域会戦では、
ラインハルトやヤン以上と言っていいほど奇抜で独創的でありながら理にかなった戦術を駆使してみせた。
政治についても実はすごい。
リップシュタット戦役で、ラインハルトたちが貴族連合軍本隊と戦っている間、
キルヒアイスは帝国の辺境を治めていったわけだけど、
これは単に軍事力だけで成せる業じゃない。
パッとイメージしにくいかもしれないが、日本を例で言うなら、
ラインハルトたちが東京とか大阪とか名古屋とか主要都市で戦っている間に、
北海道から東北から北陸から中国から四国から九州から、
全部をまわってそこに住む人たちを味方に付け、支配下に置いたということです。
これは軍事力が乏しい相手だから簡単かというと、そんなことはない。
面従腹背されればすぐにでも蜂起され、至るところに叛乱の火の手が上がり、
ラインハルトたちも門閥貴族と戦ってる場合じゃなくなる。
デリケートで的確な政治手腕がなければ成し得ないことで、キルヒアイスの政治力は尋常じゃない。
これにはキルヒアイスの人格も大きなウェイトを占めたんじゃないかなと思っています。
敵国の将兵(主に女性兵士(笑))にすら短時間で信用と好感を与えられる人格は、
ラインハルトにすらない。
ラインハルトが与えるのは畏怖と威圧と敬意で、
どちらかといえばオーベルシュタインと同じ方向なのよね(苦笑い)。
それは慰撫を必要とする政策には向いていない。
その上キフォイザー星域会戦では完勝しただけでなく、
敵の副盟主であるリッテンハイム侯爵を事実上戦死に追いやり、
そのことにより辺境の支配を完璧にしてしまった。
このうちどれか一つだけでも「赫々たる武勲」としていいほどなのに、三つもいっぺんにだからね。
「キルヒアイス提督の武勲は巨大すぎる」というのは決して誇張ではなく、
正直、オーベルシュタインじゃなくても危惧するレベルの話なんですよね。
ただ個人的には、キルヒアイスは生きていてくれた方が、
ローエングラム王朝は別の方向で安泰だったかもしれない、とも思ってたりします。
というのも、ラインハルトはあのままだったらおそらく、子をもうけることがなかった。
あるいは子をもうけても、
血縁で政治権力を引き継ぐことを心底から軽蔑していたラインハルトだけに、
自分の子に帝位を継がせるとは考えてなかったかもしれない。
原作では自分も死んじゃうから(おそらく)仕方なく息子に帝位を継がせることにしたけれど、
それでもなお自分自身やアレク大公を指して
「実力が劣ると思ったらいつでも打倒せよ」とか
「ローエングラム王朝では無能者や臆病者が帝位に就くことは決してない」
と公言しちゃってるくらいだからね。
だとするとどうなるか。
実はもしかしたら、キルヒアイスに帝位を譲るつもりだったんじゃないかなと。
キルヒアイスを「副帝」としてしばらく共同統治をおこない、
時期を見計らって(あるいは自分の死後)「正帝」の帝位を譲る。
そしてキルヒアイスも自分の子にではなく、
実力も実績もはっきりした男を「副帝」に据え、
自分の意思によってか、あるいは死後に帝位を譲る。
つまりローエングラム王朝はこういう形で、
血縁ではなく実力と実績で帝位を継承してゆく「システム」にした可能性もあったんじゃないかなと。
この場合、実力実績ともキルヒアイスが「副帝」であることは、誰も文句はないはずだからね。
「帝位は血統のみで継がれるべき」という枠にとらわれるのは、
オーベルシュタインを含めたほとんどの人の限界で、
彼らを越える器量を持つラインハルトなら、これは充分考えつく発想だったんじゃないかな。
もちろんこの「システム」も欠点はある。
実力があるように「見せかける」ことがうまいだけの人間が「副帝」になったり、
「正帝」が「俺の子供だが実力があるから問題ない」と、
本当は無能な自分の子供を「副帝」にしてしまい、システムを有名無実化してしまったり。
ただこのあたりもラインハルトなら、
自分が死ぬ前に「チェック機関」を作ったりして、防止には努めると思うけどね。
ただ、作中にこんなことを考えていたという描写は一切なく、
仮に「キルヒアイスが生きていたら」こういう形をラインハルトは思いつくかもしれないなと思っただけです。
なにしろ本当、ローエングラム王朝の血統って、
偶然と幸運とが重なって、ギリギリで保たれたものだったからな(汗)。
もしヴェスターラント出身のあの男の皇帝暗殺未遂事件がなかったらどうなってたか。
余談だが、あのヴェスターラント出身男、本当にいい面の皮だったんだよなあ(苦笑い)。
彼があんなテロ未遂を起こさなければ、後継者のいないローエングラム王朝は、
ラインハルトの死後、分裂して滅亡してしまった可能性が極めて高く、
敵討ちどころか憎むべき相手に計り知れないほどの恩恵を与えちゃったわけだからね(汗)。
あとまあ、別の可能性としては、キルヒアイスが生きていたら、
おそらくまず確実にアンネローゼと結婚していただろう。
そして子を残さずに死んだラインハルトの「帝位」を継いだのは、
キルヒアイスとアンネローゼの間に生まれた子供だったかもしれない。
というより血統という点では、それが唯一の道だったろうな。
そしてラインハルトが長生きしていたら、「甥」を後継者としてしっかり育ててから死に、
原作通り早死にしていたらキルヒアイスが「摂政」になって息子を補佐し、
実質的な「皇帝」として帝国を統治していたかもしれない。
この場合、たぶん「甥」はラインハルトの養子にしているだろうから、
名目上は「ローエングラム王朝」が続くけど、
実質的・血統的には「キルヒアイス王朝」というべきものになるか。
でもそれは、表面はローエングラム、影はキルヒアイスということで、
ラインハルトの影として生きることを望んだキルヒアイスらしい形かもしれないな。
もう一つ余談になるけど、キルヒアイスとアンネローゼの間に子供ができてなかったら、
アンネローゼが帝位に就き、キルヒアイスが補佐する形になっていたかもしれない。
だけどこれだとかなり危うい形にならざるを得ない。
主に後継者について。
また生まれていたとしても、息子ではなく娘だったら、
彼女が「女帝」になってキルヒアイスが補佐するだろうけど、
これも後継者についてかなり大変だなあ。
誰が「女帝」の婿になるかで、相当揉めそうだ(汗)。
でもまあ、キルヒアイスの気質から言えば、
生き残っていたらアンネローゼと結婚して、
それこそオーディンの片田舎に引っ込んで、
静かにのんびり暮らしたかったかもしれないな。
むしろラインハルトもそれを望むだろうけど、
でも宇宙を統一した後でも(それどころか後の方が)
政治・軍事でラインハルトを補佐する必要があるから、
やっぱり一生彼の影として生きていくことになったか(苦笑い)。
とは言えだ。
公的には生涯多忙で、
もしかしたら気質的には合わないことを続けざるを得なかったにしても、
せめてやはり私的には、アンネローゼと幸せになってほしかったもんだ。
それがラインハルトも含めた本人たちにとっても、キルヒアイスの両親にとっても、
そしてたぶん、ラインハルトとアンネローゼの両親にとっても幸せなことだったろうからね。
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Posted at
2016/08/16 09:50:58
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