ジュメイラホテルの部屋を出て、エントランスに整然と並べられたG500や「AMG G63」の中から1台を選ぶという、アラブの富豪ごっこで始まった試乗。大きく変わることはないとわかっていたものの、外観上の変化を探すと、すぐに見つかった。
巨人倍増フロントバンパーが、大きく3つ穴が開いたデザインとなった。見つかったのはその1カ所のみで、クルマをぐるり回って確かめたが、それ以外の変更点は見つからなかった。
まずG500を選ぶ。運転席に乗り込んでドアを閉めたら、例の「ガチーン」という音。しっかりした感触が手に残る。かつてのメルセデス・ベンツやポルシェの各モデルで味わうことができた金庫の扉みたいなこの感触と音は、今や唯一Gクラスのみで味わうことができる。昔ながらのグリップタイプのドアノブで、
シアリス開閉に力を要するので、オートクロージャーなどの“軟弱”装備に慣れた女性は爪が傷むと嫌うらしいが、乗り始めにまずこの感触を味わわせることで頑強さを乗員に感じさせ、クルマへの安心感、信頼感につなげているのがわからないやつはおととい来やがれ!
さて試乗開始。すぐにアウトバーンへ。新エンジンは静かだ。従来の5リッターV8も十分静かだったが、もっと静かに感じる。100km/h時のエンジン回転数は2000rpm未満。採用から年月がたち、機械的熟成が進んだ7Gトロニックはほとんど変速ショックを感じさせず、黒子に徹して適切なギアを選び続ける。100km/hからアクセルを踏み増して加速してみる。瞬時に7速から5速に下がってクォーンという上品なエキゾーストノートとともにスピードが増す。ドロドロというアメリカンV8のような音はしない。そっちが欲しい人はあと何百万円か足してAMGをどうぞ。
踏み続ければどこまでも速度が上がりそうな感じだ。相変わらず車重は約2.5トンあるのだが、最大トルク62.2kgmがそれを感じさせない。ターボ化によって最高出力、
三便宝最大トルクのいずれもがより低い回転数で得られるようになったので、数値以上のパワーアップを体感できる。
ただし、クルージングしていて心地良いのは150~160km/h前後。道がどこまでも真っすぐで、他にクルマがいなければもっと飛ばしてもよいのだが、車線変更やジャンクションでの路線変更を伴うとなると、このシャシーでそれ以上出す気になれない。高速域での微妙なステアリング操作に対するレスポンスが少し曖昧なほか、操作に対する車体の反応(揺れ)に一瞬のタイムラグがあるのだ。今回手が加えられ、危機的状況でのお仕置き的作動だけでなく、細かく作動してスムーズな走りをアシストするようになった横滑り防止装置や、265/60R18というぶっといタイヤによって高速域でのスタビリティーを確保しているとはいえ、本籍はラダーフレームのオフローダーなのだ。絶対的スピードを求めるなら他の乗用車系SUVを当たるべきだろう。日本では関係ない速度域での話だが。
試乗車には新たに設定されたオプションのアダプティブ・ダンピング・システムが備わっていた。日本でいくらのエクストラとなるのか現時点では不明だが、これはおすすめしたい。コンフォートとスポーツがあって、単純に言えばコンフォートはソフト、スポーツはハードなダンパーセッティングになるのだが、2段階設定できるからこそコンフォートを思い切り乗り心地重視に振ることができるのだろう、タウンスピードでの乗り心地はこれまでよりもはっきりと快適になった。
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2016/08/25 12:45:08