真ん中は過ぎたような気がする。多分、多分だけどさぁ・・・誰もがそっと心の奥に浮かべて忘れえない時代の記憶ってあるんじゃない?夢中だった+++大切だった+++当り前だって思ってた+++気が狂う程に愛おしかった+++採光に満ちた時代が。随所に山下達郎の技巧を凝らした『Denim』を聞くといつしか・・・。一瞬にして妄想コクピットにおさまり凄まじくも心地好いGに身をまかせると七色の閃光を時空間に曳き放ち我ながら見事なまでのスパイラルターンを描いて駆け昇ってゆく。自己中”って言う言葉さえなくってクズ”はカッコ悪い時代だった。432のマフラーを吊るした260のリアにはDONNAYのラケット。メンズクラブを眺めながらバイトまでの時間は、なけなしの金を払って幼い恋愛が渦巻く溜り場のあの喫茶店で痩せ我慢のブラックコーヒーをすすって過ごす。燻らすキャスターは早く藤竜也のように歳をとりたいと・・・。小さなアクシデントに見舞われた時には顔を見ただけで「どうした?」ってすぐ気づいて気遣ってくれる「じゃあな!おう!」で事足りたあいつら・・・がいた。ハマトラに身を包んだあの子は当たり前のように右のドアを空けておさまる。誇らしかった・・・過酷なバイトも眠たさも吹っ飛んでさぁ。俺の甲斐バンドのカセットを取り出し、さっさと押し込むカセットから流れるのはニューヨーク仕込みの英語で歌う竹内まりやだったぁ。自分だけは車を弄っても何も言われないと確信しているあの子の横顔にやられていたっけ・・・あの頃の俺と、あいつらに合わせてくれるDenimの『人生の扉』ロードスターで新緑のワインディングから浜辺まで駆け抜ける時は桜色のドンペリの誘いさえ霞む煌く陶酔をあたえてくれる気がする。50代になって聞いたらまた・・・きっと今の俺に会えるのだろう。