
「誰も来ないかも知れないな・・・」
参加表明無しのRS掲示板を、淡い期待を拭いきれずにチェックする。
そんな自分に少し同情しながらタバコをくわえる。
チェーンスモーカーの耳には日頃その乾いた音さえ聞こえないZippoのアクションノイズがベランダから臨む空けきらぬ空に響き渡る気がする。
気休めの健康配慮である MILD SEVEN 3 もいつもにまして味気ない。
気がつくとPCの採光で気がつかなかったがパジャマ姿の妻が立っている。
「今日はロードスターが集まる日じゃないの?」
「CDはBette Midlerでいい?」
Experience The Divineの14曲目に収録されたIN MY LIFEは『聞く者の99%の心を癒す奇跡のカバー』だとの評論を超越していると実感する。
妻の二つの質問は18年あまりのパートナーとしてあみ出した私の機嫌を推し量るテクニックだ。「ブルーハーツのベストも」と言わない時は気分がFULLじゃないと考えるらしい。夫の機嫌推定法のキーワードはTPOのパラメーターを複雑に算出して的確な変遷を遂げる。
妻のさりげなく飽くことのない研究の日々に、口にも表情にも出さないが日常の横顔に改めて感謝することがあるようだ。
愛車に火をいれる。
暖気の間、コックピットに収まりたい衝動を抑え見慣れた優美な姿を眺めながら、またタバコをくわえる。妻も心得たもので私がジャケットを着てドアを出て5分経たなければやってこない。アルミのスピーカーカバーとスカッププレートに足をヒットさせないように乗り込むことと同じ『結婚以来の二人の合意事項』だ。二人にとっては身についた日常にすぎないし、真新しいデニムパンツのような苦しさも無い。
逢瀬公園へは30分程度。中途半端な雑踏を10分程で過ぎれば心地よい麗らかな風が吹きわたる。ロードスターの魔力は「誰もこないだろうな・・・」という感嘆心
をも、いつしか飛び去る風に流してくれる。10:00には少し早い・・・会津の山並みを望みながら田園地帯のワインディングを疾走する。夜になったらこのバス停には『トトロ』が立っているかも知れない。
逢瀬公園駐車場に滑り込む。
作業用のワンボックスから初老の男性が、我が初老のロードスターをひとしきり眺めた後「このくるまぁむがし(昔)売れだんだよねえぇ、ぬりがえだのがい?(塗りかえたのかい)いまみでもぉ~いいないぃ(今見てもいいね)」話掛けられるままに愛用のシュアラスターとオイル交換サイクルの話になる。
すると「実はセドリックを持っているから見てもらいたい」「直ぐ近くだから・・・」クルマ好きとは・・・いつまでたっても男は・・・よく手入れされたセドリックが・・・
もしものロードスターの来訪に備え、リトラを上げて駐車場の中央の駐車スペースを選んで入り口に向けて停めた私のRSの真ん前に、セドリック。
降りるなり、「仕事に疲れた後でも、オールシーズン温泉に入る前に、愛車のセドリックを洗うんだ・・・気持ちにも、健康にもいい・・・」と少年のように身振り手振りを織り交ぜての話は止まらない。なんだか悪い気はしない。
曇り空を気にかけてのオープンドライブの最中、急に日差しが射して、こみ上げる嬉しさに微笑んだことは無いだろうか。
或いは、この路は大丈夫だろうか・・・と思いながら細い峠を登って行くと突如として視界が開け、輝くばかりのタイヤ痕の無いアスファルトと真っ白のセンターラインの路に出たときの・・・。
まさしく「それ・・・であった」
愛車のチューンの最中で仕事にも関わらず
『ギターリスト布袋』似のnarinariさんが(RSプライベターの巨星)。
暫くすると心臓を揺さぶる快音が・・・る。
サンバーストイエローに黒のボンネッットのファイターロードスター。
パイロットは往年の
『藤竜也』を彷彿とさせるRacing東照の
大森代表。
間もなく地を這うようなワイドトレッドのスパーロードスター。
ロードスターオナー界の至宝『鈴木宏和』ARIOS代表。
言わずと知れた
マーチカップ3連覇のプロレーサー。
まだ訪れる人も少ない逢瀬公園に屈託の無い笑い声が響く。
『RS・ルックス・腕・男の色気』どの角度から眺めても人を惹きつけて放さない
勇な3人の男たち。+1名+妻
僅かにではあるが、私が今日までの人生でお会いした著名な人達に共通する・・・
『誰もが気さくで親しみやすく、少年のような笑顔で話す。
押し付けがましいところが全く無いうえに話題が fan。
しかも経験に根ざした話は、奥深い』
勇な3人はそんな人達であるようだ。 『RSに感謝』
Posted at 2007/04/07 21:47:16 | |
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『美しまTRG&MTG』 | 日記