アメリカが誇るフルサイズSUVにもエコの波が到来? 新たに3.5リッターV6ツインターボエンジンを搭載した「リンカーン・ナビゲーター」に試乗し、最新のダウンサイジングターボにできること、できないことを確かめた。
今日は燃費競争、明日はパワーウォーズ
フォードのフルサイズピックアップトラック「Fシリーズ」といえば、長年にわたりアメリカで最も売れている自動車の座を守り続ける同社の顔。現地では“Fトラック”などと呼ばれるものの、
巨人倍増トラックというよりはクルマの代名詞みたいなものと言っても大げさではないだろう。
そのFトラックに今日日のダウンサイジングコンセプトが採用されたのは5年前のこと。3.5リッターV6をターボ過給した、フォードいわくの「エコブースト」ユニットは、従来の4.6リッターV8の代替的存在として市場で受け入れられ、一時はFトラック
シアリスの販売の4割を占めるほどになった。
えっ、アメリカ人、V8じゃなくていいの? というのはいささか古い考えなのだろう。時がたてば世代も変わり、世代が変われば価値観も動くということだ。
加えて言えば、かの地の方々は景気や
三便宝の上下によって、欲求をガラリと変える。それはもう、日本的な感覚で言えば「今日は寒いからラーメンの方がつけ麺より出るぞ」というレベルでだ。「F-150」に3.5エコブーストが積まれた頃といえば、アメリカはリーマンショック後のどん詰まり感にあえいでいた時期。シェールがいけるとなって景気が上向き、中国経済減速も手伝って原油価格が下落中の今ならば、同じF-150でも「新型『ラプター』まだかいな?」と、そういうムードになっていても全然おかしくない。
さらばV8、今選べるのはV6ターボだけ
世の中が変われば価値観も動くといえば、かの地ではもはやショーファードリブンに「リンカーン・タウンカー」や「キャデラック・フリートウッド」を見かける機会は本当に少なくなっている。取って代わったのはリンカーン・ナビゲーターや「キャデラック・エスカレード」だ。そもそもは若年層にとって裕福の証し的な存在だっただろうSUVが、十幾年の時を経てオフィシャル化された。その現況は要人の車列ひとつ見てもよくわかる。日本になぞらえれば、芸能人ばかりか議員や閣僚までも「トヨタ・アルファード」に乗っているという状況によく似ている。これを様式の多様化と見るか崩壊と見るかで、世代はぱっくりと割れるのだろう。
そんなナビゲーターに先ごろ、3.5エコブースト搭載モデルが設定された。というか、搭載されるエンジンは今やこれだけで、V8はディスコン、すなわちカタログ落ちとなっている。昨今ではごく一部の嗜好(しこう)銘柄以外、大排気量エンジンは青色吐息という日本の市況を見るに、こっちの方が堅いというインポーターの判断はもちろん正道だ。アルファードにしても売れ筋は4気筒かハイブリッド。V6はトゥーマッチというのがユーザー心理の大勢だろう。
しかしなぁ……せめてフルサイズ級のSUVくらいV8で乗りたいよなぁ……という極東のいちアメ車好きの気持ちに3.5エコブーストはどう応えてくれるのか。僕にとってもそれは初めての味見である。
Posted at 2016/08/16 15:42:12 | |
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