2008年12月03日
右の腕には少し大きな傷跡がある。
「お姉ちゃん逃げてぇ!!」
4人の大小のチビ達がお姉ちゃんの身を案じて叫んだ。
Risaだって諸手をあげて逃げたいのだが、チビ達に熟れた果実を一口だけじゃなくて一個ずつ手渡してやりたくて必死にTシャツのすそを握り締めた。
へそを出し手繰りあげられたTシャツの中には4個の熟れた果実がその芳醇な香りを漂わせながらRisaの胸に抱かれている。
「あっ・・・」素早く降り立ち、家ネコに追われる子ねずみのように走る4人のチビ達の後を追うつもりが足を掛けた甘味をたわわに実らせた枝が折れて、すべり落ちるRisaの腕を引き裂いた。
痛くは無かった・・・ただ穴の空いてない唯一のTシャツの破れと、果実の持ち主の形相と、チビ達の遁走の結果が心配だった。
果実の持ち主は険しい形相ではあったが何故か見逃してくれた。
「今度盗んだら警察を呼ぶぞ!!」と叫んだのだが。
4人のチビたちは心配顔で「痛い?」「血が出てるよ!」「大丈夫?」とかいいながらも・・・見上げていた憧れの甘味をお姉ちゃんから貰ってかぶりついた。
Risaは自分の開放された左手を見て急に痛くなった。
心配だったTシャツには微かな血しか付いていないかわりに伸ばした手のひら程の長さで切り裂かれ血が出ている。
4人の内の2番目と3番目が井戸のジャッキから伸びた手押し棒にぶら下がるようにして水をくみ出してくれる・・・
後の二人は食べるところが無くなった甘味の芯を右手に握ったまま心配そうにRisaの腕を一心に見ている。井戸の手押し棒に届かない二人は泣き出しそうな顔で。
おじさんの家で何とか養われているRisa達には井戸の水だけが常備薬なのだ。
痛くて痛くてたまらなかったし涙が流れてきてしまったけど「あぁ~痛かったぁ」と心配顔の4人に言い放った。
早く大きくなって働いて、この4人に10個づつ甘味を手渡してあげたいとだけ激痛の中で思った。決して自分の分をもぎ取ることが出来なかったことは悔やまず・・・。
そのRisaは今、彩の国に住んでいる。
ハセキョンにそっくりなお母さんなのだ。
どんなことがあっても笑おうとするし優しくて強い。
40歳をすぎているのに美しい。何とも美しい。
Risaのお話は・・・
To be continued.
Posted at 2008/12/03 11:36:04 | |
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徒然人 | 日記